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【2】「魔位測定」

僕達は、マルケリオンに連れられて、

言われるがまま、その後に続き城内を練り歩いた。


「こちらの都合に巻き込んですまないね」


法力の大賢者という凄い肩書きのある人の深い謝罪。


僕とアキヒロは、

お互いに「どうしたものか」と、

顔を引きつらせている。


「異世界の人に、こちらの普通は通用しない。

 そう思って接する努力をしているのさ」


こちらの困惑がわかったのか、

マルケリオンは、口元を緩ませそう言った。


「自己紹介が遅れたね。

 私はマルケリオン・サラドバレド。

 この国で1番強い魔法使いだ」


「1番強い?」


「そうだよ。

 この国には特筆べき魔法使いを大賢者と呼ぶが、

 私はその中で、自惚うぬぼれでは無く、事実1番強い」


僕は、その言動に思春期じみた反発がしたくなる。


もしくは、賢者という肩書きに、

期待したのかもしれない。


「マルケリオンさん

 最強ってなんですか?

 なにをもってそう言えるんですか?」


「魔法使いとしての『強い』は、単純明快さ。

 どれだけ少ない時間で、

 どれだけ多くの生物を殺せるか。だね」


帰ってきた答えは、想像よりも野蛮だった。

だからこそ、シンプルで説得力がある。


「あとは、今から測量する魔位の数値かな」


そう言ってマルケリオンは、とある部屋の前で止まった。

扉を開くと、初老の男性が整頓された机に座っているのが見える。


「魔位?」


「きっと使える魔法のレベルみたいなもんだよ。

 俺達のステータスを、調べるつもりなのさ」


と、アキヒロが耳打ちしてくる。


「魔位は、1〜25の位で示す、魔法階位の略称だよ。

 今回の測定では、適応属性とスキルの照会も兼ねている」


なるほど…だいたいアキヒロの言う通り。

伊達に異世界の予習をしている訳じゃない様だ。


「ちなみに、マルケリオンさんの魔位は、

 どのくらいなんですか?」


僕の何気ない質問に、ガタッと音と立てて

測量師の男性が立ち上がった。

少しの怒りと軽蔑が見て取れる。


すると、すかさず、マルケリオンが手でそれを制す。


どうやら、僕は不躾ぶしつけな質問をしてしまったようだ。


「気にしなくて良い。

 魔位というのは、魔法使いの力量そのもので

 それは弱点になりえる。

 通常、それを他人に明かす事はないんだ」


「ごめんなさい」


「いや、いいんだ。

 君たちに普通を求める方が傲慢なんだからね」


マルケリオンは、気さくな態度でそう言うと、

長めの青い布を使って、測量師の目と耳を塞いだ。


「それに、君達には僕の魔位を公開しようと思っていたんだ。

 そうじゃないとフェアじゃない」


机の上に置いてある、タブレットのような黒い鉱物の板。


そこにマルケリオンが手をかざすと、

板の表面に文字が浮き出てくる。


-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-


【法力の大賢者マルケリオン】

【魔位】16示 【属性】聖【固有スキル】なし【成長値】150/500


-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-


僕は、まじまじとそれを見つめ、

理解できそうな内容を探した。


これが全ての基準になるからだ。


それをジッと見つめたアキヒロは、

有識者の様な顔で「ふむふむ」と、呟く。


「これが最強のステータスかぁ……

 ん?でも魔位【16示】…最高位が【25示】だとすると……」


アキヒロは、そう言った後「はっ!」と気づき、

マルケリオンを見て気まずそうに笑う。


それに対してマルケリオンは、爽やかに笑った。


「当然の感想さ。

 アキヒロの言う通り、魔位の上限が【25示】だとすると、

 私の魔位は、あまりパッとないものに見えるだろうね」


「確かに…僕も数字だけでは良くわかりません

 これは強さの指標みたいなものですよね?」


「指標と言うよりも、『才能』と言うべきかな」


「才能…」


その言葉に、僕の表情筋は、少し硬くなった。


「この魔位と言うのは、使える魔法の階位だと言ったけど、

 魔位は観測された全ての魔法を階層で分けているから、

 そこには神格魔法も含まれているんだよ。

 人族、魔族、共に観測最大値の魔位は【18示】が最上位、

 それ以上は、伝説や神の領域さ」


人間と神様をごちゃ混ぜにして考えるのか……

クラス分けせずにランキングにして意味があるのだろうか?


