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二十五人目の空  作者: 紫生サラ
第五章 守衛団
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第八七話……龍歩と弥生2

 バカ……。


「弥生、どうしたの? 大丈夫?」


 普段感情を表に出す事の少ない弥生の頬を伝う涙に、神楽は驚きの声を上げていた。

 今から数時間以上も前の事、これから仮眠をとろうとした時だった。偵察に出ていた千堂が戻り、すでに追っ手が迫っている事を告げられ、神楽、蓮見、沖田、鬼崎達は千堂の誘導で廃墟を脱出していた。

 車を出せばエンジン音で追っ手に気づかれると考えた千堂は、鬼崎達を歩きで逃げるように提案した。そして鬼崎達が逃げる時間を稼ぐために、千堂は廃墟に残ったのだった。

 もぬけの殻とわかれば、また追っ手は迫ってくる。その足止め役を千堂がかって出たのであった。うまく行けば、彼が車で追ってくるはずだった。


「えっ?」


 ハッと気が付いたように顔を上げる弥生。そこで弥生は初めて自分に麗奈、静香、神楽の視線が集まっている事を知った。


「……なんでもないわ」


 蓮見は周囲を見回りに行っている。千堂と別れた場所から、五人は明かりも乏しい道を歩き、やがて空に明らみ始めた頃、やっと休息をとった。

 この時間までこないとなれば、おそらく千堂は……。そう神楽は思ったが口にはしなかった。

 弥生は手の甲で涙を拭うと、彼女らしからぬ笑顔をつくってみせた。

 ……弥生?

 神楽は弥生のその誤魔化すような表情にいつもとは違う不自然さを覚えた。

 弥生はそんな風には笑わない。というよりも付き合いの長い神楽ですら、弥生の笑う所を見ることはほとんど記憶にない。


「弥生さん……」


「ええ、そうね」


 それは幻だったのか、声をかける麗菜に答えた弥生はすでにいつもの彼女だった。

 麗菜は怯えたように自分の肩を抱く双子の妹を見た。


「早いけど、行かなければならないわ……」


 弥生は立ち上がる。

 夜を明かしたが、仮眠らしい仮眠もとっていない。体をわずかに休めたに過ぎない。


「で、でも……」


 神楽は戸惑いながら弥生を見た。

 千堂を待たなくていいのか?

 そう口に出すか出すまいか迷い、口ごもったままになる。


「追っ手がくるわ。どうやら、私達を追っていた奴らよりも大勢。たぶん、そっち

が本隊みたいね」


「はい」


 弥生の言葉に麗菜は同意するように頷いた。

静香は何も答えず、ただ二人のやり取りを見守り、神楽はわけもわからず三人の顔を順番に見た。


「どうして、そんな事を?」


「バカが教えてくれたの。ただ、情報の得方がムカつくんだけどね」


 弥生らしからぬ言葉使いにますます神楽はわけがわからなくなった。


「聞いて神楽……私は今来た道を戻るわ」


「ええ!? ど、どうして!?」


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