第四話……噂
「どう思う? あの新入り」
「どうって」
「まだ、なんとも言えんよなぁ」
ひそひそと噂話をする一団に千堂がひょっこりと顔を出し、にっこりと笑ってみせた。
「千堂……」
「蓮見、まだ覚醒もしていない奴のこと、どうのこうの言ってもな?」
千堂の言葉に、蓮見哲也はあいまいに頷いた。
共有スペース。能力者として管理されている子供達が監視なしで集まれる数少ない場所である。
彼らの精神衛生上、表向きは監視がないということになってはいるが、人間が立っていないだけで、カメラは回り、音声しっかり記録されている。
しかし彼らもそんなことは百も承知だった。
大切な話をする時には、集まり、小声になった。
「でも、あの人……風見さんだっけ? 本物だったら、揃ったってことでしょう?」
蓮見のとなりに座っていた白い手袋をした神楽真結が口を開く。彼女はその手を隠すように自分の手を自分の腿の下に敷いて座っている。
「うん、そう、ぶっちゃけその通りやね」
千堂の同意に神楽が頷くと、他の子供達も納得したようにお互いを見合いながら黙りこんだ。
「でもさ、そんな余裕あるの?」
沈黙を破ったのは、さっきから聞いているばかりだった谷沢浩だ。
「所長さんの動き次第?」
「それってどうやって知るのさ」
「……難題やね」
千堂の答えに集まったメンバーはげんなりして肩を落とした。
「俺は予知能力があるわけじゃないんだから。その時には日倉にでも聞けばいい」
「日倉ね、苦手なんだ」
「そうだったの?」
蓮見の言葉に神楽が横から口を挟む。
神楽と日倉は幼馴染である。蓮見もどちらかと言えば古く知っているが、それと得意苦手は関係がない。
「いい子なのに」
蓮見は「まあね」と曖昧に答えた。
「まあまあ、とにかく、まだまだこれからさ」
千堂は大きく伸びをした。