戦国教室
タイトルは良いの思いつかなかったので、それっぽいものを付けました。
先に予防線張っておきます。タイトル詐欺じゃねぇか!と思われたらすみません。
書くのはやっぱり楽しいです。
みなさんもいっぱい書いて、いっぱい読みましょう!
うちのクラスは濃い。
クラス一破天荒な織田君
織田君に何時もべったりな木下さん。
そんな2人と仲が良いが何処か一線を引いている松平さん。
その松平さんに対して何かと高圧的な今川さん。
ちょっと怖い雰囲気の武田君
そんな武田君とよく言い争いをしている上杉さん。
真面目だけど正直不気味な北条君。
今川さん以上に偉そうな足利君。
他にもいるが兎に角うちのクラスの人達は濃い。
だが、濃いのは何もうちのクラスばかりではないのだ。
「ちょっと猿子!何織田君に付き纏ってんのよ!!」
「ふん!毎日毎日隣のクラスから来るアンタに言われたくないわよ、このでこっぱち!!」
うちのクラスの日課となっている木下さんと隣のクラスの明智さんの言い合い。
木下さんは怒った時の「ウキー!」と偶に叫ぶこと、明智さんはおでこを常に出す髪型から互いに猿子・でこっぱちと罵り合って毎日喧嘩している。どちらも織田君に好意があるのではと考えるかもしれないが少し違う。織田君には既に彼女もいる。彼女達が求めているのは織田君と親しいというステータスだ。彼女達にとって重要なのは織田君が一番親しい女友達(彼女を除く)という立場なのだ。
僕だったら嫌だなぁと思うが、当の織田君が全く気にしていないので2人は毎日喧嘩しているのだ。
その原因となっている人物と言えば、
「ZZZ・・・・」
見事に机に突っ伏して爆睡中であった。
さっきまで起きていたのに何食わぬ顔でぐっすり眠っている辺り織田君は大物だと思う。
「ちょっと松子!1限の課題私のやっときなさい!」
「え、今からじゃ無理だよぅ」
今川さんが松平さんに絡んでいる。
今川さんはお父さんが会社を経営していて小金持ちらしい。
それもあってか尊大な態度を取ることがしばしばある。
松平さんは読書が好きな眼鏡女子で敢えて親しい人を挙げるなら織田君達だろうか。
あまり人付き合いが得意なタイプではない。運動も苦手で、小学生の頃には運動会の騎馬戦で恐怖から催したなんて噂がある程の人だ。あまり気は強くないのかもしれない。
「何?貴方、私に文句があるの?貴方のお父さんは私のパパの機嫌一つでどうとでもなるのよ?」
松平さんの顔色が一気に悪くなる。
なるほど。松平さんは父親の雇い主の娘である今川さんに強く出れないんだな。
これまでの疑問が一つ解消できた。
「おい、今川ぁ。朝からぎゃあぎゃあうっせえぞ。つか、あの程度の課題位自分でやれよ。ホントお前馬鹿だよなぁ~」
いつの間にか起きていた織田君がそう言いながら松平さんが押し付けられたノートを今川さんに投げ返した。織田君は何時も不真面目だけど時々こういうピシャリと決める時がある。こういう部分に惹かれてか彼のファンは学内にそこそこいる。それと同じぐらい彼を嫌う人もいるけど。
「な、な、なんですってえええええ!!」
今川さんは顔を真っ赤にして怒っている。
まぁ、お嬢様らしいし煽り耐性低そうだもんなぁと一人心地に思う。
「まぁまぁ、落ち着きなよ。この僕に免じてさ!」
この一触即発の場に能天気に入って来たのは足利君。
彼はすこ~しナルシストですこ~し自己中心的な考えの持ち主だ。
両親はお金持ちだったらしいけど、お父さんの会社が吸収合併されて今は生活が前ほど裕福ではなくなったって噂だ。そして彼はこの様に見栄っ張りで出しゃばりなのであまり受けは良くない。特に
「うっせぇぞ、足切りは黙ってろ!」
織田君は彼を物凄く嫌っている。
足利君はあまり成績が良くない。運動も得意ではない。だが、やけに大きい態度。
