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退屈で難しい夢の話



死ぬ事を怖いと考え始めたのはいつ頃からなんだろう。

きっととっても小さい時からに違いない。


死ぬのは怖い。

そんな当たり前の感情は決して忘れる事は出来ない。

死ぬのなんて怖くないって言ってる奴だってきっと皆怖いんだ。

誰よりも怖いんだ。死ぬのが怖くないならこんな糞みたいな世界で息何て吸ってる暇何て無い。



僕は一体、いつから死ぬことが怖くなったのだろう。

















とても辛い夢を見てた気がする。


夢? 僕は死んだ筈だ。確かに死んだ。あの女少年に"何か"をされて死んだ。


死んでも夢は見るのか?


あぁ、ここはきっと天国なんだろう。

天国なら夢を見ても不思議じゃない。だって天国だし。


僕は死んだのかー。あー一回くらい楠とチューしたかったなぁ。

そうか天国か。



「こっらあ! んもうミクリ~早くチューしちゃいなってばあ!」



天国なのだ。



「ちょっと待ってよバラオ。ホントにキスしないとダメなの? 僕こいつ嫌いなんだけど……」



天国だ。



「ホントだってば~。んもう疑りぶかいわねぇ……百合子が責任取れって怒ってたわよん?」



天国。



「チッ……室長命令なら仕方ないかー……あぁマジやだ……バラオ変わってよー」



天国……



「変わってあげたいのは山々だけどぉ……百合子に怒られるのやーよ。ほおら! 早くおし!」



天国……?



「ちょっ!? バラ……ホントやめてってば!」



天国じゃない!?



