表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
118/222

皆を惑わす、元気の仮面

 雨の朝。太陽は厚い雲に遮られ、地上は暗い。そんな中でも、学校はこうこうと電気を光らせて、子供を受け入れていた。

 そんな中の、一つの教室。それの戸を開いて、中に入ってくる者が一人。


「おはよう~」



「あ、琴音が来た」


「琴音~」


 教室の中に入ってきたのは、琴音であった。彼女の声と、そして姿を見止めると、中にいた涼と鼬は顔を合わせる。そして、入り口辺りに立っている彼女の方へと走って向かった。二人は元気に、琴音へ声をかける。


「よっ、琴音。……ってか、すごい濡れてないか、肩」


「だ、大丈夫? 傘、差してなかったの?」


「いんや、傘差してたぜ? 濡れてんのは走って来たから」


「走って来た!?」


 涼と鼬はつい、大声を上げて疑問を露にしてしまう。そうして流れるように、外の雨に目を向けた。変わらず、土砂降り。土を穿つかのような雨。そんな中を、琴音を走ってきたというのだ。何故。今は別に、遅刻ギリギリではなかった。それを、鼬と涼は問う。


「な、なんでよ。走ってくる意味、なくない?」


「今は別に、そんな遅刻ギリギリって訳じゃないぜ?」


 二人が本当に訳が分からないという風に聞くと、琴音は胸を張って答えた。


「早く学校に来たかったからだ。それ以外に理由はないぜ!」


「………………」


 涼と鼬は、顔を合わせて首を傾げる。さっきと、顔の色は何ら変わらない。疑問の色だ。こいつ、何言ってんだろうなっていう、そういう顔だ。


 と、その三人のやり取りを見ていたマーレは、椅子に座ったままでため息を吐いた。


(どうやら本当に、気分転換には成功しているらしいわね……おかしな話だわ)


そういう風に考えて、少し俯いた。何か、嫌な予感がしたのだろう。何があったら、目の下にクマをつくるような精神的、身体的な疲労を一日の気分転換で払えるというのだろうか。その奥には、何かが……


(とはいえ……)


「フッ、馬鹿ね。私達にそんなに会いたかったのかしら?」


 そんな懸念を、ゆっくりと考えることはなかった。ともかくは、話に参加して琴音の様子を見よう。そして、支えになってやろうという意志を持ってマーレは琴音に向かったのだった。










 少しすると、四人は固まって談笑をし始める。教室の角で、それは普通の仲の良い子供達、そのものだった。皆の顔には、もれなく幸福がある。全員が笑っていなくとも、冗談で誰かが小馬鹿にされて機嫌が崩れようとも、そんなしかめっ面にも幸福があるような。そんな、普通な……


(……休んでくれたみたい、だな)


 四人が談笑するのを、教壇で見ていた飯田は満足そうにフッと笑う。特に見ていたのは琴音であったが、彼女の顔にはちゃんと揺らぎのない幸せがあった。


(……ま、いい。笑ってくれるなら、それでいいんだ。さて……)


 飯田は教壇に背を預け、黒板に向かう。そうして、憂鬱そうに首を抑えた。


(仕事、面倒くさいな……。帰りたい。帰って、嫁とイチャイチャしていたい……)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