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【7】「成長値」

—————————————————————————————————————


【視野10】「ヨヨア」


—————————————————————————————————————


右……上段、2撃。


左…いや、真上……加えて左下から蹴り上げ。


…背後……牽制……


突き上げ…関節狙い……左……跳ね返り……


…足場不良……後退。


ヨールーの攻撃は、素早くて重い。


きっと一撃でも当たってしまえば、

あたしは、きっと自力で立つ事すらできない。


以前のあたしでは、攻撃の軌道すら見えなかったと思う。


でも今は違う。


相手の動きを初動から見て、すべて打ち弾ける。


マコト様から受け取ったバトンのおかげで、

今、ここで剣を握っていられる。



『才能を伸ばして』



私は、マコト様から頂いた、その言葉にすがった。


マコト様から継承した【英雄の因子】と、

未使用のまま渡してくれた【成長値】が、あたしを強くしたんだ。



───【成長値】



人は誰しも、生まれながらにして成長の限界がある。


それは残酷で、合理的な現実。


ただ唯一の希望は、その【成長値】を、

何に割り振るかは、当人の意思で決めることができる。


ステータス、スキル、魔法、なんでも自由だ。


あたしに、本来与えられた【成長値】は、

常人が【250】程度なのに対して、たったの【2】だった。



愚鈍な私に、ぴったりな数値だ。



そのたった【2】しか無い【成長値】を、

あたしは大事に抱えたまま生きてきた。


他の人から見れば、軽い気持ちで扱える値でも、

あたしには、たった二つしかない貴重なものだったから。


たかだか、その程度、あってもなくても変わらないと知っていたけど

それでも、私は何に使うか、ずっと考えていた。


これを手放してしまうと、

自分の可能性がなくなってしまうような気がして。



マコト様に、稽古をつけて頂いた時、

あたしは産まれて初めて他人から褒められた気持ちになった。



『パリィング』と『洞察』



あたしは決めた。


もし、可能性を手放す勇気が湧いた時は、

この二つに【成長値】を割り振ろうと。



【因子】は、継承の時に【1000】の【成長値】を与えてくれる。

マコト様は、さらにそこへ未使用の【成長値】を【1000】残してくれた。


なぜマコト様が【成長値】を使わなかったのかはわからない。

きっと、どこかで説明されていたはずなのに。


もしかすると、あたしと同じ気持ちだったのかも、

そうだったら……えへへ。嬉しいなぁ。



『才能を伸ばして』



あたしは、その【成長値】を全部、

マコト様が褒めてくれたスキルに使った。


『洞察』に【1000】

『パリィング』に【1000】


あたしの魔位測量を行った測量士様は、

それを愚行だと、強く、酷い言葉で私を(ののし)った。



「可能性を棒に振った、世紀の愚鈍」だと、そう言われた。



あたしは違うと思う。


確かに、あたしは愚鈍だ。


でも、あの判断は、間違いじゃないと確信している。



だって、ほら。

あたしは、こうやって戦えている。


生きて、ヨールーと戦えている。



「……ふざけているのか?」


ヨールーは、攻撃の手を止めて、

呆れた声でそう言った。


「ふざけている様に見えるの?

 神様っていうのは、存外、ものが分からないんだね」


「お前のそれは【英雄の因子】を持つ者の戦い方じゃない。

 ただ、そうやって、やり過ごせるだけで

 一体、何になるんだ?」


「……………………」



その通りだと思う。



どれだけ相手の動きを追って

攻撃に対応できたとしても、

所詮は「しのぎの技」

これだけじゃヨールーを倒す事はできない。


でも、それでも良いんだ。


ヨールーは、マコト様の【英雄の因子】と、

この聖剣パンツォールを欲しがっていた。


それなら、あたしを無視することができない。


あいつをここに足止めできるのだから。


でも、タイムリミットはある。


ウドド運行列車が、ここへ来る前に、

何か、打倒案を思いつかないと……



ああ、マコト様。

あたしに力を……




「愚鈍な娘だ……

 学習能力がないのか?」


「!!」


ヨールーは、素早い刺突を繰り出す。


十分に見切れる。弾ける。


その時、攻撃を繰り出した手と、

反対の手が不自然に開いているのに気付いた。



しまった。



そう思った時には、もう、遅かった。


「奪え…『アークス・アークス(アイテム強奪)』」


—————————————————————————————————————


【視野11】「清水 明宏(2)」


—————————————————————————————————————



「奪えッ!!アークス・アークス(アイテム寄せ)ッ!!」



完全にタイミングを見計らって登場してやったぜ!!!


