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セカンドライフを妖しい怪しさ達と共に  作者: 井田薫
紡ぎ直される琴の弦
141/222

琴は単独でも映えるが……

「お母さん、琴音のことを気遣いすぎちゃったんだね……。それに、君自身も無理を」


「ああ……借金なんて……本当に、二人で歩めばよかったのに……いや、私も駄目だったんだけどよ」


「……っていうか、私にとっては飯田のことが予想外過ぎるって……」


 琴音は、ララの行動によって大分、落ち着いたらしかった。未だ目に悲しさは光っている。だが、それでもちゃんと前を向くことが出来ているのだ。仲間と、仲間の救いの手をしかと、遠慮なく掴もうと決心することの出来た彼女の意志のおかげだ。


 そうしてしばらくして、涼とララが琴音に飯を食べさせてやった後のことだ。二人は琴音に、諸々のことを聞き出した。彼女に無理をさせず、ゆっくりと、だ。

 二人は耳にした。琴音の受難、不幸。母親の失踪、飯田の救出。闇金に借金をしていて、親子ともども無理をしてしまっていたこと。おそらく、自分の財布の中身を見てしまったから母親が……ということもだ。


 だが、その全てを聞いても二人は暗い顔をしないようにした。助ける側が、俯いていても仕方がないからだ。それに、琴音自体も下を向かないようにしていた。彼女の意志も、変わったのだ。


 話を戻そう。琴音は涼の、飯田についてのコメントを受けて力なく笑う。そうして、少しだけ心配そうな表情をした。


「へへっ、本当にな。何だったんだろ……心配だな、飯田」


「ああ、そのことだけどね、大丈夫だと思うよ」


「へ?」


 琴音の言葉を聞いて、ララが口を開く。彼女が言うには、飯田という人間は大丈夫だと。それを聞いて、涼と琴音は首を傾げた。


「それってどういうこと?」


「飯田は無事なのかッ!? 私を、助けてくれたんだ……。母さんと同じくらい、心配なんだ」


 安否の事となると、必死に琴音はララに食いついた。おそらくさっきまでは辛気臭い顔をあまりしないようにしていたのであろうが、こういうことを前にしてはそれを隠せもしない。

 琴音のそれを受けて、ララは思い出すように顎に手を添えながら言う。


「いや……鼬と琴音のラーメン屋さんに様子を見に行ったの。心配だったからって。その時に勇気達とは分かれたんだけど……ラーメン屋に行ってみると、暗い雰囲気の人が天翔さんと一緒にいたんだ。それが飯田さんだって、鼬が言ってた。あ、天翔さんっていうのは、ウチの人ね」


 琴音は一応、天翔のことを説明しながら話を続ける。と、彼女の話は問題の所に突入する。


 つまりは、飯田が天翔を傷付けていたらしいことだ。だが……あまり話したいことではない。ララは琴音から目を背けながら、ゆっくりと言った。


「それで……えっとね。飯田さんって人は無事だよ」


 ララが、飯田は無事であると確かに口にすると……


「そうかッ! ……本当に、よかったぁ……」


 琴音は本当に安心したのだろう。ベッドのクッションに体を沈み込ませて、ふーっと全身から力を抜いた。おそらく、飯田の件は彼女のことを母親に次ぐ力で縛っていたのだろう。それがほとんど解けて、随分と楽になった、と。


 だが、ララは目を背けたままだ。いつしか、それが涼の目に留まる。それを不審に思った涼は、首を傾げてララに問う。


「……ん、ララ? どしたの。何か、あった?」


「えっ? ああ……いや、ちょっとね」


 ララは、一瞬だけ喜びに体を酔わせている琴音を目に止めた。そうして……


(……言わないでおこう)


 と、決心した。当然、悪意からではない。琴音のことを、動揺させないようにしてのことだ。というか、もとより飯田は本当の悪意で天翔に手を出したわけではない。ララも、それを理解していた。だから、それを言ってわざわざ二人を焦らせる必要はないと思ったのだ。


 その決心をしたララは、涼にもそれを適用しようとする。つまり、涼と琴音の二人に黙っていると。


「別に何もないよ。ただ、話をしようとしたらすぐにいなくなっちゃったんだよね。鼬の話で、涼達の先生ってのは分かったんだけど」


 ララはついでを加えて、先ほどの違和感を拭うのだった。












「本当に、このまま世話になってもいいのか?」


「いいのよ。遠慮なんて、しなくていいの」


 いい時間になって、涼とララは琴音をベッドに寝かせている部屋から出ようとした。その背に、琴音が不安そうな表情をして声をかける。

 だが、涼はそれに対してフッと笑って応えるのだった。


「全然、大丈夫。親友のために手を尽くさない奴がいる?」


「…………っ。……ほんとうに、ありがとうな」


「大丈夫よ。ほんじゃ、また明日」


「じゃあ、ね」


 涼とララは、その言葉を最後にして琴音の部屋から出るのであった。







 かくして、少女は救われた。救われたのだ。今はまだ、完全にというわけではない。もちろん、母親のことがあるからだ。だが、彼女自身は、彼女の心はもう大丈夫だろう。親友が、支えてくれるのだから。助けてくれるのだから。

 臭い言葉だが、彼女は一人ではなかったのだから

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