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仕返し

 勇気達、妖館の一同は琴音を迎え入れた。笑顔で、なんの拒みもなく。琴音も、それを満面の笑みで受け取った。一つ昔の彼女なら、遠慮していただろう。だが、彼女はこれまでの事を受けて変わった。元から間違いを持った人間ではなかったが、それでも変わったのだ。自分が一人で生きているのではないという事を知り、助けを、救いの手を、ためらいなくつかめる少女に変わったのだ。

 ともかく、そんな琴音を妖館は受け入れた。その後で、涼と鼬も学校から帰ってくる。飯田については何も分からなかったと伝えるのみであった。それは、彼らにとっては琴音が安全であるという事の方が大ニュースだったからであろう。飯田については以後、ゆっくりと触れることもある。ともかく、妖館の一同は琴音が安全であることを喜び、また彼女が自分達の仲間になることを快く受け入れた。


 そしてしばらく、時間は十時を回るころ。涼達は既に眠っていた。琴音ももちろん、安静のために眠っている。ただ、勇気は一人、厨房に残って後片付けをしていた。


「まったく……琴音がここに来たのを喜ぶのはいいが……まあ、あいつ自身も随分回復してるみたいだし、いいんだが……なんで片付けが俺だけなんだ。今度言ってやる」


 そうぼやきながら、彼は大量にある皿の洗い物を消化していた。


 そんな感じで彼が一人、薄ら明るい厨房にて一人でそうしていると……


「勇気?」


 と、声がした。女声である。その声を耳に止めると、勇気は洗い物の手を一旦止め、その声のした方へと振り返る。もっとも、誰が声をかけてきたのかは分かっていたが。だから、聞き返す。


「マーレ、こんな時間にどうしたんだ?」


 勇気が洗い物をしている後ろに立っていたのは、マーレである。勇気が振り返って見れば、彼女は外に出るような服を着て、勇気の後ろにいた。コートを羽織っていたのである。その様子を見て、勇気はさらに不思議そうに尋ねる。


「……その服、今から外に出るのか?」


「そうね。あと、外に出るのはアンタもよ」


「んぇ? 俺も?」


 マーレの言葉に、勇気はもっと不思議だと首を傾げて問う。マーレだけならともかく、自分も外に出るのか、と。だが、その疑問も予想していたと言わんばかりに、マーレは厨房の出口の方へと体を向け、勇気に言う。


「洗い物が終わったら食堂に来て。何のためか、話すわ」












「んで、何の用だ」


 勇気は洗い物を終えて、食堂に入った。すると中では、マーレが一人でコーヒーを飲みながら彼のことを待っていた。それを目に止めると、すぐに彼女の方へ、向かいに座って問う。何の用か、と。


 マーレは問いを受けると、あらかじめ注いでおいたらしいコーヒーのカップを勇気に差し出しながら答える。


「琴音を、ああした奴らがいるらしいのね?」


「……ん?」


 マーレは遠巻きから話を始める。それを聞いた勇気は思わず、眉をひそめた。夜に何の用かと聞いたのに、急に琴音の話が始まったからだ。

 だが、マーレはそれに構わず語り続ける。


「ああしたって言うのはつまり、傷付けたってことね。それと、琴音のお母さんのことも。ああなってしまうまで、追い詰めた奴がいるってこと」


 マーレはそこまで言って、ため息を吐く。


 そこまで聞くと、勇気は察した。これは明るい話ではないな、と。まあこんな時間に二人で話を始めたのだから、前向きな頼みではないと分かっていたが、それが確信に変わった。


 勇気は静かな表情をして、マーレに続きを促す。


「…………そう、か。それがどうした?」


「それでね、私は思うのよ。……罪を犯した奴には、相応の罰が必要だって」


 そこまで言って、ようやくマーレは本題に入る。本題、というよりは、勇気に頼みたいことだ。彼女はそれを、フッと顔を上げて勇気に伝えるのだった。


「琴音をああした奴らに、仕返すわ。アンタに付き合ってもらう」

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