みんなでデパート
〜 みんなでデパート 〜
朝 目が覚めた時には10時を過ぎていた
今日は特別冷えるな
布団の中だと言うのに寒いくらいだ。
大喜、多網はぐっすり眠っている
目を覚まし隣を見ると二人がいるのがとても嬉しい、ああ二人泊まりに来てるんだ。
冬馬君は布団の中でぬくぬくしながらふと明日の事を考えていた。
明日はいよいよ、清香達と映画
胸は高まり、もう今から緊張していた
。
会ってしばらくすれば緊張もとれるんだろうけど、会う前は冬馬君は毎回緊張している。
しかし久しぶりの再開だなぁ
またこうして会えるのがとても嬉しい
。
夏のキャンプの出会いにいまだに感謝する冬馬君であった。
冬馬君はトイレに行きたくなり
下に降りて行った
下では婆ちゃんが体操の様な事をして身体をクネクネさせている ビックリだ。
「おっ冬馬起きたかい、おはよう」
「おはよう」
トイレ トイレ
みんなが泊まりに来ていて賑やかな冬馬家であった。
昼食がすんだ時
隆が「今日みんなでデパートでも買い物行こうか?」
「やったー」子供達は大喜び
だが婆ちゃんが一番喜んでいた
「やったー」
ビヨーン 入れ歯はすでに口から勢いよく飛びだし床に落っこっていた。
「じゃみんな出かける準備しましょう
」と正子
「デパート出発だ」
子供達は大はしゃぎで二階に駆け上がっていった。
婆ちゃんもニッコリ笑っている
「洋服に着替えよう」冬馬君のテンションはマックスだ
「おーっ」続けとばかりに大喜も多網も嬉しそう
「明日のデートの為の洋服欲しいね」
大喜の名案だった
「そりゃ良いアイデアだ」
二人の胸は明日のデートの事を考えるだけでドキドキ高まり
多網も二人の様子を見ていて、何だか自分までワクワクしてきていた。
是非明日の二人のデート覗きたい
という気持ちである。
「みんなー、車に乗って、出掛けるわよ」下から正子の声が
外はとても、冷え込んでいる
「今日はこれで雨降ったら雪になるんじゃないか」と曇り空を見上げて隆がつぶやいた。
婆ちゃんは息を吐いては白い吐息になるのを見てはハッハ喜んでいる
「あっ!!」
冬馬君は叫んだ
何故ならまた婆ちゃんの口から入れ歯が飛びだし落っこちたからだ
「ちょっとお母さん」
「失敬」婆ちゃんはそのまま入れ歯を拾い上げ口に装着していた。
子供達はそれを見て大爆笑
笑うに笑えないのは隆であった
今にも吹き出してしまいそうだったが
正子の母を前にしては出来なかった
ちよっと、違うほうを向き、ばれないように笑っていた。
ブゥーゥ~ン 出発!!
車の中ではクリスマスは終わったのだが子供達がクリスマスソングを歌って盛り上がっている
婆ちゃんもそれに合わせ手を叩き
車内はちびっ子合唱団with婆ちゃんによって賑やかなものとなっていた。
30分くらいして、車はデパートに着いた。
「さあ、行こう」
正子が「みんな駐車場五階に停めたの覚えといてね」
「はぁーい」
冬馬君達は大人に洋服が欲しいとねだった
「そうよね、明日清香ちゃん達に会うんだもんね、少しオシャレしなきゃ」
と正子
「ほっほ、明日デートかい?じゃあ婆ちゃんがみんなに洋服買ってあげよう
」
「いぇーいありがとうお婆ちゃん」
洋服売り場に行き、色々見て回っていた、冬馬君はなかなか好きなのが見つからなかった
多網はすぐに「これ欲しい」
「どれじゃい?」
案の定、多網が選んだ服は真っ黒の服だった
大喜もすんなり見つかった、カラフルなパーカーだった
「良いじょい」
冬馬君はあれこれ見てまわっていた
こんなの着てたら、清香にどう思われるんだろう?これ着たらオシャレに見られるかなぁ?など考えては中々決まらないでいた。
結局30分たっても決まらない
「うーん うーん どうしよう?分からない」
すると婆ちゃんが
「冬馬 相手にどう見られるかじゃなくて自分が着たいなと思う服選べば良いんじゃ」とニッコリ微笑んだ
婆ちゃんはちゃんと冬馬君の性格と気持ちが分かっていたのだ
年の功だろうか。
その言葉のおかげか「これっ」と冬馬君の洋服も決まった
紺色のトレーナーだった。
「ありがとう婆ちゃん」
会計時、スタッフの人が値段を言った
聴きとれなかった婆ちゃんは
「ほいっ?」と聞き返した
その時だった ピューン
入れ歯はバンジージャンプをするようにまたも真下に飛びだして言った
冬馬君は店員の顔を見た、必死に笑わないように真っ赤になり引きつった顔がそこにはあった。
冬馬君は心で笑っていた。
さてこれで明日のデートの準備は万端だ。
食料品売り場で夕飯のおかずを買い
みんなは家に帰った
駐車場から外に出た時みんなは驚いた
「雪だ!!」
外では雨が軽く雪に変わり降っていたからだった
「綺麗な景色じゃの」
家に帰ると子供達はさっそく冬馬君の部屋に行き、買ってもらった服を着てみんなでチエックして楽しんでいた。
「中々似合うね」
「多網らしい」
「雰囲気変わるね」
盛り上がっている。
今や多網は明日の二人のデートがどうなるか気になって仕方がなかった
多網に名案が浮かんでいた
隠れてついて行こう
多網のスパイ大作戦はこうして始まったのだった。
婆ちゃんも明日の孫達のデートが気になって仕方がなかった
婆ちゃんは自分のカバンからサングラスを取り出しニンマリ笑った
こうして婆ちゃんスパイ大作戦は幕を開けたのだった。
夕食を済ませた後のお風呂
三人は一緒に湯に浸かりながら会話をしていた
「冬の湯船は最高だ」
「ところで多網は明日は何してるの?」
大喜は質問した
多網は「ここにいる」とつぶやいた
「多網も一緒に来れたらいいのに」
と冬馬君
多網はニヤリと笑い小声で 「行くよ」と囁いた
無論誰もきこえなかったが
子供達は明日のデートの為
その日は、はやめに床についた
布団の中で
「大喜は緊張しない?」
「少しするかな」
「何話そう?どう振舞おう?とか考えて何だかぎこちなくなりそうだよ」
冬馬君は今から自分が嫌われてしまうんじゃないかなどを考えては少し不安になったりもしていた。
「多網何かアドバイスある?」
多網は細い目をカッと見開き言った
「ラーメン アイラブユー」
あっ、それはいつかのボーリング場でみた変なカップルの作戦だ(冬馬君の日常より)。
二人はまず、参考にするのはやめようと即座に思った
「好きな人の前でどう振舞えば良いんだか?」
「クールに行こう」大喜が言った
「そっ、そうだね」
大喜も冬馬君もどう触れ合えば良いのかあまり分からないまま、明日を向かえる事になった。
冬馬君は中々寝つけずにいる
冬馬君の胸の鼓動だけが静かな夜更けに激しく鳴り響いていた
明日は久しぶりの待ちに待った清香との再会
つづく