私たち、カラオケの魔法にかかっちゃった!?

作者： Tom Eny

最高のカラオケと、ちょっとした異変の始まり

音楽大学で歌を学ぶ仲良しの大学生、ミオとユウキは、最近SNSでバズり中のデュエット曲「運命のハーモニー」に夢中だった。この曲が地元のカラオケチェーン店に導入されたと知るやいなや、「ヤバい、楽しみすぎ！」と、二人は大興奮で店へと向かった。

初の熱唱を終え、心地よい達成感に包まれる二人。しかし、その夜から奇妙な出来事が起こり始める。部屋の電化製品が不調になったり、視界の端に子どもの影がちらついたり、妙な物音が聞こえたり……。それでも二人は、「新しい演出？」「都市伝説っぽくてウケる〜！」と、むしろ面白がった。普段はあまり食べないフライドポテトやピザ、高価なボトルワインを無性に注文してしまうようになったが、それも「歌ったからお腹空いた！」とポジティブに解釈する。「カラオケの神様が私たちに語りかけてるみたい！？」と、この一連の出来事をワクワクしながら受け止めていた。

魔法の「連鎖」と高得点の壁

異変が気になり、SNSで情報を探し始めたミオとユウキは、匿名コミュニティで「運命のハーモニー」を歌った後に起こる「気になる体験」について語られているのを見つけた。そこには、「別の相手と別のデュエットを歌えば落ち着くらしい」という情報も。ユウキは「そんなバカな（笑）！でも面白い！」と、これを楽しい連鎖ゲームだと捉えた。

さらに、コミュニティには「採点で80点以上出す必要がある」「ポイントを貯めれば完全に自由になれる」という情報も載っていた。二人は高得点を目指して何度も歌い込んだが、なぜか79点で足止めを食らってしまう。あと一歩がどうしても届かない。

お得すぎる「魔法のアシスト」降臨

80点の壁にぶつかり、諦めかけたその時、カラオケ画面に突如としてバナーがピカッと現れた。「【初月無料】月額継続会員限定！最新AI歌唱力アシスト機能で高得点を目指せ！」という魅力的な文言。さらに「80点以上でポイント倍増！」「高価なお酒でボーナスポイント！」「ポイントは室料や飲食代に！」と、お得すぎる誘い文句が並んでいる。

「やったあ！AIって神！」「ポイントもらえるなんてマジ最高！」ミオとユウキは大喜びで月額会員登録を済ませた。AIアシスト機能を使ってみると、驚くほど簡単に80点超えを達成する。「レベチ！これってまさに魔法の力だね！」二人は興奮が冷めやらないまま、その“魔法”の力を謳歌した。

ハッピーな「巻き込み」とアプリの導入

自分たちの現象が落ち着くことを信じ、ミオはバイト先の先輩ケンタを、ユウキはサークルの仲間アヤカをカラオケに誘った。「めっちゃ楽しいよ！マジでオススメ！」新規会員の勧誘でボーナスポイントがもらえることもあって、二人はさらにやる気満々だ。この時、画面に薄く表示されていた「新規会員必須」というメッセージには全く気づかなかった。

さらに、特典情報を受け取るため、「超便利！」と疑うことなく公式アプリをダウンロードし、会員情報を連携する。アプリから送られてくる「気になる体験」通知も、「リアルタイムでカラオケの面白さが伝わる！」と、二人はただ楽しむばかりだった。

連鎖の広がりと「伝説」の誕生

ミオとユウキの現象は落ち着いたものの、今度はケンタとアヤカに同様の現象が起こり始めた。彼らもまた、映像に紛れる「歌え」「高得点」「ポイント」といった記号や、高価なボトルワイン、ピザを無意識に注文してしまう奇妙な行動を見せる。ミオとユウキは、彼らも自分たちのように現象を解決してくれると純粋に信じ、ケンタとアヤカも新たなデュエット相手を誘い、アプリを導入していく。

この「楽しい連鎖」の裏で、カラオケチェーンは記録的な売上を伸ばし、「運命のハーモニー」は社会現象と化した。世間では「不思議なデュエット」の噂が「怖いもの見たさ」で広まり始める。

いつまでも続く「カラオケの魔法」

ある日、ミオたちは友だちと一緒にカラオケ画面の映像をスロー再生してみた。すると、一瞬だけおいしそうな食べ物や豪華なワインボトルの画像が差し込まれていることに気づく。「へえ、細かい演出だね！」「なんか食欲わくー！」「プロジェクションマッピングみたいでオシャレ！」と、感心するばかり。フライドポテトやピザ、高価なボトルワインを頼んでしまうのも、奇妙な現象も、すべては楽しいカラオケの演出だと信じて疑わない。高得点やポイント、友達を誘うこと、これらすべてが「お得！」「最高！」と、彼女たちはただひたすらカラオケの楽しさを満喫している。

最終決着の日、ミオたちは「この楽しい連鎖を終わらせる最後のデュエット」を歌った。歌唱中も潜在意識へ働きかける映像が流れるが、彼女たちはそれに惑わされることなく、純粋な歌への情熱で高得点を叩き出し、最高の気分でカラオケを終えた。

その後、あのエンターテイメントチェーンの「不思議なデュエット」に関する奇妙な噂は、匿名でネットに広まり始める。最初は半信半疑だった人々も、次々と提示される証拠映像によって、その「気になる体験」の裏に隠された、とある見えざる何かに対する漠然とした話に耳を傾けるようになる。「まさか、こんなことってある？」と、驚きと好奇心は尽きない。

しかしミオたちは、今日もまた、新曲チェックとポイント稼ぎのために、楽しそうにカラオケ店へと向かう。「だって、『運命のハーモニー』はマジ神曲だし、ポイントでお得に歌えるし、私たち、カラオケの魔法にかかっちゃったんだもん！最高！」彼女たちのハッピーなカラオケライフは、これからもずっと続いていくのだった。