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二十五人目の空  作者: 紫生サラ
第二章 暗躍
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第五五話……日倉の戦い2

「如月?」


「そうよ、もし皐月が危なくなったら、如月が出てくるから大丈夫」


「如月って、誰?」


 サヤが後部座席から顔を出す。


「如月はあの子のもう一つの人格……いえ、もう一人の人格、と言った所かしら。私も何度かしか会った事はないけどね」


 冴木の説明に今度は空の疑問は解決されない。だいたい、もう一人の人格が出てきたからどうだって言うのだ。

 確かに、皐月の能力である予知はうまく使えばかなり効果的な能力かもしれない。

 しかし、転ぶのがわかっている相手に忠告しようとしたが、間に合わないような皐月のペースでは能力もあってないようなものだ。


「如月って、どんな子? 優しい?」


 空よりもさらに話を理解していないサヤが不思議そうな顔で訪ねてくる。


「そうね、皐月とは少し……いえ、だいぶ違うかしらね。悪く言えば凶暴かな?」


「凶暴?」


 空は吹き出しそうになった。


「よく言えば、冷静で正確な判断をするって所かしら」


「日倉が?」


 にわかには信じがたい。

 空が見ている範囲では、日倉は何をするにしても普通の人よりもスローペースだった。口調、行動、食事など、どれもスローなマイペースだ。凶暴とは程遠い。


「あの子、小さな頃から武道をやっていたみたいよ。研究所に来てからも、一人で練習しているみたいだったし」


「ほ、本当かよ!?」


 ますます日倉のイメージに合わず、空は驚きを隠せない。サヤはそんな驚く空の顔を見てからマネして驚いた顔をしている。


「にゃあ、にゃあ」


「うん?」


「うん、あのね、お姉ちゃんが、えっと、その如月って子がいても、強くても、車を降りて大丈夫だったのかな、って……」


 日倉がいなくなってから行儀よく後部座席で座っていたユキがサヤの頭の上から顔を出した。驚く冴木にサヤがユキの言葉を伝える。


「え、ええ、そうね……あの子の事だから、未来を変えるために降りたのかもしれないわ」


「未来を?」


 サヤがじっと冴木の横顔を見つめながら呟く。冴木の顔は何か迷っているような決意をしているような、それだけでなく色々なものが入りまじっている。サヤにはそれが何なのかよくわからなかったが、彼女に対して少しだけ好感を持った。


「あの子の能力は二十四時間以内の事を予知する事よ。きっと、このまま行けば、何か不都合があるってわかったんでしょう。だから、そうならないために車を降りたのよ」


「そういうものなのか……」


 空はそう返しただけで言葉が続かなかった。運命を変えるために、などと、自分よりも歳下の女の子が頑張っているのだ。そう思うと、胸のあたりが熱く、締め付けられる気がした。

 確かに、日倉が下りてからというもの、追っ手は見えなくなっている。

 今は彼女を信じ走るのが最善なのかもしれない。

 彼女が言った通り、彼女が合流する事を信じて。


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