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大逆罪 以外 無罪  作者: 園日暮


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14/14

終 五年後




 シァ・クオンは、市中引き回しの後、五体裂きの刑で処刑されることになった。

 帝都の大通り。犯行に使われた毒草が両側に咲き誇っている。

 大勢の見物客が娯楽・・に興じている。

 毒に囲まれて、クオンは傲然として連行されていた。

 両手足に枷を付けられ、棒でつつかれ進まされる犯罪者。それもまだ若く美しい娘。

 ニヤニヤと楽しむ民衆の間を、その場で一番みじめな囚人は傲然と見下しながら連行されていた。


 龍帥もツォランも見届けには行かなかった。他の被害者の一族。ホウ家の者たちも誰も見物にはいかなかった。一人を除いて。


 その一人。

 ホウ家三女ホウ・リンシャンが、クオンを見つめている。

 お付きであり祖父であるユエチーが傍にいる。


 クオンがそちらを向いた。

 リンシャンの声にならぬ声を聴いたのだ。


 リンシャンは何か言おうとして、声にならず口を閉じていた。

 クオンとリンシャンの視線が絡む。

 結局リンシャンは何も言わなかった。


 引き回しの間、死も恐れていないクオンの傲然さが崩れたのは、その時だけだった。




 処刑が終わり、イーユーは墓参りに来ていた。

 シーファの墓にも詣でるが、それ以外の元同僚たちにもだ。

 使い潰された者。殉職した者。仕事に関係なく病死・事故死した者。

 数々の顔がイーユーの脳裏に浮かぶ。彼らの事を思い出す。彼らの理想も。


 そんなものは本当にあっただろうか。


 この国を法の下に差別のない国にする。

 熱くなっている間は、まるでシーファがそんな理想を抱いて頓死したかのように思えていたが、事件も終わり、冷静になってみると疑問符が付く。

 シーファは本当にそんな理想を抱いていたのか。

 頭が沸騰していた時期はそんな理想を叶えられる人材だったかもしれない、などと考えていたが、過大評価な気がしてくる。

 そもそもそんな理想など抱いていたのか。それすら怪しい。


 誰か同僚が死ぬ度に、イーユーはそんな考えを繰り返してきた。

 故人の理想ではなく、自分が許せないことを故人を通して投影しているだけではないのか。

 俺も成長のない男だ。

 自嘲するイーユー。

 彼はもう一度、故人たちの顔を思い浮かべ、それを振り切って墓地から出る。


 イーユーは一人、仕事に戻る。

 誰の理想なのか定かではない理想は、現実のものになるか、それも定かではない。




 

 龍帥府で最も高い建物は本部である。城と見まがうほどの建築は、帝都において帝城に次ぐ規模を誇る。

 帝城、城壁の見張り塔、国教寺院の大鐘楼。それらに次ぐ高さを誇る龍帥府本部の最上部は龍帥の住居となっている。

 その欄干に腕を掛け、龍帥ロン・ホウ・ティーエンは燦然と揺らめく灯火を見下ろしている。


 帝都中を見渡せるそこから見る夜景は、夜になっても街の灯りが消えることなく、帝都中に煌めいている。

 あの光の下では今日も人々が懸命に日々を暮らしているのだろう。


 だが、ティーエンの目にはその灯りが別なものに見えていた。

 華やかに、激しく、絶え間なく、燃え続けて。やがては燃え尽きる。

 まるで寿命を燃やして燃え続けるロウソクのように。

 何の寿命か。それは――


 「兄さま」

 消え入りそうな声が聞こえた。

 ツォランであった。他の人間がいるところでは聞いたことのないような細い声色で兄に呼び掛けている。

 「どうかなさいましたか」

 「いや、なんでもない」

 ティーエンはツォランの薄い夜着の肩を抱く。

 「今夜も冷えてきている。もう、休みなさい」

 「はい」

 兄妹はそろって室内に入る。


 閉まる扉の音だけが風音に交じって響き渡っていた。






 その後、龍帥は一度も戦場に立つことなく、


 五年後、揮国は滅亡した。





            大逆罪 以外 無罪  終



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