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勇気、初めて男友達と外で食事をする

 勇気が新しい友人達とくっちゃべっている時、一方では……








(ブッス~……)


「どうしたんだよ涼。なんか、結構機嫌悪いって感じじゃんか」


 下校中の涼と琴音。二人は電車の椅子に座っていた。琴音は元気そうな顔をしていたが……反して涼は、ブッス~として、明らかに機嫌が悪そうである。膨れて、何かが気に入らないという様子。


 それを気にして、琴音は彼女へ声をかける。


「な~んかあったのか? 入学式初日で、緊張にやられるようなタイプじゃないだろ?」


「別に。何もないけど」


「んぅ~。なんにもないようには見えないけどなぁ。確か涼って、勇気と同じクラスだったっけ?」


「(ビクッ)」


 琴音が何の気なしに言った言葉は、涼の心を驚かせる。そして、それは肩のビクつきとなって表れた。顔にも少し、引きつるという形で出てくる。

 それを片目に留めた琴音は、何かを察し、ニマァ~っと顔に深い笑みを刻む。


「何かあったのか? 勇気とさ」


「べ……別に」


「何だよ。私も、入学初日からはっちゃけるようなタイプじゃない勇気が涼と一緒に下校してないのは気になってたけど……なんだ? 喧嘩か?」


「違う」


「ん~。他に可愛い女の子と話してたとか?」


「……何でそっち方面ばっかなのよ」


 涼は琴音のいやらしい顔をしての追及に、鬱陶しさを感じて声を上げる。そっち方面というのは、恋愛という事だろう。

 琴音は涼の問いを受けると、またいやらしい顔をし、口を開いた。


「なんか、涼って勇気に対しては遠慮がない気がするからさぁ」


「普通そういう感情を男に持ってたらさ、緊張するでしょ」


「えぇ!? 涼ってそんなタマか? なんか、私を好きにならないとぶっ殺すって言ってそうな雰囲気」


「……私をなんだと思ってるのかしら、琴音?」


「心臓に熊並みの毛が生えた物理心理共に男勝りの鉄人女?」


「……電車下りたら覚えてなさい」


 琴音の言葉に対して、涼はこめかみに青筋を浮かべながら苛立ちを露にするのであった。










「近藤……お前、食い過ぎじゃないか?」


「いや、普通だろ」


「タツの胃には穴が開いてるからね~」


 一方、勇気。彼は前回の話の流れ通り、龍也と鉄矢と共に昼食を食べにっていた。昼のファミレス、他の学校の生徒達もいる中で、三人も同じように制服姿で楽しむ。

 最初の話題は龍也の食事の量であった。普通、三人でレストランに来ると四人席に割り当てられ、メニューをのせるテーブルには少しの余裕が出るものだが……三人の座っていた席にはそれがない。ほとんどが、龍也の頼んだ品に覆われているのだ。彼曰く普通だが、一般から見たら食い過ぎだ。


「こんなに食う奴、初めて見たぞ」


「昔からなんだけどさ。本当、腹の中に何か飼ってるんじゃないかってレベル」


「……お前らこそ、少なすぎだ。食べ盛りの時期なんだから、それの六倍は……」


「「食べない!」」


 龍也の言葉に、勇気と鉄矢は同時に声を上げて否定を入れる。龍也はそれを受けると、少ししゅんとして、そうかと言った後でご飯に手を付け始めるのであった。


 それを見た勇気と鉄矢も、自分達の食事を口に運び始める。いただきますは既に言っていた。


 そうして、三人は食事をしながらの会話としゃれこむ。話題はやはり、入学式の後だから学校のことになった。


「しかし、さっき話してた大江って女子はそんなに可愛いのか?」


「ちょ、近藤。お前……」


「別にからかおうってんじゃない。男子高校生なんだぜ? そのくらい気になるだろ。んで、どうだったんだテツ」


「いやぁ、正直今まで見た女の子の中で一番レベルかなぁ。撫子(なでこ)と同じレベルで、種類が違う感じ。そうだなぁ……和風美人で、少し幼げがあるかなって感じ?」


「へぇ。ちゃんと見ておけばよかった。明日見る」


「……失礼だと思わないのかよ。女子の顔をそうやって査定すんの」


「えぇ? 思わない思わない。どーせ女子だって、頭いいからアイツ稼げそうだな~とか、顔イイな~とか、背高いな~とか、そういう話ばっかだって」


「……心ん中でそんな風に思ってるのを知ってるから否定できん……」


「ん、なんか言ったか神崎?」


「い、いや何も」


 勇気はフッと、一瞬だけ自分の隠し事のことを露呈しかけ、後で焦ってそれを塞ぐ。普段ならそんな、口を滑らせるという事などはないはずだが……


 気が抜けていたのだろう。男友達と、このような下卑(げび)た話をするのが初めてだ。確かに鼬との会話で今まで一度もこちら方面の話にならなかったのかと問われれば、そうでもない。ただ、妖館の中の人物と外の人物では勇気にとって大きく違ったのだ。


「ともかく。俺は女子を顔とかで判断するのは違うと思う」


 まあ、勇気はそういう下卑た話にノリノリではないが。


「そうかぁ。勇気は顔じゃあ判断できないかぁ。じゃ、何で判断するの?」


「無論、心根だ」


「うっわ~。今時そんな化石みたいな古い判断する奴いないよ。ねぇ龍也?」


「いや、そうでもないだろ。俺も、心は重要なところだと思う」


「だよな」


「ええ~? そんなことあるぅ? じゃあ、顔と心、十分割で表したら?」


「顔三心七」


「おい! そこは普通、心十だろ近藤!」


「いや流石に心が綺麗でも限界はあるって……」


「ほぉらね? 実際こんなもんだよ勇気」


「ぐ、ぐぅ……」


 そんな感じで、三人はファミレスで他愛のない話を続けるのだった。龍也と鉄矢はもちろん、勇気も顔に感情の起伏を浮かべている。ずっと笑っている訳じゃないが、楽しい時間だ。


 三人がそんな風で楽しく時間を過ごしていてしばらく……


「早く片付けないかっ!!」


 突然、昼間で結構な賑わいのあるファミレスに怒声が響く。それが聞こえた範囲の人間達は、首をそろえて声のした方向へと目を向けた。三人も例外ではない。

 怒声の発生源には、スーツの中年男性がまだ食器の片づけがされてない席に座っているのがあった。彼はどうやら、相当イライラしているようだ。


「どうしたんだ、あれ?」


「……何かあったみてえだな」


「……ああ~。あれ、飲食店とかでよくあるクレーマーだよ」


 勇気と龍也が怒声を上げた人間のことを見て首を傾げると、鉄矢は呆れたように首をすくめ、口を開いた。そうして、少しだけソファ席の端の方へと腰を移動させた。すぐに、席から離れることが出来るようにするためだろう。

 そうする鉄矢の目には、呆れ……それに苛立ちがあった。

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