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【10】「あの夜の事」


それから俺は、定期的に仕掛けてくる

色ボケ賢者のセクハラを交わしながら、

事情を丸ごと話して伝えた。


すると、流石に真面目に話を聞く様になったのか、

マルケリオンは、インクの乾いていない手記を手に取った。


「ウドド運行列車の一件には、いくつか疑問がある。

 『悪意結界の弱体化』を狙ってトマリンの供給を止めた…

 と、考えれば辻褄は合うのだが。

 それならトマリンごと破壊するはずなんだ…そっちの方が確実だからね」


「確かにな…アイツらは裏ギルドに、

 列車の破壊じゃなくて足止めを依頼した。

 ……そもそも、なんで裏ギルドに依頼なんかしたんだ?」


「さて……思いつくのは…噂を広める為かな?」


噂を広げる……ああ。なるほど。

あんなうまい仕事、自慢しない方がおかしい。

その噂話を広める事で得する奴が居るわけだ。


要するに「魔法源泉を狙ってるぞ」ていう

回りくどい宣伝がしたかったのか。


「話を戻すよ?

 トマリンを破壊しなかったという事に着目すれば、

 『悪意結界の弱体化』以外の目的があると仮定できる。

 想像の視野が広がるね……君はどう思う?」


「知るかよ。俺に聞いて解ると思うか?」


「ああ。思うね。

 君は、あの場に居た誰よりも先に、

 トマリンの存在から、魔法源泉の危機を導いた。

 とても優秀な発想力を持っているよ」


「……偶然だと思うが……そうだな……」


こうもはっきり褒められると、悪い気はしない。

どれ、ひとつ乗せられてやるか。


トマリンを壊さない意味……

魔法源泉の燃料……

虚神教……


……トマリンに何か他の使い道があるのか?

それに使う為に……いや、それなら盗む段取りをするだろうし…

ん〜……わからん。


お手上げのジェスチャーで、マルケリオンに訴える。


「まぁ……すぐに答えを出せとは言わないさ。

 私も、もう少し考えてみる。幸い、まだ時間はある。

 じっくり考えてみてくれ」


「…ああ。わかったよ」


一旦、この話は置いておく。


それよりも俺には知りたい事がある。


「マルケリオン。

 俺が助けたガキ……貴族の一家は?

 乗客はどうなったんだ?」


「君が身を呈して守った乗客は皆無事だよ。

 それだけじゃない。あのネダチの猛攻を去なし、

 攻めに転じられたのは、君のお陰だ。

 君の勇気が場の流れを変えたんだ。確実にね。

 結果、君は皆の命を救った訳だ」


それは、惨めに求めた的確な感謝だった。


腹の真ん中から、背中に向けて、

すっと爽やかな風が吹いたような感慨。


のしかかっていた重量のある劣等感が、幾らか軽くなる。


「そりゃ…無駄死にじゃなくてよかったよ」


結果的に、死んでしまったというのに、

気分が良いとは、おかしな話もあるものだ。


でも、胸を詰まらせる後悔は、まだ残っている。


なんて事だ。


この心は、くたばっても、俺を許しちゃくれないのか。


ああ…まずい。


気を抜くと泣いてしまいそうだ。



「それにしても、君の相棒は凄まじいな

 あの大男は何者なんだい?」


「…大男…あぁ、ネモの事か?

 あいつがどうした?

 もしかして、共闘してくれたのか!?」


あの野郎……やる気のねぇ素振りだったのに、

最後は俺の死で決起したってか?


なんだよ、熱い野郎じゃないか。


「助けるも何も。

 鋼鉄の賢者ネダチを殺したのは彼だよ?」


「……は?」


「その様子だと、君も彼の正体は知らない様だね。

 あんな異質な人間は見た事がない。

 ある意味では、彼の存在が一番謎だよ」


「ネモの…正体」


あの木偶の坊…あいつの腹の中には何があるんだろうな…

話、聞いてやりたかったな。


「それに、少々言いづらいが

 君の命を奪ったのは、彼だよ」


「は?ネモが?

 それは無いぞ!?

 だって、オレはあの時……」



『決して、絶対に私に触れないで下さい』



あ……まさか、あいつが、あんなことを言ったのは、

触れた相手を殺してしまうからか!?


「いや…あんたの言う通り……

 あいつがオレを殺したのは事実みたいだ

 悪気はないとはいえ……殺された側としては、何といえば良いか」


「まぁ、考えても仕方がない。

 あぁ、そうだ…ナオ君。

 君は暫く女性のフリをしたまえよ?」


「は?なんで?」


「その方が都合が良いからだよ。

 見た目でカモフラージュできる利点は多い。

 そうだね……私にお熱な夢見る少女…それでいこうか」


「勘弁してくれ。

 俺は38歳のおっさんだぞ?

 若い女の真似事なんかできるかよ」


「できるさ」


「なんで?」


「鏡を見てみなさい

 そこに写る少女に相応しい仕草を取れば良い」


「…鏡?…」


部屋の中の姿見を覗いてみる。


マジマジと見れば、本当に可愛い少女だ。


これが俺なのか?

なんか……変な気になってくるな。


「君も男ならわかるはずだ。

 いや…男だからこそ、より女らしさがわかるはずだよ。

 自己中心的な女らしさを妄想して押し付ける。

 男とはそういう愚かなものさ。

 さぁ…やってみたまえ」


なんだこいつ。

めちゃくちゃ面白がってるじゃねぇか。


「……わ…わたし……女だわよ…」


「違う。

 マルケリオン様ぁ♡素敵ですぅ〜♡

 ほら、言ってみなさい」


「マルケリオンさま素敵です」


「違う。

 ハートを入れなさい。

 甘えた様な…それでいて、どこか挑発的な…

 そういう仕草も付け加えて」


「ハートってなんだよ!!

 それに注文が多いぞ!

 いきなりできる事かよ!」


「できる、できない。じゃない。

 やるんだ。良いね?」


「あ…ああ…わかったよ…

 やるよ……だから、あんま近づくなよ」


「良い子だ」


いや……俺の方が年上だぞ?

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