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タマ 2

「最近、調子はどうなんだ?」


「うん、いいよ」


「……じゃなくて!」


 つい、勇気は声を荒げて言った。すると、タマとララは首を傾げて彼の方へ振り返る。


 前回の事、覚えているだろうか。急に勇気は、食堂にいるタマに品定めのようなことをされ、聞いていた通りイケメン、と言われたのだ。だが、彼女はその後、そんなことはなかったと言わんばかりにララとの会話に戻ってしまっていたのだった。


 だから、勇気は何かしらの疎外感のようなものを感じて、声を荒げたのだ。それに、何故あんなことをしたのか、という疑問もある。その二つの感情を持って、タマに向かう。


「タマさん、タマさんでいいんだよな? えっと、アンタは何で、さっきみたいなことを……」


「ああ、あれか。あれはな、少しの確認だ」


「…………はぁ、確認、ですか?」


「ねーね、一体何の確認をしてたの、タマさん。私も気になる」


 勇気とタマの会話を聞いて、後ろにいたララも入ってくる。どうやら、彼女もさっきのタマの行動には覚えがないらしく、疑問を覚えたようだ。

 そうして、二人の質問を受けると、タマはその口元にニヤっという笑みを浮かべて言う。


「ララの命の恩人が、どんなイケメンかと。ララが惚れてるんじゃないかなぁ~……っと、そういう確認をしたのさ」


「………………はっ?」


「タタタ、タマさんッ!?」


 タマの言葉を受けて、勇気は極限までの怪訝、ララは極限までの恥辱の表情を浮かべた。そりゃあ、まあ……。

 と、そんなことにも構わずに、タマはいやらしい笑みを浮かべてララの肩を抱き寄せる。


「実際、どうなんだ、え? 惚れてるか? フツヌシから助けてくれたんだろ? キュンキュンしたか……」


「ちょ、ちょっとタマさん! 私は、勇気にそういう感情は持ってないよぉ……」


「……え、え?」


 勇気は未だに、訳が分からないと言うような顔をしてタマとララの顔を見比べている。彼としては、本当に分からないだろう。だって、彼は日常的に心眼、つまり心を聞いているのだ。ならば、その耳にララの自分に対する好意が少しでも入ってきているはずだ。


「ち、違うだろ。ララは俺の事を好き、とは思ってないだろ?」


「いいやぁ? 分からないじゃあないか。んで、ララ。どうなんだ」


 勇気の言葉を横に投げ飛ばして、タマはまたララへ向かう。それを見て、ララはまだ顔をほのかに赤くしながら、タマの言葉に答える。


「私が勇気に対して持ってる感情は、すっっっっっごい近い仲間とか、友達とか。そういう感情だよタマさん。そんな、男女として好きとかじゃないよ」


 話している内に、ララは顔の赤みを解いていく。自分の話していることが、ちゃんと自分の持っている感情だという確証を得たのだろう。

 それを受けて、タマはさもつまらないという風に椅子に深く寄り掛かった。


「はぁ……そうか。そうかぁ、つまらんな」


「つまらない!?」


「……はぁ、ララが一人前の女になっていることを期待したんだがなぁ……」


「む、むぅ……そんなのは、きっともっと先だよぉ……」


 タマとララは、まるで親子のように会話していた。ニヤつく親が子の恋の進捗を確認し、子は顔を赤くするという……。勇気はまた、蚊帳の外になっていた。


「………………」


「っと、勇気。すまないな、弾いてしまって」


「……いえ、大丈夫です」


 タマが、しばらくララの赤い顔を幸せそうに眺めていると、目の端に勇気を捉える。蚊帳の外にされて、ムスッ面の勇気をだ。彼女はそれを目に入れると、軽く謝罪をして勇気を会話に組み込む。

 そうして、一旦話を変える。


「そうだ、勇気。私はお前のことを、太三郎達からよく聞いているが、お前は私のことを知らないな?」


「え……ああ、確かに。そう、ですね」


 タマは勇気が頷くのを見ると、自分の胸に手を当てて示し、自己紹介をした。


「私は玉藻の前。タマ、と呼んでくれ。玉藻の前玉藻の前と呼ばれるのは、少しかたくるしい。敬語も使わなくていい。私もお前を勇気と呼ぶ」


「分かった。タマさん……ん? 玉藻の前って……」


 勇気はタマのことをタマさんと呼ぼうとし始めた時、何かを思い出す。タマの、本名のことだ。玉藻の前、玉藻の前……勇気は記憶を探る。そんな彼を見て、タマはため息を吐く。


「まあ、そりゃあ聞いたことはあるだろうな」


「タマさんは、千年くらい前から生きてる大妖怪なんだよ」


 タマが頭を抱えている脇で、ララが当然かのようにそう言う。そんな彼女の言葉を受けると、つい、勇気は口をあんぐりと開けて驚いた。目も見開いている。それだけ、驚きだった。まあ、当然だろう。少し察していたとはいえ……


「千年くらい前ってなんだ!?」


 彼は、大声でそう問うてしまった。

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