高校生活の始まり
勇気達六人は学校へ向かっていた。これから通う高校へ、入学式に出席するためにだ。高校では新入生たちをクラス別に体育館へ座らせ、入学式が開かれていたが……
「まさか、アンタと同じクラスとはね」
「ああ……」
勇気と涼は隣り合った椅子に座り、意外だという風に目の前の講壇を見ていた。そこでは入学式の準備が行われている。仰々しい司会者台などを置いて、校長がそこで話すのだろうか。
周りの新入生達が座る椅子には空席が多い。早く来た妖館の子供達は、入学式が始まるのを待っていた。
そんな中で、涼は勇気の方へ心配そうな目を向ける。
「そういやアンタさ」
「ん、なんだ」
「耳、大丈夫なの?」
「ああ、そのことか」
涼が心配していたのは、勇気の心をとらえる耳の事であった。それを問われると、勇気は大丈夫だと笑って応える。
「問題ない。ララに関しても同じだ。オンオフは……まあまだしばらくかかるけど、とりあえずは大丈夫」
「へぇ、よかったわ。じゃあ問題ないわね」
勇気の言葉を聞いて、涼はホッと胸をなでおろした。その後で、急に態度が悪くなる。
「全く、これから校長の長い話を聞くかと思うと気が滅入るわ」
「ああ、俺もだ。上っ面だけの言葉なんだろうな、また」
「そこのところ、どうなの? 今まで心の声を聞いてきて、臭いこと言ってる奴は本当にそのことを思ってた?」
「いーや全然。一番多いのは、半分本気で半分嘘。時間とったりするために、大げさに盛るんだろ」
「そんなもんよね~。ま、飯田は良い奴だったと思うけど……あいつくらいかぁ」
勇気と涼は場を顧みず、教師の悪口を言う。まあ、二人の周りに他の人はいなかったから、問題ないと言えばないが。それにしたって入学式にする話ではない。
そんなところで、涼は話を変える。
「はぁ~。帰ったら何しよっかなぁ」
「……え? このタイミングでか?」
涼はだるそうに、まだ入学式が始まってもないのに帰った後のことを考え始めた。流石にそれには勇気も呆れの声を上げる。
「まだ入学式、始まってもないだろ」
「つったってさ~。今日だけじゃ、まだ他の子達と喋ったりとかって出来ないじゃない? だから。別に初日から群れたいとは思わないし。いるじゃない。入学式から無理して女子の中心になろうとする奴」
「まあ……いるな」
「絡まれたくないから、そういうのに。適当に、うるさくないくらいの奴と付き合うのが一番いいのよ」
「そんなもんか? ……俺、今まで学校に友達がいなかったから分かんねえな」
「ナチュラルにキツイこと言うわね。じゃあ、学校で何やってたのよアンタ」
「チヤホヤされてた」
「うわうっざ」
「別に望んでそうなったわけじゃない! 周りに寄ってくんのはなんか、こう、プリントの写しとか、あと俺の近くにいるとブランドがどうたらこうたらみたいな奴ばっかだったんだよ」
「ああ。アンタって勉強とかできて、外見はいいモノね。そいつら、アンタの中身は知らないでしょーから……」
「おい、どういう意味だよ」
「な~んでも?」
「はぁ……」
勇気と涼はそんな風に、他愛のない話を続ける。どうせ他の新入生達が来るまでの暇潰しだから、まあいつも通りに……と。
しばらく時間が過ぎる。勇気と涼の周りにも、他の新入生達が集まって来た。その面々にはいろいろな人間達がいる。緊張している者、涼と同じように呆れたような表情をしている者。興味がない、早く終わってほしいと顔で言っているような者。まあ緊張している者が一番多いが。
ともかく、そんな風で二人、そして鼬達四人も、高校へ入学した。至って普通の入学式であった。何もコメントするようなことがない入学式。飾ろうとすれば、桜という言葉を使えばどうとでもなるような普通の。
ただ、おかしいのはここからであった。




