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二十五人目の空  作者: 紫生サラ
第六章 白い迫撃
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第百十七話……聖舞う1

「……!」


 思ったよりも数がいる。

 聖は第六研究所正面ゲートから突入し『バリア』を全開にして駆け抜けていた。

 驚いた事にすでに第六研究所内部の大部分はもう何年も前に廃棄され、その機能のほとんどを失っていた。中ほどまで行ったところにある大きくドーム状になったエリアでは、天井部分が半壊し空がまる見えになっていた。


「全く、ゴールはさらにこの先ってことか」


 などと愚痴をこぼしながらも、聖にはいくらかの余裕があった。

今の所自分の能力である『バリア』で対応できないような武器には遭遇していない。今のままなら、至近距離からの発砲でも耐える事ができるだろう。

 問題はこの力をどれだけ継続して出し続けられるか……。 


「追え!」


「袋のネズミだ、麻酔弾を使え」


 ゴール到着で、一気にケリをつけてもどればいい、とも思っていたが、どうやらそうもいかないらしいな……。

 それは守衛団の包囲網に囲まれたという状況的な判断ではなく、彼の好奇心の問題もあった。

 こんな状況、そうそうにあるもんじゃない。

 思わず笑みがこぼれる。

 この高揚感が自分自身の渇きを癒してくれることを聖は知っていた。

 夏美が居れば、そんな事を言っていられない。純粋に喧嘩を楽しむことができなくなる。

 それに……。


「……!」 


 聖は自ら守衛団隊員達の前に躍り出ると、一気に襲い掛かった。


「撃て!」


 怒号に応えるように引き金が引かれた。

 しかし、そのすべては聖の周囲数メートルほどの所でポップコーンのように弾けながら落ちていく。


「ダメです、目標に届きま……!?」


 隊員のセリフが言い終わる前にその顎を聖の拳が打ち抜いていた。一撃で一人を沈めると、振り向きざまにさらにもう一人の腹部を打ち膝をつかせた。


「くっ!?」


 隊員は体をくの字曲げ悶絶した。それと同時に頭には疑問符が浮かぶ。

 いくら何でも、これほどの勢いで殴り続けられるはずがない。グローブもなにもない状態で殴れば、当たり所によっては手がただでは済まないはずだ。

 それをこの少年は少しの躊躇もなく打ち抜いていく。

 痛みを感じていないのか?

 聖の進行速度に隊員達の陣形が乱れた。

 陣の内まで接近されては容易に引き金を引くことはできない。味方に当たる可能性が出てきてしまう。

 一方の聖は『バリア』で相手からの攻撃を完全に遮断し、攻撃の手を休めることはない。戦場は聖の独壇場となっていた。


「そこまでだ!」


「!?」


 怒声が戦場の時を止めた。


「おとなしくしてもらおうか。塚本君」


「ひ、聖……」


 聖の前に取り押さえられた夏美の姿があった。夏美は隊員の一人に抑えられながら、銃口を向けられている。


「……夏美」


「ご、ごめん、私……」


 夏美は思わず顔を背けたため、落胆した彼の顔を見る事はなかった。


「それ以上抵抗はするな。すれば、彼女が傷つくことになるぞ」


「……!」


 部隊長吉田の合図で、隊員の一人が聖をいきなり殴り飛ばした。聖は能力

で防御することもなくその弾き飛ばされると、それから先は先ほどと逆の展開となった。


「やめて! 聖にひどいことしないで!」


「君の彼氏は少々化け物じみているんでね。大人しくなってもらわないとね」


 冷笑を浮かべる吉田は聖を殴る隊員達を見ながら言った。麻酔弾を一発撃てば済む話だが、それでは隊員達の気もおさまらない。

 聖は隊員達に殴られ、蹴られながら、夏美の泣き声を聞いていた。

 どうして来たんだ……? 待っていろっていったのに……。


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