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二十五人目の空  作者: 紫生サラ
第四章 覚醒
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第七七話……月夜の戦い1

「襲った?」


「ああ、現在研究所は壊滅状態。多くの犠牲者が出たらしい。所長や副所長も犠牲になったと情報が入っている。君らが脱走する時にやったんだろうという事で特殊部隊まで動いている始末だ」


 驚きが空の顔に浮かぶ。その表情は黒髪長身の少女も同様。猫耳少女は理解していないのか、日倉の足に尻尾を巻きつけて甘えている。


「今、初めて知りました」


 戸惑い、困惑。佐藤は目の動きや声のトーンの変化から、経験的に空が嘘を言ってないことを察した。

 それと共に、顔に出さないように注意を払いつつ安堵で胸を撫で下ろす。

 やはり、子供らの仕業ではなかった。まだ自分の勘は鈍っていない。


「俺達も君達の追跡部隊の一角だ。追跡途中で如月君に出会ったというわけさ」


「如月? 日倉は皐月って名前だと思いましたけど……」


 佐藤と奥山は顔を見合わせる。


「彼氏でも知らない事があるんだな。確かに謎めいた女は魅力的かもしれないが……」


「いや、別に、彼氏じゃないんですけど」


「何を話しているの?」


 痺れを切らした冴木が口を挟み、佐藤達に自分の名前を名のり形式的な挨拶をする。


「どこか落ち着ける場所を探そう。情報交換をしたいんでな。君らの車で、俺達について来てくれるか?」


「え、ええ、わかりました」


 佐藤はポンッと空の肩を叩き、自分達の車へと戻って行った。


「風見君、今別の話をしていなかった?」


「……何でもないよ」


 怪訝な顔を向ける冴木を無視して、空は自分達の車に戻った。

 後部座席では相当疲れたのか、先に戻っていた日倉が静かに寝息を立てていた。

 日は暮れ。間もなく夜が空達の頭上に訪れようとしていた。



 空を歩む叢雲も雲樹の頂きに道を譲り、そこだけ空が垣間見える。

 王はその威光を示すかのように金鏡を掲げ、月光の法衣を纏う。


「数が多い!」


 闇に蠢く人の気配。

 戦闘が始まり、圭祐と茜はフル回転で能力を放出し続けている。

 圭祐が植物の葉、小石、砂利などを引き寄せ、茜の能力で射出を繰り返す。圭祐は相手の持つ武器を奪うほどの力はないが、発射された銃弾をコントロールする事はできる。

 茜と圭祐の能力を駆使し、銃弾を反らし、それを再利用している。今戦況を支えているのは、圭祐と茜の能力に他ならない。


「上村さん何かできる事はありませんか?」


 早口に溝口が言った。

 上村は答える事ができなかった。予想以上の善戦だ。こちらも、そして相手も。正直、圭祐と茜がここまで戦えるとは思わなかった。

 何かをしなければならないのは充分に理解できるが、敵の数が減る気配がない。

 おそらく、周囲の部隊が集まってきているのだろう。


「はあ、はあ……」


 茜が息を切らして膝をつく。それでもまた意識を集中させ始める。


「茜ちゃん!」


 美奈が茜に駆け寄る。

 完全なオーバーヒートだった。

 圭祐も同様だ。誰の目にも明らかなほど疲労が見える。

 上村は天を仰ぎ、唇を噛んだ。

 こんな事って、私は何にもできないの!?


「と、鳥さん?」


 美奈の言葉にハッとして我に返る。


「美奈ちゃん?」


 彼女の視線を追うとその方向で鳥達の群れが散りぢりに飛んでいく。その元には仄かに光りが見える。


「……この匂い? まさか!?」


 匂い?

 上村にはわからない。しかし、溝口の声に上村はその光が何なのかを悟った。


「あいつら、火を?」


 光は王を中心として四方に上がる。森に生まれた灯火は風に運ばれ夜を照らした。


「私達の捕獲のためにこの森を燃やすき?」


「上村さん!?」


「溝口君、王様に謝っておいてくれる。私らのせいで火を放たれてしまったってね」


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