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二十五人目の空  作者: 紫生サラ
第六章 白い迫撃
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第百十二話……再動

「た、田谷!」


「さて、これでここの仕事は終わりですね」


 田谷達は十二のスクリーンとその人格を保存した水槽のようなカプセルを破壊した後、再び移動を始めていた。


「お前、これは一体どういう……」


「まあまあ、そんなに慌てなくとも、もう一仕事残っていますから、そちらに向かいながら少しお話をしましょう」


「もう一仕事? 向かう? どこへ?」


「それはもちろん……」


 田谷はにっこりと助手席に座る彼女に笑いかけた。


「次はあなたを研究所へと派遣した者達のいる所、つまりナイツの推進派の方々の所ですよ。不破博士」


「!?」


 不破は驚いたように彼の顔を見てから、怪訝な顔になった。彼女自身、推進派の指令で派遣されたとはいえ、その所在がどこにあるのかを知らなかった。組織に所属している不破ですら知らないというのに、何故彼が知っているのか?


「ちゃんと納得のいく説明をしてくれるんでしょうね?」


「ええ、納得はどうか知りませんが、説明するつもりですよ」


 彼は笑みを浮かべながら車を加速させるのだった。



 ピーッピーッ……。

 けたたましくアラームが鳴る。

 畑中はベッドの中から腕を伸ばすと、手探りで音のする方を探った。すると目覚ましは手に当たり、床に転げ落ちた。


「……むぅ」


 うるさい……。


 目覚ましの捜索を諦めて耳障りな電子音から逃れるように毛布を頭から被ったが、音は難なく毛布の中へと侵入してくる。

 彼女は仕方なく床に落ちた目覚まし捜索のためにベッドから起き上がった。


「うん?」


 転がった時計を手に取りよく見てみると、セットした時間にはまだ少しばかり時間があった。つまり音の主はこの時計ではない。


「……?」


 音は脱ぎ捨てた制服の中から。

 畑中は顔をしかめながら自分で脱ぎ捨てた上着のポケットを手で探る。一か所目になく、三か所目まで探してやっと見つかった。鳴っていたのはナイツ本部とつながる指令用の携帯端末だ。


「ちっ……」


 一瞬アラームだけを止めてまた寝てしまうかとも考えてもいたが、探している内に目が覚めてしまい、仕方なくその内容を確認する。


「……」


 また出撃か……。やれやれ……。

 岡島大地らとの交戦で、すでにクリエの優位性は証明されたはずだ。まだ彼らと戦う必要性があるのだろうか?

 畑中は少し考えようとしたが寝起きのせいか頭が回らない。

 実験体の始末など守衛団に任せておけばいいものを。

 それとも守衛団の手には余るほど化けたのだろうか? もしくは何か状況に変化でも起きたのか?

 畑中は着替えながら、部屋を出るとまっすぐに武田の所に向かった。

 ノックもせずに実験室に入るとコーヒーを飲んでいた武田が驚いてコーヒーを白衣の上にこぼした。


「わわっ!?」

 

 そばにあったタオルで慌てて拭いている。


「は、畑中さん!? 急にどうしたんですか?」


「急用。叩き起こされたわ。彼らを連れていきたいんだけど、例の子らの調整はできてる?」


 畑中の言葉に、武田は待っていましたとばかりに目を輝かせた。


「ええ、出来ていますよ。最終調整が済んで、あとは実戦テストを待つばかりです」


 そう言って、彼は隔離実験室の強化ガラスの向こう側に手を向けた。

 強化ガラスの向こう側は特殊なフィールドが張られ、その中で調整をされていたシモンと二種類の新型のクリエが制御されている。


「へぇ……」


「動かせるの試作の各一体ずつだけですが、状況によってはベーシックタイプよりも成果を出せるはずです」


 自慢げに話す武田の話を聞きながら、畑中はシモンにも目を向けた。その視線に気が付いたのか、武田は「どうです、こいつらにも名前をつけますか?」と提案した。

 その提案に畑中は少し考えてから


「……ええ、そうね。じゃあ、あっちをアンデレ、こちらはフィリップにしようかしら」と、それぞれ指をさしながら言った。


「タイプⅡがアンデレ、タイプⅢがフィリップですね」


 畑中に名前を付けられ、武田は満足げに顎を撫でながら、その名前をデータに打ち込む。


「シモンを含めた三体で出たいわ。どれくらいで出発できそう?」


「四十分もあれば」


「二十分でやって」


「二十分!?」


 畑中の言葉に思わずオウム返しする。武田は色々と思い浮かんでくる反論と言い訳を一先ず抑え込み、おだやかに対応しようと口を開こうとした時、彼女に機先を制された。


「ええ、早く仕事を終えて、あなたと二人で食事に行きたいから、ね?」


「!? ええっ!?」


「できるでしょう?」


「で、できます!」


「頼りにしてるわ」


 畑中は艶美に微笑むと実験室をあとにした。



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