これらの要素が一つに混ざり合った足利君の事が織田君は嫌で嫌で仕方ないらしい。
因みに足切りとは吸収した会社の経営陣から経営側から切り捨てられた足利君の父親とその息子である彼の事を揶揄したあだ名だ。
と言っても呼んでいるのは流石に織田君だけだが。
「なっ!貴様、貧乏人の分際で、僕の父さんを馬鹿にするなぁ!」
織田君に詰め寄る足利君。
足利君は沸点も低いのだ。身長もあまり高くない。
織田君もそんなに体格は良くないのだが、喧嘩慣れしており動きは軽やかだ。
掴もうとする足利君をひらりと躱す姿は宛ら舞っているかのようだった。
今川さんはまさかの展開にオロオロしている。
こう言う突然の出来事に弱い部分に萌えを感じている男子は多いらしい。
そして、何時の間にか松平さんはフェードアウトしており読書をしている。
この子案外図太い子かもしれない。
ふと、周りを見ると北条君が席に着いて勉強していた。
全く以て我関せずな態度だ。
ただ、時折ニヤついている所を見ると周りの声や音は聞こえてるようだ。
もし、この騒ぎを聞いた上で止めもせず笑っているのだとしたら彼はこのクラスで一番怖い人かもしれない。北条君はスポーツも出来るが勉強においては学年でも1桁内に入るほどの猛者なのだ。かと言ってがり勉という訳ではなく、クラスメイトともしっかりコミュニケーションを取っている。
その分だけ、彼の知らなかった一面に少し僕は怖くなってしまった。恐ろしや。
チャイムが鳴り先生が教室に入って来たことによりとりあえず騒ぎはそこまでとなった。
午前中の授業が続く中、やはり授業を受けるだけでもそれぞれの個性がよく分かる。
織田君は3限目でもう早弁している。因みに先生は気付いているけど何度注意しても直らない織田君を完全にスルーしている。
木下さんはノートに何か書いてるようだけど、恐らく板書を写している訳ではないと思う。彼女は授業中いつもノートを真剣に取っているが、成績は良くないし、よく松平さんに泣きついているのを見掛けるからだ。
そして松平さんは真面目に授業を受けているようだ。流石眼鏡っ娘だね。
今川さんと足利君は見事に夢の世界に旅立っている。あそこまで爆睡とは反って羨ましいな。
北条君は教科書とは別の参考書を開いて自習してる。
あ、マズイ。ノート取ってなかった。急がなきゃ!
4限目の授業が終わり漸く昼休みが訪れる。
織田君は授業が終わると同時に購買に走って行ってしまった。これもいつもの光景だ。
木下さんはクラスメイトと談笑している。彼女はかなり顔が広く色んな所に知人がいるらしい。
松平さんは静かにお弁当を食べているが、今川さんがずっと喋っている。今川さんは結構かまってちゃんだからなぁ。
北条君は昼ご飯を食べ終わったのか凄く難しそうな本を読んでいる。凄いなぁ。
そして、
「やぁ、上杉さん。今日も君は美しいね」
足利君が毎度の如く上杉さんにアタックしていた。
このアタックの始まりは入学当初、足利君が消しゴムを忘れた際、上杉さんが消しゴムを貸してあげたことに起因するらしい。事実かどうかは分からない。
で、アタックされている上杉さんと言えば、
「ありがとう、上杉君」
と、華麗に受け流す。
実際に上杉さんはかなりの美人だ。
足利君も少し優しくされてコロッといってしまったのかもしれない。
だけど、本人からすれば迷惑なんだろう。足利君と話す時の上杉さんの表情は何処となく取り繕ったものに見えるし、何よりこめかみがピクついている時がある。
それから何言か交わすと足利君は満足したのか教室を出て行った。
見事にルンルン気分なのが見て取れた。
「毎日よくやるよなぁ、おめぇも。好きでもねぇ奴に愛想振りまいてよぉ」
そう上杉さんに呟いたのは彼女の隣の席の武田君。
彼は一言で言うと不良だ。喧嘩も強いみたいで学校内に舎弟もいるらしい。
