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セカンドライフを妖しい怪しさ達と共に  作者: 井田薫
紡ぎ直される琴の弦
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助けるために

 妖館に先に戻ってきたのは勇気達であった。それに追随するようにして涼とマーレも。涼はマーレが具合の悪いのを隠すようにしながら、琴音を風呂に入れた。そうして温かい服に着替えさせ、部屋を割り当てた。体の調子が随分と悪そうだったからである。どうやら、琴音は熱を出しているようだった。当然だ。雨の降っている冬の日に、何十分もいたのだから。

 加えて、マーレも同じような症状に陥っていた。彼女は吸血鬼である分、琴音より少しひどいようであった。涼は彼女に、この程度で済んでよかったと言って、マーレにも琴音と同じようにした。今、彼女は自分の部屋にて横たわっている。


 鼬達が帰ってきたのは、勇気と涼がマーレと琴音を落ち着けた時、その直後であった。これは、そのしばらく後の話……


 









「マーレが!? 悪い琴音のことは任せた!!」


 エントランスにて、勇気と涼は遅れて帰って来た鼬達にすべての事情を話した。琴音が理由は不明であるが相当なショックを受けていたようであったこと。マーレが雨の中を無理して飛んできた事。それを受けた三人、特に鼬だが、驚愕した。

 そうして、すぐに感情を行動に起こした。自分の体が雨に濡れていることなど全く目に入っていないかのように、駆け出し、マーレの部屋へ向かったのだ。他の者が止める暇もないほどに早く。


 それを勇気達は見送った。その後、天翔が口を開く。


「とりあえず、マーレは鼬に任しておこう。それにマーレも、熱は出しているとはいえ、安静にしておけば何とかなるはずだ。問題は……」


 そう言って、頭を抱える。つまり、彼が問題視しているのは……


「堀田さんの娘、だな。これに関しては、前と同じだ。勇気が心を侵された時と。私や太三郎では何とも出来ない。確かに衣食住を提供する程度は出来るが……」


 彼が言いたいのは、精神上の問題だろう。つまり生活面などに関しては全く問題なくカバーできるが、精神は、彼女自身の友である勇気達に頼るしかないという事。

 だが、その場にいた勇気、涼、ララはそれをほとんど理解しているようであった。それを、涼が首をすくめて伝える。


「大丈夫よ、天翔さん。何とかして見せる。絶対、手の届く範囲で友達を、これ以上傷付けさせないから」


 涼は、座った目でそう天翔に言った。それを見ると、彼はフッと笑った。まるで、何かに達成感を感じて、それを喜んだかのような表情だ。

 だが、天翔はそれを長く持つことはなかった。意識を切り替えたのだ。次の問題に、目を向けなくてはならないと思ったのだろう。ララと、涼に目を向けた。


「そうか……では、堀田さんの娘に関しては任せる。……それで、お前達一人一人に頼みがあるんだが、良いか?」


 そう問いを投げた。だが、そんなのが必要ないほどに、子供達はすぐにハッキリと答えた。顔を一瞬だけ見合わせた後で、同じように頷いたのである。

 それを見止めた天翔は、ありがとうと言ってから三人にそれぞれの指示を出す。


「勇気。これからお前は飯をつくれ。何事も、やはり身体の健康が無くては始まらないからな。特に、マーレと琴音の分は喉を通りやすいものにしておけよ」


「ああ、分かった。んじゃ行ってくる」


「よし、行ってこい。次、ララ。お前には私の部屋から、妖館連絡網という紙を持ってきてほしい」


「え……何それ」


「デカデカとタイトルが書いてあるから見ればすぐに分かる。私の机の、一番上の引き出しに入っているはずだ。頼む」


「ん……分かったよ。じゃあ、私も行ってくるね」


「頼んだ。それで、涼。お前には、琴音のケータイを取ってきてほしい。その後で、あることをしてもらう」


「琴音のケータイ? それに、あることって?」


「写真を探してほしい。今、行方不明の琴音の母親、堀田さんの写真だ」


 一旦、天翔はここで指示を打ち止めて涼に説明する。勇気とララは言葉の通り、先に行動を起こしていたから、涼にのみ。


「それを見つけたら、すぐに私の所へ寄こしてくれ。そうすれば妖館連絡網を使って、彼女を大きい範囲を探せる。もし、無事なのだとすれば……絶対に救わなくてはならないからな」


 そう言って、涼の肩を叩いた。そうする天翔の顔には、決心がある。それを目に止めた涼は……すぐに、行動を起こすのだった。


「分かったわ。んじゃあ、もう行ってくる!」


「ああ、頼んだぞ」


 涼は、走って琴音の部屋の方へと駆けていくのだった。


 それを見送った天翔は、一息つく。それは、少し疲れたと、そう言うような様子の物であった。だが、彼はそれをしても休まない。次は、自分の足を動かしたのだ。


「鼬、マーレ……。見ておくか」


 彼は、マーレの部屋に向かうのだった。

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