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二十五人目の空  作者: 紫生サラ
第四章 覚醒
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第七六話……日倉の帰還2

 その姿は今まで佐藤達の前に如月ではなかった。妖艶さや艶美さとはかけ離れた、むしろ年齢よりも幼く見えそうな少女だった。


「よかった無事だったんだな」


「そうですよぉ、頑張りましたからぁ、ほめてくださいぃ」


 そう言って日倉はしっかりと空の胸に抱きつきながら、片手で空の手をとり、自分の頭に乗せる。


「全く、再会早々何をしているの?」


 車から、日倉よりも年上と思われる髪の長い少女が現れ、腰に手を置きながら呆れたように言っていた。


「今ぁ、ご褒美をもらってましたぁ」


「わあ、皐月!」


 車から転げるように出てきた女の子は日倉の姿を見ると猫のような耳をピンッと立てて顔を明るくした。彼女が立ち上がろうとすると、彼女の頭の上を踏み台にして、やけに尾の長い白い猫が飛び出した。


「わわ、お姉ちゃん!?」


「にゃあ」


 佐藤達はその光景に目を見張る。

 彼らはあんなに尻尾の長い猫を初めてみた。その白猫と対象的な黒髪の猫耳少女の耳は偽物ではなく、まるで猫のように動いている。よく見れば、尻尾も生えていた。

 先ほどまで日倉如月と名乗っていた彼女の変貌。彼女の雰囲気と彼らが彼女の事を「皐月」と呼んでいる事に、佐藤は少し遅れて彼女が多重人格者なのだと気がついた。

 それに、何より異質なのは彼女だ。

 何か目が惹かれる。

 日倉よりも長身で長い黒髪、幼いような成熟したような形容しがたいその姿に、彼女の年齢を推し量ることができない。ややもすれば、少年なのか少女なのかもわからなくなりそうだ。


「……」

 いや、少年のはずがない。

 服装も、声も、骨格も、体つきも、どこからどう見ても女性のそれだった。

 如月が時折見せていた妖艶さとはまた別の何かを彼女は放っていた。

 その姿に、奥山は見惚れ、佐藤は警戒した。


「ああ、感動の再会はもういいかな?」


「……あなたは?」


「はいぃ、こちらの方はぁ、佐藤さんといいますぅ、味方ですよぉ」


 佐藤は振り向き自分の事を紹介している皐月に面を食らった。間延びしたしゃべり方は先ほどまでの如月の印象は欠片もない。


「君は、皐月と呼ばれていたな、如月君はどうしたんだ?」


「疲れたのでぇ、寝てしまいましたぁ」


「なるほど……」


「あのぉ、こちらの方々はぁ……」


「俺の名前は風見空です。味方、というのはどういう事ですか?」


 しゃべり始めた皐月を冴木に任せ、空が佐藤の前に出て言った。


「ああ、君がこのグループのリーダーか?」


「いえ、そういうわけでは……」


 空は一瞬口ごもり、冴木を見たが彼女は首を振って目で合図する。


「……まあ、そんな所です」


「そうか、改めて、この隊の隊長の佐藤だ。こっちは副隊長の奥山」


「よろしく」


「君達に……いや、如月君にスカウトされてね。俺達はここに来た」


「スカウト?」


「まあ、俺達は味方になるらしい」


「……なるほど」


 空がさして驚く様子もなく納得したのを見て、佐藤はまた日倉を一瞥する。

 彼女の能力を知っている。信用しているんだな……。


「でも、何で味方してくるんですか? ただではないでしょう?」


「話が早くて助かるな。俺達は真相が知りたくてね。君らが、なぜ研究所を襲ったのか、というね」


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