登場人物は二人
登場人物は二人。高橋凪と佐藤紬のいつもの日常
「で、この業務はこれで終了です。大丈夫そう?」
「はい、ありがとうございます。」
小柄で大人しそうな女性はそう答える。
まだ入社して間もないというのに、彼女はほぼベテランたちと同じ仕事量をこなしていた。
何年も同じ職場で仕事をしていると、人が出たり入ったりを繰り返す。
その中でもやはり物覚えの良いタイプと、そうでないタイプがいることを痛感する。
かくいう自分は物覚えが悪いタイプだったので、彼女のようなタイプは尊敬してしまう。
「佐藤さんは物覚えが良いねえ。各所からも優秀な人材が入ってきたと噂になってますよ。」
「いえ、そんなことないです。私は物覚えが悪いので、この間の業務も覚えるのに時間がかかってしまいました…」
「ははは、謙遜なさって」
恥ずかしながら最近は自分の仕事で精いっぱいだったため、新人の育成にあまり携われていなかったのだが、実はそうだったのか。
たまたま今日は自分が手が空いており、いつも育成している方がお休みだったため代わりに教えている。
話したのは入社時に自己紹介で名前を言ったくらいで、あまり接点はなかったのだが、意外と話しやすくて感じのいい子だな、という印象だ。
下賤な予想だが、これは男が放っておかないな、と思った。
女性の少ない職場だ、もしかしたらすでに他の職員の誰かからアタックでもされているかもしれないな、
などと考えていたら
「高橋さんすみません、ここはどうしたら」
「ああ、ごめんごめん。これか。じゃあ一旦マニュアルをひらいてもらいまして――」
まあ、自分には関係のない話だが。と思いながら続きの業務を教えていった。
しかし、楽しい時間というものはあっという間である。
「あ、もうこんな時間か。今日はここまでにしましょう、お疲れさまでした。」
「はい、ありがとうございました。」
業務の合間に軽い雑談も挟みつつだったので、時間が過ぎるのがいつもよりも早かった。
いつも終業間際は疲れでフラフラなのだが、今日に限っては体が軽い。
それに、少し仲良くなれたような気がして、なんだか嬉しい自分がいた。
こりゃ存在が福利厚生だな、などと非常におじさん臭いことを思ってしまう自分がいる。
年齢的にもうおじさんに片足を突っ込んでいるのでやむなし。
タイムカードを切り、皆足早に職場から退出していく。
必然的にエレベーターは同僚たちと相席となる。
どうやら佐藤さんは乗っていないようだ。
今日も頑張ったな、と心地の良い気分で帰路につく。
三連休か、何をしようか。そういえば上司が最近本を読んでいると言っていた。
久しぶりに本でも読もうかな?などと考えたところで、いつも休日は寝ることしか考えられない自分が
少しだけ活動的になっていることに気づいて、単純だな自分は。と少し笑ってしまった。
名前はランダムメーカーで決めてます。




