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失意を持っていてなお 1

「悪かったね。取り乱しちゃって」


 少年と、そしてララは公園のベンチに座っていた。昼より少し前の時分、青く気分のいい空気が広がる公園に寄っていた。

 話題は当然、さっきのことについて。少年はまず謝った。ララが目に入った分くらいは人間は救いたいと言った時のことだ。


「い、いや……大丈夫だよ、うん」


 ララは大丈夫だと言って少年の気を楽にしようとする。

 少年はその彼女の善意を受け取って、そうかいと言った後で息を吐いた。そうして肩に入った力を抜くと、またララに問う。


「それで、君が僕を助けようとしてくれる……って、言ってたね」


「あ、うん。そうするつもり、出来れば……」


「そうか。ふぅ~ん。……ありがたい話だ。だけど」


 少年はララの答えを聞いた後で、首を振った。


「いいんだ。僕はこれでいい」


「えっ、どうして……」


 ララは思わず問うてしまう。少年は明らかに疲れていて、精神的にも追い詰められている様子だった。今は髪を下ろして見せないようにしているが、それでもしっかりと見れば疲れていることが分かるほどに。

 そんな風でいて、どうして助けを拒むのか。少年はすぐに答えた。


「これは全部、僕の自業自得なんだよ。自分で傷付けて、自分で勝手に傷ついているだけだ。自分で助かるならまだしも、他の人の手を掴んで引っ張り上げてもらう訳にはいかないよ」


 そうして、力なく笑った。自分のせいで傷ついているだけだから、一人で助かるならいいが他の人に助けられるわけにはいかないと。

 ただ、ララはそれを聞いてもなお、止まらなかった。


「でも、それでも。苦しいんでしょ? 傷ついてるって自分で言ってるんだから、そうだよね。……さっきも言ったけど、目に入ったんだから、助けないわけにはいかないよ」


 自分の意見を押し通そうとする。


 だが、少年とてそれは同じだった。自分の意見を通そうとする。それも、圧を発しながら。


「……僕は人を殺したよ」


「……え?」


「だから、人を殺したんだって。それで皆に追い回される立場なんだ。苦しむのは、逃げ続けるから。そのために寝泊りする場所変えて、捕まりたくない捕まりたくないって追い詰められてるから。ね? 自業自得でしょ?」


 少年はどこまでも暗い目をして、ララにそう言い放った。自分は人殺しをした。だから、そのせいで勝手に傷ついているだけだと。

 そんな話を聞いて、ララは思わず動揺してしまう。いや、動揺しないわけがない。例え今の少年の言葉が表現だったとしても、動揺しないわけもない。そのような表現を使う人間が、まともな人生を送ってきたと言えるだろうか。

 ララとて、まともな人生を送ってきている訳ではない。いい意味で、だが。通りすがりの人間を本気で助けようと思えるような人生。だが、少年は……


「ね~ね~ぇ! そこのお嬢さん?」


「……え?」


 ララが目を落として少年のことを考えていると、彼女と少年の耳に聞き覚えのない声が入ってくる。声のした方向に目を向けて見れば、二人より幾分か年が上の男達がいた。数にして五人ほど。その全てが、ララにいやらしい目を向けていたのだった。

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