第百二十四話……白い迫撃1
一人走り出した蓮見は手に炎を携えながらタイプⅢに向かう。
あいつは危険だ。
動きの速いタイプⅡの相手をしているうちに力をためたタイプⅢが衝撃波を放つ。その衝撃波は聖の『バリア』でも防ぐことができないとなれば、その一撃が命とりになってしまう。下手をすればその一撃で全滅だってありえる。
「……」
こいつの注意を自分に向け、衝撃波の軌道を聖達に向けないようにする。
役目はわかってんだけど……。
蓮見は内心泣きそうだった。
はっきり言って、自分は千堂や聖とは違う。
火を出し、コントロールするという戦闘に適した能力っぽいが、使用している人間は完全に非戦闘員だ。勢いで飛び出したが、これと言った作戦もない。
「!」
タイプⅢに近づこうとする蓮見に、タイプⅡが意識を向ける。しかし、タイプⅡが動く前にすでに聖が動き出し、それを阻止する。
さすが、聖だ……聖があれを何とかしてくれるのまで持てば、何とかなるかもしれない。
いや、もし何とかなったとしても……。
今はまだほとんど動きを見せていない人型のタイプⅠの事を思い、蓮見は首を振った。
それを今考えても仕方がない。
今は空が時間を稼いでくれる事を祈るしかない。
「いくぞ!」
蓮見は炎の手を振ると、手にまとっていた炎はダーツほどの大きさに宙に散らばり、タイプⅢに放たれた。タイプⅢは避けることなく蓮見の炎は空中で四散した。
……『バリア』だ。聖のに似てる。
炎の矢は『バリア』よって遮られたがタイプⅢの注意を引くことはできた。
あとは射線をずらしながら逃げれば……。
「……!」
「えっ!?」
その時、ゴリラのような大型の類人猿を思わせるタイプⅢが地を蹴った。
「うそだろ!?」
速い!?
ドタドタとしたその動きはタイプⅡのような俊敏さとはかけ離れていたが、それでもその力強い走りは蓮見よりも遥かに速い。
「!?」
って、ちょっと待てよ!
タイプⅢの肩の空洞がまるでスピーカーのように平たく変形すると、先ほどのように大きく肥大することなく空間に無数の魚眼レンズを浮かべたような歪みを作った。
「……おいおい」
小さな衝撃波が蓮見を目がけいくつも放たれる。走る蓮見を追って、壁には蜂の巣のような穴が次々と空き、壁を瓦解させた。
あのでかい衝撃波だけじゃないのか!?
「こんなの、どうすればいいんだよ!」




