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射抜くこと鉄の矢が如く(恋愛的な意味で)

「ああいうの、珍しくないのか?」


 勇気は鉄矢のしたことを見て、思わず龍也に問う。今まで彼と一緒に暮らしてきた龍也なら、鉄矢の今の行動が普段のモノなのかどうか分かるからだ。

 龍也は勇気の問いに、ああと声を上げながら答える。


「まあ。俺が拳にしか頼れないからあいつが代わりに面倒を済ましてくれることはある。ああ、よくあった」


「……へぇ。チャラチャラした奴かと思ってたが、全然」


「普段はな。一応テツは、まともな正義感を持ってそれを行動に移せる奴だ」


 勇気の問いに応えを返す龍也の顔は、少し誇らしげな様子だった。まるで、自分のことを自慢しているかのような調子だ。笑みすら見て取れる。

 勇気は龍也のそんな表情を見て、興味深そうに鉄矢の方へと目を向け直し……


「へぇ、大学生だったんですか。意外です。もっとお若く見えますよ」


 て、一瞬にして興味の目を失望の目に染め上げる。


 鉄矢は助けた女性の店員へ声をかけていた。へらへらと、さっきまでの様子が嘘のように。

 そして女性の店員はまんざらでもない様子だった。顔を紅潮させて、鉄矢の言葉に応えている。


「い、いえそんなこと……」


「まあともかく、僕がしたのは当然のことです。礼を言われるようなことではありませんよ」


「そ、そんな。何かお礼を……」


「ん、では……そうですね。今日はほら、あそこにいるでしょう? むさい男友達が二人いるんですよ~」


 鉄矢は話の途中、むさい男友達と言って勇気と鉄矢の方を指差した。全く悪びれる様子もなく、サラッと。

 それを受けた二人は、ピキッと、音を立てて表情を崩す。が、鉄矢はそれにも気付かず女性に対する口説きを続ける。


「ですから、ね。今度、ここに一人で来ます。その時に接客をしていただけると、嬉しいかな」


「あ……はい。分かりました! では、また今度!」


「うんうん。では~」


 鉄矢は店員の女性を、自分の美形な顔とさっきの行動によって口説いていたのだった。


 そうしてしばらく、鉄矢のそれは終わった。女性の店員は彼にではまた、と言って店内の方へと引っ込んでいく。それを、鉄矢は満足そうな笑みで見ていたのだった。


 その後でようやく、鉄矢は勇気と龍也の方へと戻ってくる。やりつくした感を出しながら。


「いや~大変だったな~。うん、大変だった。でもよかった。あんな可愛い子と遊びの約束を取り付けたようなものなんだからね。しかも年上だ。興奮するなぁ~」


 だが、話の半分以上は例の女性店員の話であった。もしかしたら、元からそっちが目的だったのかもしれない。だから無意識下でそちらの方が話の容量を多くとったのだろう。


 それで、その言葉を聞いた勇気と龍也だが……二人そろって深くため息を吐く。


「こういうの、珍しくないのか?」


「ああ、ほとんどだ」


 二人の口から出てくるのは、そろって呆れの言葉なのであった。


 だが、そんなのに構わず鉄矢は惚気のろけを続ける。


「ああ。君達がいなかったらな~。もしかしたら、あの子のバイト時間が終わるまで待ってたかもしれないのにぃ~」


「あぁ?」


「んだと?」


 これには流石に、むさい男友達二人はキレかかる。そうして、鉄矢へ同時ににらみを利かせた。


「んじゃあ俺帰るから。お前一人で待ってろよ鉄矢」


「え? そ、そりゃないよ勇気」


「飯代ありがとな」


「払うなんて言ってないけど!? ていうか、よくそんな食べておいてそんなことが言えるね!」


「うるせ。どーせ女と遊ぶんだろ? 俺らがいると邪魔だろうからよ。じゃあな」


「ちょ、待ってよ~!!」


 勇気と龍也は同じように、鉄矢へ辛辣な言葉を投げかけて椅子から腰を上げるのだった。そうして向くのはファミレスの出口の方。そのまま、帰ろうとしたのだ。

 それを、鉄矢は涙目になって止めに入るのであった。


「大事だから、男友達も大事だからぁ~!」

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