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二十五人目の空  作者: 紫生サラ
第六章 白い迫撃
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第百三十一話……真実の欠片3

 松原? 所長?


「それどういう事?」


 戸惑う不破、スクリーンのランプも異様な点滅を繰り返している。


「最初から、保守も推進も存在しなかった……そういう事です」


 田谷は六番目のスクリーンに同意を求めるように肩をすくめて見せる。


「……」


 六番は何も答えない。


「保守も推進もないって?」


「そうです。なぜなら、保守派の十二人も推進派の十二人も、同じ人間なのですから。そうですよね? 松原所長、いえ、ここでは松原博士、と言った方がいいですかね?」


「!?」


 どいうこと?

 不破は先ほどの暗示が効いているのか、まだ頭がうまく働いていない感じがした。

 松原所長は異能力研究所所長で、襲撃の時に命を落としたはずだ。

 それが何故? しかも保守派の施設ですべてを破壊してきたではないか。

 不破はわけがわからず視線をスクリーンと田谷の間を行ったり来たりさせる。


「貴様、何を知っている?」


 六番の問い。その声には怒気が色濃い。


「知っていますよ。そう、私の足元に、あなた達の命とも言えるメインコンピューターがあるという事ぐらいわね」


「!」


 不敵に笑みを浮かべる田谷はもったいぶったように言葉を続けた。


「私はあなた達に消えてもらいたいのです。もうわかりますよね? 皆さん?」


「や、やめろ!」


「そんな事をすれば!」


「我々は!?」


「せっかくクリエの実用化にも成功したのに!」


「成功したのに?」


 侮蔑、嘲笑、悲哀の入りまじる嘆息をこぼし、田谷は円陣の中央でホルダーから銃を抜き放つ。そしてそれをおもむろに自分の足元に向けた。


「成功して、それでどうするつもりだったんですか?」


「……! ……? ……」


 今まで騒ぎ立てていたスクリーン達が水をうったように静まり返る。


「金? 名声? 地位? 権力? あなた達には必要がないものでしょう? そんなものをもっていても意味がない」


 田谷は腕をだらりと下げ、そのまま銃の引き金を引いた。


「……!?」


 発砲音と共に、金属製の床が弾け、抉られる。田谷の手は休むことなく引き金を引き続けた。


「やめろ!」


「やめて!」


「やめえてくれ!」


「消えたくない!」


「死にた……!」


 しかし田谷の手は止まることなく、やがて引き金を引いても何の反応もなくなった。

 銃弾は撃ち尽くされたのだ。

 部屋には硝煙と静寂が立ち込めた。


「た、田谷……!」


 不破はやっと声が出たような気がした。


「これは、一体どういうことなの!?」


「見てのとおりです。仕事を終えたのですよ」


 声を荒げる彼女に彼は六番のスクリーンのそばまで歩いて行くと、それを背もたれにして腰かける。胸ポケットから煙草を取り出し、口にくわえるとライターで先端に火をつけた。


「田谷!」


「……そう焦らないで。さて、まずは何から説明いたしましょうか……」


 田谷は白い煙を吐きながら頭の中で言葉を選び始めていた。


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