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二十五人目の空  作者: 紫生サラ
第二章 暗躍
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第四七話……クリエ1

「作戦開始時間です」


「よし、フィールド発生リーダーを投下」


 その声に応え、巨大な上空に待機する二機の輸送機の一機から研究所を囲むように等間隔で全長五メートルほどの金属棒が射出された。

 投下された金属の棒は地面に突き刺さると、先端から展開し、一瞬の内に青い光が研究所をドーム状に包みこんだ。


「フィールド発生を確認」


「OK、じゃあ、パーティを始めましょうか」


 もう一機の輸送機の中で指揮をとっていた畑中は手を振って合図を送る。


「了解、クリエ投下します」


 夜闇に薄っすらと発光するフィールドを突き破り、三メートルほどの八面体のカプセルが次々に投下される。

 カプセルは研究所屋上や敷地内に突き刺さり、八面の内二面が剥げ落ちる。すると、そこからカプセルを掴む肉厚な手が姿を見せた。

 身長は二メートルを超えるしなやかな巨躯。

 太い両腕をだらりと下げ、やや猫背にそれは大地に立った。大きく膨れ上がった筋肉はペンキで塗られたかのように真っ白の部分と真っ黒な皮膚に包まれている。その模様はまるで白い半紙に墨を大量に染み込ませた筆で殴り書いたような規則性のないものだった。

 顔はなく。首から顎へとつながり、裂けた口だけが存在し、目も鼻も体毛も存在しない。

 ただ、口の上からすぐ背中へと生えている触覚のようなものがたえず何かを求めるようにさまよい動いている。


「クリエ、無事に起動しました」


「モニターを開始。それ以外の連中は待機だ。一時間後、調査のために潜入を開始する。それまでティーブレイクだ、酒は飲むなよ」


 畑中の声が無線を通じて各隊に通達された。


   ※


「CD、屋上ブロックから何者かが警告を無視して…第一シェルターを突、い、いえ、これは通過した?」


「どうしたの、状況を報告して!」


「隔壁を破壊したわけでもないのに通過されました。侵入方法は不明です」


「何なの? 実験体はいなくなるわ、研究所に侵入者だわ、全く!」


 梶原哲郎は次々に挙げられてくる報告と状況確認に爪を噛む。

 いつもなら真っ先に飛んでくる上村も、仏頂面で口ばかりの松原所長も姿を見せない。


「上村先輩、何をしているのかしら?」


「CDブロック全域隔壁を完了しました」


「侵入者の進行速度に変化はありません」


「……どういう事!?」


 この隔壁は核シェルターを想定して作られている。しかし、破壊もせずに通過してくるというのなら、存在しないのと同じである。


「映像は?」


「カメラが作動していません」


「!?」


「おそらく、侵入者侵入と同時に破壊している模様」


「そんな!? 映像が手に入りしだいこちらに回して。松原所長は!?」


「連絡がつきません!」


 こんな時に……どうなってるのよ……。


「仕方ない、現時刻を持って指揮は私がとります。研究所待機の各隊に通達。守衛団は侵入者を迎撃、侵入者を排除に向かえ。非戦闘員は各々緊急避難を。Eブロックに誘導して」


 メインスクリーンに映し出された研究所の見取り図にいくつもの赤い点が点滅している。


「迎撃開始……侵入者、止まりません」


「侵入者隔壁通過前に液体窒素を噴射」


「は、はい、液体窒素噴射します」


 これで止まらない事はないはず。


「目標、完全に沈黙しました」


「そう……」


 梶原は思わず安堵の息をついた。いや、まだ終わってはいない。


「別ルートを行く侵入者にも同じ対応を」


「了解!」


 しかし、なんて事だ。所長も上村とも連絡がつかない、こんな時にこんなトラブルに見舞われるなんて。


「あとで上村先輩に奢ってもらわないと割にあわないわ」


 おそらくこの研究所始まって以来の騒がしい夜だったに違いない。まだ気は抜けないものの、これで一先ずは……。


「一端停止した侵入者、再び動き出しました!」


「なんですって!?」


「映像が入ります!」


 メインスクリーンが切り替わった。


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