ただ、彼のスタンスは邪魔する奴はぶっ飛ばすと言った物らしく、無暗矢鱈と喧嘩を吹っ掛ける訳ではないらしい。それでも気に食わない者のは全力で噛み付くらしい。これも噂だが家庭内もあまり上手くいってないらしい。僕的にちょっと怖い。
そんな武田君と上杉さんは幼馴染らしいのだが、あまり仲は良くない。
「誰が好き好んであんなのに笑顔見せてると思ってんのよ!」
上杉さんは知られていないが結構切れやすい。
これを知ってるのは恐らく僕と武田君ぐらいだろう。
「へっ、アイツんトコの実家目当てで媚びでも売ってんのかよ?」
その声には侮蔑の色が含まれているように思えた。
上杉さんも同様に感じたのだろう。
「アンタ、喧嘩売ってんの?」
上杉さんの声のトーンがグッと低くなった気がする。
気のせいか背後には龍が浮かんでいるような錯覚を覚える。
「おや、褒めてるとでも思ったのか?」
武田君は煽りを続けている。
何となく悪い予感がする。
「家族から逃げてる腰抜けがよく言うわね?」
今度は武田君がピクッとなって背後に虎が浮かんで見えるんだけど。
上杉さんの顔も何か怖いし、どうしよう。
「おい、て「上杉さぁん、お待たせ!ん?どうかしたのかい?」
恐らくトイレから戻って来た足利君が空気を読まずに突貫して来る。
だが、ナイスタイミングだった。おかげで2人とも気が削がれた様で険悪な雰囲気は消え去ってしまった。
おバカさんと言うのも馬鹿に出来ないなと感心してしまった。
ガラガラと音がして扉の方を見ると織田君が戻って来た。
そしてその後ろには見ない女子生徒が付いて来ていた。誰だろう?
「あ!織田君おk・・・と斉藤さん!」
木下さんは織田君に気付いて呼ぼうとしたんだろうが後ろの女子生徒を見てそれを止めた。
反応から見るに彼女は
「え?誰、あれ?」
「馬鹿!織田のカノジョだよ!」
「マジ!?」
「ああ、俺見たことあるから間違いない。確か学年はタメで名前は斉藤だったと思う」
僕も調査不足だったな。さいとうっと。
これまで以上にしっかり気を配らなきゃな。
その斉藤さんだが美人だ。目付きがキリットしていて一見キツく見えるがそれを加味しても美人さんだ。確かにあの子じゃ木下さんや明智さんは相手にならないよなぁ、悪いけど。
織田君と斉藤さんは昼休み終了の本鈴ギリギリまでお話ししていた。
かなりお熱い様子だったなぁ。普段の織田君からは想像もつかない姿だったな。
今日の授業も終わり、HRの時間になった。
さっさと終わって欲しいなと思っていると担任の展野羽先生が一言こう言ったのだ。
「あ、もうすぐ生徒会選挙あるから。立候補はご自由に~。自推・他推は問わないからな~」
その瞬間、クラス内の雰囲気がガラッと変わったのは気のせいじゃないだろう。
何せこの学校で生徒会長になった先輩たちは何れも国のトップに立っている。
書記でも会計でも副会長でもない。皆が求めるのは会長のみ。
この学校に来た人達は皆それを目標に進学して来たんだ。
目を輝かせる人、虎視眈々とその座を狙う人、自分しかいないと頷く人、正に人の数ほどに違いはあるがどれも皆上を目指す目をしている。
だが、僕は違う。
会長になる気はない。と言うか天地がひっくり返っても僕が会長になることはないだろう。
しかし、僕にはこの学校に入った目的はある。
それは単純に選挙を見届けたいと言うだけの事だ
僕らの世代はかなりの傑物が揃っている。
クラス内だけでも軽く10名は有望な人がいる。
そんな彼等の鎬を削る選挙、見ない訳にはいかないだろう!
それに他クラスにも松永君、毛利君、島津君、伊達さん、六角君と綺羅星の如き逸材がいるのだ。楽しみで仕方がない。
(うひょ~、ワクワクするなぁ)
これからの展望に戸隠祐直は今日もぼっちに隠れながら人間観察を続けるのだった。