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二十五人目の空  作者: 紫生サラ
第六章 白い迫撃
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第百四十話……燃え上がる炎4

 巨人の周囲に再び瓦礫が集まり始める。

 あれをまた飛ばしてくる気か!? 神楽を守らないと……!

 蓮見は手に蒼い炎を携えると今度は神楽のもとへと走った。

 茜の能力は自分自身から物体を遠ざけると言ったものだった。巨人を中心に集まった瓦礫が飛べば、神楽も襲う可能性がある。


「神楽、立って!」


 言うが早いか、浮遊した瓦礫がわずかに落ちるような動きを見せると何か推進力でもつけられたかのように発射された。

 蓮見は神楽の前に立つと、炎で瓦礫を薙ぎ払う。瓦礫を蒸発させるほどの火力も時間もない。できることは、わずかに軌道をずらすことぐらいだ。


「ぐっ!?」


 反らしきれなかった瓦礫の破片が蓮見の体をかすめていく。神楽は屈んでいたのと蓮見が盾となったおかげで無傷だった。


「……神楽?」


「夏美と聖がいなくなっちゃった……もう一体の奴と一緒に……」 


「!?」


 消え去りそうな声でこぼれた言葉に蓮見は自分の耳を疑った。それから突然周囲に舞い散った光の花びらを改めて見てその意味を理解した。


「こんな事って、二人は……」 


 神楽の嗚咽に蓮見は胸が締め付けられる。

 あの聖が……?

 蓮見はぽっかりと胸に穴が開いたような喪失感に一瞬眩暈がした。

 聖ほどの能力があって、判断力があって、強さがあっても……。


「聖がいなかったら、もう……」


「……」


 神楽の言葉に、蓮見は返す言葉がなかった。聖がいなければ『バリア』を突破することはできない。聖で相討ちだったものを、自分がどうにかできると思えない。

 もう逃げるしかない……。

 しかし、逃げるのだって簡単ではない。

 その気になれば、あの巨人は自分達よりも早く走るのだ。それに後ろからあの衝撃波を撃たれる可能性だってある。

 蓮見は、肩を震わし涙をこぼす神楽に視線を向けると、湧き上がる恐怖心と震えをかみ殺した。


「神楽、しっかりしろ! 泣くのはあとだ。今はあいつを何とかしなくちゃいけないっ」


 彼は神楽の両肩を掴み、顔を上げさせた。その顔には一欠けらの希望もない。


「私達だけでどうにかなるわけがないよ!」


「……でも、やらなきゃならないだろ……!」


 足止め、時間稼ぎ、神楽だけでも逃がす手段を考えないと……!

 蓮見は神楽が手にしていた銃を手にとると、再び巨人に向かい対峙した。


「て、哲也!」


 神楽には再び巨人に向かおうとする彼の気持ちが理解できず、引き留めようと咄嗟に彼の手を握った。

 ……!?

 無意識に手を握った瞬間、神楽の中に蓮見のイメージが飛び込んでくる。神楽には蓮見が普段の何倍にも大きく見えた。その強い存在感にドキッとして思わず手を離す。

 今まで肩を並べて歩いてきた蓮見とはまるで別人のようだった。

 ……今の哲也?


「……この銃、あと何発撃てる?」


「えっ、うん、あと四発残ってる」


「四発か……わかった」


 蓮見は再び巨人に向かい駆け出した。


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