「何だよどういう意味だよ!!」

「ちゅっ」



俺が勢いよく立ち上がると、口元に何か柔らかい感触がした。

その感触の先には。



「起きてたんなら言えよこのクソ野郎おおおおお!!!!!!!!」



燃えている"何か"があった。

















「んもうミクリったら馬鹿ねえ。折角起きたのにもう一発食らわせて落とすんだから」

「知らねーよ。寝てたこいつが悪いんだろ。たく気持ち悪い」


再び目を覚ました俺の前には女少年と何故かゴリゴリ巨体化粧MAXの女? が立っていた。



「此処……何処だよ」

「あぁ?」

「てかお前達何なんだよ……何で俺を」



殺したんだよ。

俺がそう言うと女少年が俺の胸倉を掴んで睨んできた。



「テメエが失礼な事言うからだろ……あれ初対面の人間に言うセリフじゃなえよな? あぁ?」

「だから何でそんなんで殺す事になるんだよ!! てかここ何処なんだよ! 俺は死んだ筈だろ!?」


俺が少年の腕を振り払うと少年は睨み続けたままゴリラ女に顔を向ける。



「バラオー。こいつマジで面倒臭い。燃やしたらやっぱ室長に怒られるかなぁ」

「馬鹿な事言ってんじゃないわよ。えーっと、夕凪菫クンだったかしら?」

「……何で俺の名前を」


ゴリラ女が俺に書類を投げる。

その書類には生年月日、家族構成、友人関係等、俺に関する全ての情報が記されてあった。


「こっちも色々調べてあんのよん」

「何が……何が目的だ?」

「目的? 菫クン自身には目的なんてないわよん」

「はぁ!? じゃあ何で俺を殺してこんな所に……」

「してない」

「はぁ?」


ゴリラ女は近づいてきて俺の顎を持ち上げる。


「殺して何か無いわよ菫クン」


そして顎から手を離すと扉に向かい奇妙な決めポーズを取った。


「此処は連鳴地区特殊犯罪対策室。魔法使いの狩場」


投げキッス。



「よろしくね。菫クン♡」





















「魔法……使い?」


俺は呆然とそこ、連鳴地区特殊犯罪対策室に立ちすくんでいた。


「そ」

「ちょ、ちょっと待てよ。まず俺が死んでないってどういう……」

「あのなあ、お前」


そこでゴリラ女の隣にジッと立っていた女少年が話に入ってきた。



「人が死んだら生き返るわけねえだろ」



至極当たり前の正論をぶつけられ僕は黙ってしまう。



「あら、そんな事ないわよぉ? 実際そんな能力の子だっているじゃないの」

「あれは死人で遊んでるだけだ。生き返ってるわけじゃない」

「だからちょっと待てって! ……死んでないとか、犯罪とか……魔法とか意味わかんねえよ……ちゃんと説明しろよ!」


僕の言葉に女少年が大きな目を吊り上げこちらを睨む。


「……あのさぁ」


今すぐにでも飛びかかって来そうな女少年をゴリラ女が大きな左手で制止する。


「私が詳しく説明してあげるわ」



そう言うとゴリラ女は僕の前の椅子に腰を下ろした。

それにしてもデカい身体だ。ガチムチ系の雑誌でこんなの見たことあるぞ……



「うんん~そうねぇ。まずはどこから……かしら……魔法使い、からかしらね。まず菫クン。魔法って知ってるかしら?」


芝居かかった仕草でゴリラ女が問い掛けてくる。



「知ってるかって……そりゃ知ってんだろ。魔法を知らない奴なんて今の世の中中々いないだろ」


いや現代の電子社会ではひょっとしたら魔法を知らない奴も中には居るのかもしれない。どんな時代だ。



「んんんんー。まぁ、そうねぇ。だけど多分菫クンの知ってる魔法の知識とはアタシ達の言ってる魔法はちょっと違うものなのよねぇ……」

「魔法の知識って……俺もそんなんあるわけじゃ無いし……それに魔法って別にそんな種類とかあるもんなのか?」

「ううん……どうやって説明すればいいのかしらねぇ……」

「見せればいいだけだろ」


いつの間にか女少年が俺の隣に立っていた。


「見せつけてやればいいだけだろうが。このクソにさぁ!」



女少年の手が燃える。正確には手の中で何かが爆発する。

そうして俺は本日三度目の攻撃を食らった。

















筈だった。

しかし実際には俺の身体には何の異変も無く、攻撃の代わりに女少年が投げ飛ばされて来ただけだった。



「いったあ! 何すんだよバラオ!!」

「何すんだはコッチのセリフよ!!! アンタ何回能力使う気なの!? 怒られるアタシの身にもなりなさい!」



どうやら放つ直前にゴリラ女が女少年を投げ飛ばしたらしい。


しかし、俺は今の攻撃で初めて燃えている"何か"の姿を確認することが出来た。


あれは……指輪?



「……!?」



そこでようやく気が付く。



「これがバラオの能力だよ。これが僕らの言う魔法だ」


ゴリラ女の周りに大量の蔓が乱れている事に。



「……魔法」

「綺麗でしょ? 薔薇の蔓よん。これがアタシの能力"茨姫"。綺麗な薔薇には棘があるのよん♡」


そこでゴリラ女はまた奇妙なポーズを決める。


それにしてもコレは本当に……



「マジかよ……」

「マジマジマジマジ大マジよ。その顔さては信じてなかったわねぇ?」

「さっきの説明、本気で信じる奴なんて居んのかよ……でもこんなんマジで魔法じゃん……」


正直さっきまでは殆ど信じてなかった。

女少年に二度も殺されたのも、手が燃えてるのも種があるもんだと考えていたが……

コレは流石に信じるを得ない。

一瞬でこの量をセット出来るなんて考えられない。


「んっんっん~その違いを説明したかったんだけどねぇ」

「バラオの能力を先に見せるから勘違いするんだ。僕のを見せておけば簡単に済んだのに」


女少年が初めて会った時の様な輝く笑顔じゃなく、歪んだ笑い顔をゴリラ女に向ける。



「しょうがないわ。一から説明してあげる」


ゴリラ女が指を鳴らす。

と、同時に部屋半分を埋め尽くしていた大量の蔓が霧の様に姿を消していく。



「あら、自己紹介。忘れてたわ」

「えーいいよー僕したくないー」

「アタシは薔薇姫。バラちゃんって呼んで頂戴♡。で、この子は御厨……」

「あーいい! いい! 僕はミクリ! ミクリでいい!」


女少年改めミクリはそう言うとゴリラ女改めバラオの隣にチョコンと座る。



「さぁ始めましょ。退屈で難しい夢の話を」
























「魔法使い。そう言って普通の人が思い浮かべるのは何なんでしょうね。

「ローブに身を包んだ老人かしら?

「杖を持ったボーヤかしら? 

「鼻の曲がった魔女かしら? 

「それともフリフリの服をきた女の子かしら? 

「菫クンはどう思ったの? ふうん……アラ、アタシは好きよん? そういうの。面白いわよね。若かった自分を思い出すわ。


「魔法、

「さっきのが私の魔法。言ったわよね?

