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二十五人目の空  作者: 紫生サラ
終章 二十五人目のSora
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第百六十六話……二十五人目のSora・後編

「うーん!」

 少女は朝日を浴びて気持ちよさそうに伸びをした。

 もう十五年も生きているが、これほどの毎日太陽の光を浴びられた日は今までなかった。

 一つは一年を通して空を厚く覆っていた雲のせい。もう一つは自身の病のせい。

 とはいえ、今は手術により緩解している。ここ数日で特に回復していた。今までの付きまとうような不快な感じさや足枷のように存在した鈍重感などがまるでない。

「感謝しないとね……」

 少女は一人呟いた。自分が手術を受けられたのはひとえに兄のおかげだった。

 特別な施設に行った兄のおかげで彼女は手術を受けることができたのだから。元気になったこの姿を早く見せたかった。

 そしてもう一つの理由。空から青空と太陽が望むようになった事だ。

 一週間ほど前の事だった。空が急に明るくなり、それから光が降った。

 それはまるで雪のように。

 それはまるで花のように。

 それはまるで羽のように。

 ニュースでは世界各地の映像と共に、色々な表現で語られたが、降ってきたものは光だった。それが何なのかは、目下調査中であるとテレビでは伝えている。その結果が何であるか知る前に、別の話題になっていそうだなと彼女は思っていた。

 彼女自身、その光が降った時には今のように外にいたのだが、特に体調の変化などは感じなかった。

 自分のような手術をした病み上がりの人間に何もおきていないのだから、人体に対する影響などはないだと思っていた。少し気になる事と言えば、その光を手にしようとした時、光は手の上には落ちず、手に吸い込まれていったような気がした事ぐらいだ。

「小夜、ちょっと手伝ってくれる?」

 家の中から母親を呼ばれ、小夜は返事をして戻ろうとした時の事だった。

 小夜はハタと足を止める。 

「にゃあ……」

「……?」

 ……今、猫?

「小夜?」

 母親の声に聞こえるか聞こえないかほどの声で返事を返しながら、小夜はその声のする方、すぐ近くにある茂みに近づいて行った。

「にゃあ……」

「……?」

 茂みに潜むブカブカの大きな首輪をした黒い子猫はジッと窺うように小夜の事を見つめ、視線を下げた彼女と目があった。 

「……?」

「にゃあ……」

「おいで」

 小夜に手を差し出され、猫は茂みの中から彼女の匂いを嗅いだ。声を聞き、顔を見て、気配を知った。

 猫はゆっくりと、今にも抜けてしまいそうな子猫には不釣り合いな大きな首輪が外れないように、茂みの外へと出て行くのだった。


「二十五人目の空」はここで完結いたします。

ここまでお付き合いいただいた方、また読んでくださった方々に日々どれほど励まされたかわかりません。本当にありがとうございました。

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