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二十五人目の空  作者: 紫生サラ
第四章 覚醒
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第六五話……森の王2

 一体、何をしようって言うの? 圭佑は森に手を広げると意識を集中した。


「上村さん、予定通り左に曲がってください。圭祐君は準備して茜ちゃんは曲がるのに合わせて」


「う、うん」


 上村が返事をして、圭祐も無言で頷く。

 風?

 上村は森が騒がしい感じがして思わず外を見上げた。見れば、木が不自然に揺れている。

 まるで突然小規模な竜巻か何かに巻き込まれてしまったかのような不規則な動きを繰り返す。

 何が起きているの!?

 しかし、それを詮索するには時間がない。溝口の言ったポイントまであと僅かだ。車内では子供達が車を飛び下りるための準備を始めている。


「もう、何がなんだかわからないけど、いくわよ!」


「うん。いいよ、茜ちゃん、お願い!」


 上村がハンドルを切った。

 木の葉が風に舞う。いや、よく見れば風はない。吹いていない。吹いていないが木の葉が龍のよう列をなし、上村の車の上に舞い降り、それは瞬く間に直径一メートルほどの木の葉球体になった。


「えーい、発射!」


 木の葉の弾は茜の可愛らしいかけ声と共に猛烈な勢いで後方へと遠ざかり、カーブに差し掛かった追っ手車両のフロントガラスに衝突した。

 木の葉の弾に破壊力はないが、視界を奪うには充分だった。車両は急激に減速し、一気に上村との差は広がり、子供達は安全な速度まで落とした車から飛び降り、森の中に消えて言った。

 開けっぱなしになるはずだったの彼らが開けたドアも、茜が「えいっ」と気合をかけて指を鳴らすと何事もなかったかのように閉じていった。

 す、すごい……。

 上村は舌を巻いた。

 茜の能力は、圭祐とは逆の能力だ。物を遠ざけるというものだった。

 圭祐が遠くの木から追っ手に気が付かれないように木の葉を引き寄せ、上村の車の上、つまり圭祐の所まで引き寄せ、茜がそれを受け取り射出した。


「ちっとばかし、私は見誤っていたみたいね」


 山崎の研究によれば、二人の能力値が一番高い数値を示していた。しかし、ここまでの事は研究所では予測されていないかった。

 報告では、圭祐の能力の範囲は数メートル、対象物体の上限は三キロほどまでだった。茜に関しても似たようなものだ。

 しかし、今見たかぎり範囲も重さもはるかに上回っている。しかも、それを全く苦もなく行っているように見えた。

 後方で守衛団車両の走行音が聞こえる。どうやら建て直したようだ。逆に言えば、溝口らが無事にやり過ごせたのだろう。

 上村が左にハンドルを切ると、溝口の言っていた通り、百メートルもない位置に茂みが姿を現した。

 溝口の言った通りだ。


「……」


 もし、何もしらなければ、そんな所に突っ込もうなどと絶対に思わないだろう。 しかし、今はそれも違って見えてくる。


「全く、色々とどうなってるのよ……」


 上村は苦笑いしながら覚悟を決めた。


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