俺はヨールーの野郎が、それを使うのを待ってたんだ!!!


あ〜。我なが完璧なタイミングだわ〜

この娘に惚れられたらどうしようか!?


くぅ〜!!


でもごめんな、お嬢さん、

既に俺には可愛いハニーが居るのさ。


「なッ!?なんだお前は!!

 なぜ勇者オレスキル(アークスアークス)を使える!?」


「ようやく会えたなぁ!!文字通り、夢にまで見たぞ!!ヨォールーッ!!」



アークス・アークス VS アークス・アークス。



本来はありえないパラドクスの輪。

固有スキルどうしのぶつけ合い。


俺は、俺の中の【勇者の小因子】と、【ヒーリアの呪い】が引っ張られるのを感じ、

ヨールーの中の【勇者の中因子】と、【神の魂】を引っ張るのを感じた。



ドキドキ!!異世界初!綱引き大会の勃発だぁ!!



この作戦は、一か八かでヒーリアが考え出した苦肉の策だ。


アークス・アークスで、奴の体と、神の魂を分離できれば、

もしかすると相手を無力化できるかもしれない。


「俺はなぁ!怒ってんだぞ!!ヨールー!!」


「…固有スキル……競り合うか…

 黙れ。貴様の様なブ男は知らんぞ」


「うるせーっ!!よくもヒーリアを騙したな!!

 よくも呪いをかけたなー!!許さねぇ〜!!

 ハニーの分までテメェーをぶっ飛ばす!!」


「デタラメな奴め……そうか。

 お前は人族アロアント側で召喚された勇者なのだな…

 ヒーリアめ……このオレを裏切るとは…」


『アークスアークス』は固有スキルだ。

その性能は、ステータスも魔力も関係ない。

だから神の転生者が相手でも一方的にならない‥‥でも、


有利なのはこっちなんだよ!!


「なぁ!お嬢さん!!!」


「‥は‥はい!!」


「マコトの仇‥‥一緒にとろうぜ!!」


「あっ‥‥はいッ!!」


「これを使って奴をバラバラにしてやれ!!」


俺は勇者の短剣を投げて渡す。


これは、第二の案だ。


もしも、アークス・アークスでヨールーを倒せない場合、

勇者の短剣の異能で、ミジンコの糞レベルまでバラバラにする!!


流石の神様でも、粉末状態からでは復活できないだろうよ!


短剣を見たヨールーは、目の色が変わる。


「クソがっ!!ふざけた真似をッ!!!」


ヨールーが焦るのを見て確信する、

どうやら、これは有効な手みたいだ。


逃げられるもんなら逃げてみやがれ、

少しでもアークス・アークスの軌道をズラせば、

因子を奪われるのはヨールーの方だ!!


「やれぇえ!!お嬢さんッ!!!」


女剣士は、相当な腕前なのだろう。


片手を使えず、身動きも取れないとはいえ、

神が転生したヨールーの攻撃を全部弾いて

一瞬で、勇者の短剣を、奴の胸に突き刺した。


「ぐぁッ!!」


汗を垂らしながら、苦痛に食いしばるヨールー。

その瞬間、奴の腕がアークス・アークスの軌道から外れる。


俺は、奴の体から黒と黄色が混ざり合った塊を取り出す。


その塊が、勇者の剣により二つに砕ける。


「!?」


俺は見た。


その一瞬の間、ヨールーの口角が上を向き

ほくそ笑んでいた所を。



不穏な予感が、頭の中で反響している。


ふと、記憶を押し込めている引き出しが開く。


-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-



それは‥いつかした、ミミナミとの会話。



『なぁアキヒロ。

 どうしてヒーリア様が、

 勇者の剣を欲しがったのか、わかるか?』


『そりゃ…ヨールーに渡す為だろ?』


『確かに【ヨールーもその剣を強く求めていた】

 しかし、目的はそれじゃない。

 その剣は、ヒーリア様のお兄様が残した唯一の遺品だからだ』




-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-



───ヨールーもその剣を強く求めていた。



ヨールーは、勇者アヌロヌメの剣が持つ異能を知っていたのか?

その上で、勇者の剣を求めた……


という事は……ヨールーは…

元から体と魂を分離する予定だったのか!?



勇者の短剣で、切られたヨールーの様子がおかしい。


本当なら、縦半分に真っ二つになるはずなのに、

体を震わせながら、苦しんでいる。



「あ……これ、ダメなやつかもしんねー」


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