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セカンドライフを妖しい怪しさ達と共に  作者: 井田薫
紡ぎ直される琴の弦
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状況の把握、そして……

「そうか。あの男は鼬達の学校の教師……」


「天翔さんは本当にこのラーメン屋に来ただけで……」


「鼬達の先生が言うことが確かなら、琴音は無事で、お母さんは……分からない、んだ」


 雨の中、鼬、ララ、天翔の三人は現在の状況を確認し合った。つまり、飯田が三人の前から姿を消した後である。その後で三人は、この奇妙で複雑な縁が為した状況をゆっくりと解いていたのだ。


 それが粗方終わると、鼬はため息をついて言う。本当に、訳が分からないという様子で。


「しかし、なんで先生が……それに、琴音も」


 そうだ。彼の言う通り、分からないことが多い。とりあえず分かる範囲で状況を整理したはいいものの、やはり不明瞭だ。今、琴音がどうなっているのか。彼女の母親、愛音はどうなっているのか。そして、鼬達の教師、飯田はどういう存在なのか。


 だが、鼬が頭を抱えて悩んでいると天翔が口を開いた。


「少なくとも、あの飯田という男は……」


 そうして、鼬とララの方を向いて言う。その目には、ある種の信用のようなものがあった。話題にしている男、飯田に対しての物だろう。


「悪い奴ではない。心底から、堀田親子を救いたいと思っていたのだろう。だからこその、あの表情だ。ナイフやら危険なものは持っていたが、それは目的を果たすための物なんだろう。私達の力も、別に武力を行使するためだけの物じゃあないんだからな」


「………………」


 天翔の言葉を受けると、鼬は顔を俯かせ、ララは上を向いて心配そうな表情をした。鼬は恐らく、自分の担任がどういう存在であるのか見当もつかなくて不安なのだろう。ララは、知りもしない男の話題だったから、琴音の心配をしたのだろう。家にいなかった彼女は、どうしているのか、と。


 そうしてしばらく、ララが思い出したように言う。


「琴音は……多分、無事だと思う」


「え……」


「何を根拠にして、だ? ララ」


 ララの言葉に、鼬と天翔は疑問を示す。それに、ララは顎に指を添えて答える。


「鼬、勇気がなんか、変なこと言って走り出して行ったでしょ?」


「え、ああ……そうだな。結局、何がどうなったのかは分からんが……」


「あれってもしかしたら、琴音だったんじゃないかな」


「…………ああ!」


 ララの考えを聞いて、鼬は合点がいったのだろう。手をパチンと合わせて、天翔の方へ顔を向ける。


「天翔さん。妖館に戻ろう。勇気と涼がうまくやってれば、琴音も、天翔さんの言う琴音のお母さんも妖館にいるかもしれない」


「……それは本当か?」


「ああ!」


 天翔が不安げに投げた問いに、鼬は確信を持ったかのように大きく頷いた。それを見止めると、天翔はそうかと言って、一瞬ラーメン屋に目を向けた。そうして、二人に向き直る。


「では、戻ろう。妖館に。見回りは他の三人に回す。私はしばらく、一号にいよう。今は、目の前の命を救うことに専念する」


 天翔はしかと、目に決心を光らせてそう言った。それを聞いた鼬とララは、顔を見合わせてから頷く。天翔と同じような光を、目に灯して。


「ああ、そうしよう!」


「そうだね!」


 そうして、三人は並び立って妖館へ歩き出す。大人一人は傘無しで。そんなことが目に入らないほどに子供達二人は必死だったし、大人一人もそんなことが気にもならないくらいに真剣だったのであった。

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