表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
二十五人目の空  作者: 紫生サラ
第六章 白い迫撃
130/167

第百二十八話……問い

「おい、何か作戦はあるのか?」


 隊員の一人に言われ、空は努めて余裕のある表情を作って言った。


「いや、無い」


「おいおい、手伝えって呼びかけておいてそれかよ」


 空の呼びかけに答え残ったのは残存していた五人の内二人だけだった。三人の姿はすでに見えない。それでもよく残ってくれたと空は頭を下げたい気分だった。

 一人は二十代半中肉中背、短髪の菅原という男。もう一人は三十代半ば、身長は高くないが軍人らしいがっちりとした体付きの猪熊という男だった。


「ただ、時間稼ぎをしたいんだ」

 能力がすべてあるタイプⅠに銃は危険だという事は能力がない空でもわかる。

 この巨人の相手をするには聖や蓮見の協力が必要だ。

 情けないけど、他のメンバーを待つしかないってことだよな? 

 今はこいつを引きつけ、三体が固まらないようにすることぐらいしか思いつかない。

 幸いにして、もっとも人型に近いこの巨人は他の二体に比べて戦闘意欲を感じない。それは特別な能力などなくてもわかるほどに顕著だった。こうなるとむしろ、他の二体が攻撃的、好戦的過ぎるようにも思われた。


(……ナゼ) 


「うん?」


「おい、菅原、なんか言ったか?」


「いえ、猪熊さんこそ……」


 空達はお互いに顔を見合う。


(ナゼ、イキルのか?)


「また?」


 普通に話しかけられたように聞き、理解しているように感じるが注意深く意識を集中させてみるとその声が耳で聞いたものでない事がわかる。

 俺が覚醒したわけじゃないよな?

 研究所にいた時は特に望みもしなかった覚醒も、脱走が始まってからそれを意識し始めていたできれば、こんな場面が来る前に何らかの能力に目覚めていてほしかった。

 しかし、声は空だけでなく二人にも聞こえている。という事は、巨人の力で話しかけてきているという事だ。


(イキルとはナンダ? セイブツとは?)


「おいおい……?」


 突然世界が歪んだ。

 空は自分がどこに立っているのかわからなくなり、強い眩暈に襲われたかのようにその場に転倒しそうになる。文字通りグルグルと回転する意識の中で必死に自分を位置を確認した。

 上、下、右、左。足元に床、上に天井……。自分が立っているのは、地面、床、地上。


「あっ!?」 


 気が付くと空はとある家の前に立っていた。


「ここは……」


 そこは空の実家だった。異能膂力研究所へ行くためにあの日出ていったあの家だった。   

 そんなはずはない。

 頭では理解している。

 今まで第六研究所にいたのだから。

 わかっている。わかっているはずなのに足が向くとそこに安らぎがあるような気がしてくる。第六研究所での事の方が夢の中のような出来事に思えてきてしまう。

 空は導かれるようにその場に立ち、サヤとユキの存在を感じた。そして、冴木鈴華。

 俺は帰ってきた……?

 すべてを終えて……?


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