友情が大きいほど、その憎悪は輝く
「随分とトチ狂ったガキが二人、最近は本当にツイていないな」
男は一人、大きいデスクに座ったまま勇気とマーレのことを見る。その目、彼の片方しかないその目には、相当なまでのイラつきがあった。憎悪、と表現するに足る感情が含まれている。それに、表情もだ。勇気とマーレが憎くてたまらないという顔をしている。
だが、そんなことにマーレは構う様子はなかった。槍を構えて、それを男に向ける。
「そうね、本当にツイてないわ。最近は親友がどうしようもないクソに陥れられるし、そのクソを踏み潰さなくっちゃあいけないんだから、本当にツイてない」
男に対して、マーレは彼以上の憤怒の表情の含まれた目を向ける。
それは当然だ。彼女は親友を、つまり琴音を、目の前の男に不幸にされていたのだから。マーレは元より、友達想いの少女だ。琴音に対してあそこまで親身になったのも、それから来る感情だ。だが逆に、その要因に対しては? そう、琴音がそうなった原因に対しては、琴音に対しての友情、愛情が大きいように、憎悪も大きい。
マーレの持つ槍が震えている。それを片目に捉えた勇気は、彼女の感情を耳にした彼は、顔を曇らせる。
(そうだな。当然だ。マーレが一番、琴音のことを心配していた。マーレが一番、琴音のために手を尽くした。マーレが、一番怒るのも当たり前だ)
そうして、彼は一歩前へ出る。マーレの横に、並んだのだ。
「改めて、手を貸すマーレ。俺も、同じ気持ちだからな」
「……ありがとう、勇気」
勇気とマーレは、男の前に立ち並んだ。二人の顔には、同じように、同じほど強い怒気がある。それを目にした男は、その太い首筋に一筋の冷や汗を浮かべた。
(こいつらには……金の云々は通じんな)
「一応、聞いておきたい。お前達は、堀田という親子の敵討ちにでも来たのか?」
「答える必要はないわね。ただ、アンタはこれまで不幸にした人間全員に頭を垂れながら裁きを受ければいい」
「そうか……」
どうやら、男は先を案じているようだった。その上で、目の前の少年と少女は非常にまずい存在だと、そう考えたのだ。そうして次に彼が思う事、そして考えることは……
(この場を、どうにかして切り抜けるしかない……!)
「そうか……。まあ、いいだろう。だが、俺とてお前達に貸しがある。そこにいる奴ら、代えが利くとは言え……」
ゆっくりと口を開いて、勇気とマーレに語りかける。そうしながら、手は目の前のデスクの下へ……
その瞬間、勇気が叫ぶ。
「マーレ、後ろに下がれッ!!」
男の行動を聞いたのだ。そして勇気の言葉と男の行動は、ほぼ同時であった。
「金がかかる。その分の貸しだッ!!」
勇気自身、そして彼の声を受けてマーレが後ろに飛ぶのと、男がデスクを二人に向かって投げ飛ばすのは同時だった。