「一日に2種類も魔法見ちゃうなんて菫クンモッテモテじゃない♡

「簡潔に言うわね。

「アタシ達には特殊な能力があるの。

「それが魔法……ね。

「菫クンが思い浮かべてるのとは随分違うんだけどねぇ。

「まぁ色々種類があるんだけど。アタシが直ぐに思い出すのだけでも、


「爆発させる力。

「空を飛ぶ力。

「万物を曲げる力。

「壁を作る力。

「心に介入する力。

「死体を操る力。

「刀を作る力。

「ブチ破る力。

「空気を操る力。

「傷を癒す力。

「力を確認する力。

「雷を飛ばす力。

「自分を砲弾にする力。

「氷を凍らせる力。

「死なない力。

「光を集める。

「何でも斬れる力。

「神様を味方につける力。

「動物を遣う力。

「英雄に成れる力。

「遠くを見る力。

「物を飛ばす力。

「身体の能力を上げる力。

「力を無効化する力。


「この全てに共通することが、

「人智を超えた精神の力であるという事。能力は複数使えないという事。能力が発生した原因は全て同じである事。

「何が俺の考えてた魔法と違うんだよ。

「そんな顔してるわよん?

「心配しなくても全部丁寧に説明してあげるわよ。


「まず1つ目。

「人智を超えた精神の力であるという事。

「簡単に言えば、奇跡の力って事よ。しょっぼい力は無いってワケ。

「大事なのは精神ってとこ。

「どうしてミクリの力を食らったのに死んでないのかって言ってたでしょ?

「それがそこ。

「あれは本物の炎じゃない。さっき怪訝な顔してたからもう気づいてると思うけど……あの中で爆発しているのは指輪。

「まぁ詳しくはミクリに後で聞きなさい。本題はそこじゃない。

「菫クンが倒れたのは死んだんじゃなくて、ただの気絶。

「あの時の苦痛はただの副作用。実際には傷一つついてないわよ。

「精神の力をちょっと食らったくらいで死ぬわけ無いでしょん?

「まぁアタシの茨姫はちょっと違うんだけど。



「2つ目

「能力は複数使えないという事。

「これはまぁ、そのまんまね。基本1つしか使えない。

「でもこれは例外的なのが多くてねぇ……

「能力には系統があんの。3つ……かしら?

「第一魔法、第二魔法、第三魔法。


「第一魔法は物理系……直接殴ったり身体が変わる系は大体コレね。

「ちなみにアタシやサボテンや百合子はコレね。

「……あーサボテンは他の室員で、百合子はここのトップみたいな子よ。

「後で紹介してアゲル。


「で、次は第二魔法ね。

「えっとねぇ………………違うのわよ。説明が難しいのよ。説明が。

「アタシ達も適当に分けてるから……フィーリングで。

「何かまぁ魔法っぽいものね。コレは。

「派手な、バーーンドーーンっていう……さっき言ったのだと、

「爆発したり。曲げたり。空気操ったり。雷飛ばしたり。

「そんなんが大体第二魔法。


「第三魔法は。それ以外。

「言ったでしょん? ちゃんとした分類は無いって。

「しいて言うなら……特殊なのは大体第三ね。

「心覗いたり、死体操ったり、死ななかったり。


「この決まり。能力は複数使えないって事に例外が多いのは。

「複数使える奴がいるからなのよん。

「私も含めて。

「んんんん~イマイチ解明されてないらしんだけどぉ。

「同系統だと複数使える人間も稀に居るみたいなの。

「まぁ別系統使ってる奴もいるんだけど~。



「3つ目

「2つ目がちょっと長話になっちゃったかしら?

「じゃあ3つ目はサクッと終わりましょ。

「能力が発生した原因は全て同じである事。

「トラウマ。

「菫クンにもトラウマってあるのかしらぁ?

「幼稚園時代の初恋の人に言われた事?

「小学生の時に妹さんに見られた事?

「中学生の時、親御さんに知られた事?

「それとも、一年前で親友にされた事?

「そんな睨まないでほしいわぁ。乙女は怖がりさんなのよん。

「全部知ってるって言ったでしょ?

「トラウマ。

「能力の発現原因はトラウマ。

「トラウマとなった大きな出来事が関係して力が寄って来る。


「まぁその力ってのがアタシ達の敵、何だけど。


「その力が反応して能力が発現。魔法使いとなる。

「って事よん。

「わかったかしら?

「ふふ。これから長い付き合いになるんだから仲良くしましょ?



「これでルール説明はおしまい。

「では引き続きお楽しみ下さいな」








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