パンドラボックスオープン
57、58、59、3時を回った。その瞬間辺りが暗くなった。人ごみからざわめきが生まれる。
「なんだなんだ?」
「なにこれ、こんなの聞いてないよ?」
アギトと大河が顔を見合わせると、
「アギト、なんか起こりそうだな。」
「あぁ。宴なんてなかったのか?」
ざわめきが拡大していく中。中央上空に光が立ち込めた。天から降臨するかのごとく、何かが表れた。
「パンドラ・オンラインプレーヤー諸君。私はゲームマスターである。・・・神だ。」
いきなり現れた白いローブを着た男は唐突にいった。そして、
「ギリシャ神話の中にある話がある。パンドラがゼウスからもらった贈り物の中に”開けてはいけない”と言われていた箱が存在した。しかしパンドラは興味に勝てず、その箱を開けてしまった。その時、箱の中から厄災、邪悪な物、災いが飛び出してきた。慌てたパンドラはその箱をすぐ閉じたという・・・その底に残ったのが一筋の希望となった。」
「なんだなんだ?いきなりクエストが始まるのか?」
大河が顔をしかめてつぶやいた。
神と名乗るゲームマスターは淡々と続けた。
「正式サービスをスタートと共にお前たちはパンドラの箱を開いた。お前たちに2つの災いが降りかかるであろう。1つ目は、このゲームはデスゲームと化した。このゲームでの死イコール現実世界でも死となる。ログアウトしようとしても不可能だぞ。メニューを確認するがいい。お前たちのログアウト画面が消えているだろう。」
時が止まったような静けさが広場を支配した。と、次の瞬間悲鳴と怒号と共に辺りから、メニューと叫ぶ声が聞こえ、落胆の悲鳴が聞こえた。その場から逃げ出そうとする奴さえいた。
「ヘル・ウォール」
広場の周りに黒々しい光を放つ壁が表れた。
逃げ惑う人たちは光る壁を叩くが開かない。
「まじかよ。このは、大河俺らも確認しよう。」
3人でメニューとつぶやくと、メニューウィンドウが表示される。
残念ながらログアウトが消えているのを確認した。
「怖いよ、おにいちゃん。」
「大丈夫だ。このは、俺らがいる。」
「そうだよ!大丈夫・・・」
言っている大河の顔は青ざめていた。
「2つ目の災いは、パンドラの箱を開けたのは人間。お前らはパンドラの箱を開けた。すべてのプレーヤーよ。お前らは人間族になるのだ。」
「ディタニレイション」
広場一面が赤い閃光で包まれた。次の瞬間目を開けると、大河とこのはに狼の耳も、ネコの耳もなくなっていた。自分の耳を触ると、先ほどまでとんがっていたエルフ耳もなくなっていた。
「固有種族が全て人間にされた。能力補正がかからなくなった・・・」
「みんな補正がなくなったてことだよね、おにいちゃん?」
「あぁ。」
みな、あっという間の出来事に唖然としていると、
「このパンドラ・オンラインには4つの大陸を用意した。そこに待ち構えるボスを倒すことができたなら、私と戦う権利をやろう。人間族ごときに負ける私ではないがな。うはははは・・・」
笑い声と共に、ゲームマスターは消えていった。
あちらこちらで聞こえる声。
「ふっざけるな!!」
「だれかなんとかしやがれ!!」
「おうちにかえりたい!!!」
様々な声が聞こえた。怒号、悲鳴、泣き声、様々な声だった。アギトがいった。
「おい、ここにいるのはまずいぞ。俺らがβテスターってばれると、周りに群がってくる。そろそろ、暴徒と化して、プレイヤーキルをするやつが出てくるかもしれない。」
「そうだな。イロイロとめんどーごとになりそうだな。」
「とりあえず、クレアシオンを出よう。」
俺らは一気にクレアシオンの門まで走ってきた。
「アギトこれからどうする?」
「そうだな。俺らはある程度レベルがあるから、このはがいても次の街へ行けると思う。だから、次の街を急いで、拠点として、しばらく対策を考えるのがいいと思う。このは、ちょっと怖い思いするかもだけど大丈夫か?」
「ぅん・・・・信じられないけど、状況が状況だからね。足手まといにならないように頑張るよ。」
「ありがとう。でも無理はしないでほしい。ゲームマスターが言ったことが本当なら、この世界での死イコール現実世界でも死となる。大河もこのはも気をつけてくれ。」
「あぁ」
「分かった。」
入口周りには同じことを考えたのか、ちらほら人が見える。俺たちは会話を終えるとクレアシオンの街を後にした。次なる街を目指して。
何かこうした方がいいとかありますかね?^^: