気づけば
とある高校での出来事
清掃活動も終わって誰もいなくなった放課後の教室。
そんな教室に入ってくる一組の男女がいます。
二人とも教室に入ってすぐに男のほうが女に向きかえって話を切り出しました。
「俺、初めて会ったときからずっと清水さんのことが好きでした。俺と・・・・付き合ってください!!」
告白のようです。
青春真っ盛りな感じでうらやましいやら妬ま・・・・・何でもありません。
さて、そんなどうでもいい話はおいておきまして、男の告白の結果はどうなんでしょう?
「無理」
・・・・・・即答ですね・・・・ヨシッ!!(ガッツポーズ)
「そう・・ですか・・・・・・・って何でだよ!」
玉砕かと思いきやなにやら様子がおかしいですね。
「断ったら練習にならないだろうが!」
「え~だって~」
「『だって~』じゃない!本番は今日なのにいざ告白って時に上手くできなかったらやばいだろうが!」
どうやら先ほどの告白はこの後の告白の練習だったようですね。
それにしても女子を相手に告白の練習とはなんとも恨め・・・・・何でもありませんよ?ぎりぎりセーフで言ってませんから。
「別にいいじゃん。どうせ結果は決まってるんだし?」
「え?絶対上手くいくに決まってる?わかってるじゃないか、美保のくせに~♪」
「逆だよ馬鹿和馬・・・」
「あれ?なんか言った?」
「べ~つ~に~?なんにも言ってないけど~それより早く終わらせてよね?
大切な趣味の時間がなくなっちゃうじゃない」
「あれ?お前の趣味って何だっけ?」
「ん?人間観察だよ?」
「なんだよ、その嫌な趣味」
本当に嫌な趣味ですね。
「へ~そんなこというんだ~」
「な、なんだよ!」
「せっかく幼馴染のよしみで練習に付き合ってあげてるのにな~」
おや?美保さんが教室の窓へ近づいていき・・・・窓を開けました。
放課後とはいえ部活動でグラウンドにはたくさんの生徒が残っています。
そんな中、美保さんは大きく息を吸い込んで・・・・・・
「みなさ~ん!2年5組の山田和馬くんは~!!」
「やめろー!!」
和馬くんも急いで止めますが・・・・・・
『ニコッ♪』っと笑って
「今日~!」
「わかった!人間観察?いい趣味じゃないか!」
「わかったならいいのよ。次に嫌な趣味とか言ったら沈めるから」
「沈めるって東京湾とかか?どこのヤクザだよ」
「え?カリブ海だけど?」
「まさかの海外!?」
いや、いっそのこと北極の海にでも!・・・・・セーフですよ?
アウトと見せてのセーフですよ?
誰がなんと言ってもセーフですから!
「まあ、いっか。それより清水さんはいつ来るの?」
「そろそろだと思うけど・・・・まさかお前・・・・」
「ん?そろそろ教室出るつもりだけど?」
「そ、そうだよな。いくらお前でもそこまでは」
「教室の外から見てるから!」
「ない胸張って言うことかよ!」
「・・・・・・ない?」
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいg(以下略)」
オーラが見えます!
美保さんの後ろにおぞましいほどにどす黒いオーラが!
たぶんスカ○ターが壊れるんじゃないかと思えるくらいですよ!
このキュッキュッボン!の体のどこに・・・・・ごめんなさいすみません申し訳ありません。
誤るのでこっちを睨まないでください。
一応、天の声なんですけど何で睨めるんです?
そのほっそい体のどこに秘密が・・・・・・ごめんなさい!
「・・・・・・・で、結局見るのかよ。まあ、お前からしたらただの人間観察なんだろうけどな!」
「え?・・・・・・人・・・・間・・・・?」
「恐る恐る俺を指差すな。俺は人間扱いさえされてないのかよ・・・・」
「ハ八ッ!冗談に決まってるじゃん」
そんな風に楽しそうにホンッッッッッッット!!に楽しそうに話していると
ふいに教室のドアをあけて人が入ってきました。
和馬はドアに背を向けていたので顔がわかっていませんが振り向くなりすぐに
「おれ、すきでふ!!!」
「いや、テンパりすぎでしょ!?」
練習どおりに言ってないどころか噛んでますからね。
そんな情けない告白に対しての答えは!
「ご、ごめんなさい・・・」
そう言って、教室の隅に置いてあったかばんを取ると走り去って行きました。
ですよね~
しかし、またもや様子がおかしいようです。
「え~と・・・・・・今の誰?」
間違えたんですか!?
確かに和馬くんは相手の顔も見ないで告白していましたが・・・・・馬鹿なんですか?
美保さんも笑いを堪えるのに必死じゃないですか。
「・・・・・・・笑うなよ?」
「アハハハッッッ!!!」
「笑うなって!」
「だって、間違えた上に『でふ』って・・・・プッ!」
「うるせぇ!」
「あれあれ?和馬、顔が真っ赤だよ?怒ってるの?恥ずかしいの?あ、両方か!」
「うるさいんだよ・・・・」
「ねぇねぇ!写メっていい?和馬の今の顔、すっごくおもしろい」
「うるせぇって言ってんだろうが!!!」
突然の怒鳴り声に教室が静まります。
まあ、二人しかいませんが・・・・
美保さんもさすがに気づいたみたいですね?
「あ、あれれ?和馬・・・・もしかして本気で怒ってる?」
「・・・・・・」
無言のまま答えようとしません。
二人とも無言の中、美保さんは和馬くんに近寄り、背中を『パンッ』とたたきます。
「な~に落ち込んでるのよ?一回くらいの失敗で落ち込むなんて情けないよ?これからが本番なんでしょ?」
「・・・・・・・情けない・・・・か・・・」
黙っていた和馬くんも口を開きました。
「間違えたのはいいんだ。いや、本当は駄目なんだけど。それよりも・・・・間違えたり、噛んだりするくらいにテンパった自分がなさけなくてな・・・・」
「和馬・・・・・」
急にテンションが落ち込んだのはやはり無理をしていたのかも知れませんね。
緊張しているのを隠していたのがさっきので表に出てしまったようです。
そんな和馬くんに対して美保さんは
「情けないのが何よ!和馬はまだフラれてないでしょ?だったらしっかりしなさいよ!」
「美保・・・・・」
「それにあんたがしっかりしないと観察のし甲斐がないじゃない?」
「・・・・・そう、だよな・・・・まだ終わってないのに・・・・本当の馬鹿になるところだった。
よし!絶対に失敗してたまるか!」
「うん、その意気!」
「美保、ありがとな」
「まあ、これでもこっちは?あんたのことずっと見てきてますから?勇気付けるくらい簡単なんですよ」
胸張っていい事言いますね~
あ、睨まないでくださいね?
「それでも・・・・・本当にありがとう」
「いいってば、それよりもそろそろいくね?」
「見てなくていいのか?」
「いいの。結果見たくないし」
「失敗するから?」
「ううん、その逆。今の和馬ならきっと上手く行くよ。・・・・・だって」
そう言ってから満面の笑みで
「今の和馬はあたしが大好きないつもの和馬だもん」
「え?・・・それってどういう・・・・」
「それじゃ!」
美保さんはそれだけ言うと教室を後にしました。
「なんだよ・・・・今から告白するんだろ?なのに・・・・なんで・・・なんで・・・美保の顔が頭から離れないんだよ!」
いつも一緒にいた。
一番近くにいたからこそまったくそんな風に思った事などなかったんでしょう。
一番自分のことを思ってくれていて、一番大切な存在を
ドアを開けて人が入ってきました。
顔を確認してそれが清水さんだとわかっても思っていたほどドキドキはしません。
「なんかな?うちに話って?」
「俺、初めて会ったときからずっと清水さんのことが好きでした。俺と・・・・付き合ってください」
練習した言葉もスムーズに言えました。
待ちに待った清水さんの答えは
「いきなりになに?突然すぎるやろ」
「うん、いきなりでごめん」
「・・・・・答えは今すぐがええか?」
「・・・・できれば」
「ごめんなさい」
「・・・・・・」
断られたというのにあまりショックじゃない
泣きたいほど悲しいはずなのに・・・・・
「理由・・・・きいていいかな?」
「簡単や、うちにその気がないだけ」
「そっか・・・・」
「それと・・・あんたの顔がうちに付き合ってくれって顔やないからかな?」
「え?」
「あんたなぁ・・・・告白するときに泣きそうな顔してするアホがどこにおんねん」
「俺、そんな顔を・・・・」
「そしたら話は終わりやな?うちは帰らしてもらうけど・・・・・」
そう言ってドアに近寄ると勢いよくドアを開けた。
そこにいたのは・・・
「美保?」
「・・・・・・」
そこには静かに俯いている幼馴染の姿があった。
「話せなあかんのはこっちやないの?」
それだけ言って清水は教室を出て行った。
教室に残っているのは二人だけ
「「・・・・・・・・・」」
二人とも無言の中、和馬くんは美保さんに二人で練習した言葉を言うのだった。
ただひとつだけ違ったのは相手が清水さんじゃないこと
「俺、初めて会ったときからずっと美保さんのことが好きでした。俺と・・・・付き合ってください」
それに対する答えは
「・・・・・・こちらこそお願いします」
そして二人は互いの想いを確かめるようにそっと抱き合い、唇を重ねるのだった。
お久しぶりです!人知らずです!
この物語は私が練習として書いた話なのですが気に入っていただけるとうれしいです。
それではまた次回作でお会いしましょう!