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二十五人目の空  作者: 紫生サラ
第四章 覚醒
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第七三話……夜の始まり

 土煙を上げながら二台のバイクが並走している。


「……あれは?」


「ほ、星河さん!」 


 お互いが目視できる距離まで近づくと、バイクの上で谷沢が声を上げながら手を振った。

 なんだ? あいつバイクに乗れたのか?

 一瞬錯覚かと思ったほど、一馬の中の谷沢のイメージにない風景だった。


「それに……」


「一馬……」


 梶、谷沢、三村はどこで調達したのか、塗装の剥がれたバイクにまたがり、谷沢はうしろに三村を乗せていた。


「おい、お前!」


 梶はバイクを降りると傷ついた一馬に慌てて駆け寄った。


「……他の奴らはどないしたんや!?」


「梶さん、いきなりケンカ腰なんですね」


 戸惑いながら怒鳴る梶に、谷沢は呆れたように言った。


「他のみんなも気になるけど、一馬さんもケガをしているみたいですね」


 谷沢の後ろにいた三村もバイクを降りると、一馬に近づく様子を窺った。

 出血はないが、顔色はよくない。


「色々あってな……」


「まさか、お前!?」


「安心しろ、梶。お前が思っているような事じゃない」


 その言葉に梶は怪訝な顔で睨む。


「とにかく傷の手当てをしましょう。話はそれから聞きましょう」


「すまない……」


「こんな時、冴木さんがいればいいんですけどね……」


 三村の言葉に一馬は苦笑いする。それは勘弁だ、と言おうとしたが、面倒になって飲み込んだ。それよりも今は大事な事がある。


「一先ずさ……」


「はい?」


「水とか持ってないか?」


   ※


「やれやれ、やっとか……」


 追っ手をやっとの事で撒くことに成功した。空の方に目が向いた事と鬼崎の能力のおかげで千堂達は順調に逃げることができていた。

 ただ、最短ルートからはかなりコースアウトはしていたが。


「ね、ねえ、千堂、ちょっと運転が荒くないかしら?」


 神楽が後部座席から疲労感のある声で言った。追われているのなら仕方がないが、今はそうではない。


「さっきからお尻が痛くて仕方がないわ。ねっ、弥生もそうでしょう?」


「私は……」


「あのなぁ、道が悪いんやから、我慢しいや。俺のドライビングテクでこれで済んでるんやで、むしろ感謝やろ?」


「ああ、うまく逃げれたんだから。文句いえないよ」


 言いかけた弥生の言葉を遮り、千堂が明るく言う。それに対して蓮見が同意する。


「何よ、哲也は千堂の味方?」


「そういう問題じゃないと思う」


「うん」


 双子の沖田が呆れたように呟く。


「ああ、蓮見はいつでも神楽の味方やもんな」


「な、なに言ってるんだよ!」


 にやにやと笑いながら言う千堂に、蓮見は慌てて言葉を返した。その反応に沖田姉妹も、鬼崎すらも顔をほころばしている。ただ、神楽だけが「そうかしら?」と眉をひそめる。


「神楽はたまに手袋外した方がいいかもな」


「なんで?」


「お前が天然だからや。……まま、それはさておき、そろそろ限界かな」


 もうすぐ日が沈む。

 暗くなれば、ライトをつけなけれなならない。周囲に他に車もなく、明かりのつく建物もない。こんな所をライトをつけて走れば目立って仕方がない。


「さてどうするか……」


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