それは、中学生の50m走に、

オリンピック選手の記録を

入れ込んでいるようなものじゃないのか?


「さぁマコト。

 私と同じ様にしてみたまえ」


才能という言葉で、機嫌を損ねてしまった

僕の心は、否定的な事をネチネチと考えたが、

こう言うのは純粋に面白い。


僕は、マルケリオンの真似をして、板に手をかざす。



-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-


【英雄マコト】

【魔位】20示 【属性】風【固有スキル】魔力相転移 【成長値】1000/1000


-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-


「これは…凄まじいな

 【因子】は能力も継承させるのか…」


マルケリオンは、眼鏡を正しながら食いつき、

その他に、表示されているあらゆる数値を見て分析している。


元来、数字は苦手な達なので、

あまり数字の羅列られつに関心は持てない。


しかし固有スキル【魔力相転移】…これはなんだろうか?


「きたきたぁ〜!固有スキル!!!」


「アキヒロは、何かわかるの?」


「もちろん!!固有スキルはな!

 そりゃ持ってるだけで無双できるんだぞ!!」


無双……。


確か麻雀の凄い技みたいなのに

そんなのがあった気がする。


「それで『まりょくそうてんい』ってなに?」


「……さぁて…それは…マルケリオン先生に聞いてみようぜ!」


物知りなのか、

そうじゃないのか

わからない奴だなこいつは。


「マルケリオン先生?どうなんです?」


「うーん。固有スキルに関しては、

 マルケリオン先生も、あまり知識がないんだ」


「それじゃ、使い方もよく分からないって事ですか?」


「そうだね。

 ただ、君は『英雄の因子』を持っているみたいだから

 ある程度は予想がつく」


「英雄の因子?」


「そう【伝説の3人】が持っていた能力を複製コピーして。

 彼らの力をギュッと集めたものが『因子』だ。

 君達には、【英雄】【勇者】【聖女】の因子が、

 召喚された時に付与されている」


「なるほど!!俺たちには

 伝説級の能力が引き継がれているんですね!!」


「その通りだよアキヒロ。

 君は飲み込みが早いね」


「予習は完璧ですからね!!」


意気揚々としたアキヒロを置いておいて、

僕はマルケリオンを見て、話の続きを催促した。


「英雄ヘシオムは、必殺の剣技が使えた。

 魔力を物理攻撃に変えて放つ

 『テュプロアブニス』と言う技だ。

 きっとそれに関するスキルだと思うよ」


技名だ。


これは僕でも知っている。


僕が小さい頃見ていた特撮ヒーローも、

技名を叫んでから必殺のキックで怪人を蹴り殺していた。


ちらりと、アキヒロを見る。


ニコニコとしながら「そういう事だよ」と、

表情で語っている。


なんか腹立つなこいつ。


「では、アキヒロ。

 次は君がやってみたまえ」


「よっしゃ!!

 さて!俺の眠れる獅子が目を覚ますぞ!!」


-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-


【勇者アキヒロ】

【魔位】0示【属性】なし【固有スキル】アイテム寄せ 【成長値】0/0


-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-


………は?

オールゼロ?そんな事あるのか?


「えっ…えっ…えっ……」


アキヒロは、わかりやすく困惑している。

なんだかいたたまれない。


「壊れたのかもしれせんね?

 ねぇ、マルケリオンさん?」


思わず、そうフォローを入れたが

まず、そんな事はない。


なぜならはっきりとアキヒロの名前が書いてあるからだ。


「う〜ん。身体能力は……年相応の数値だから

 故障じゃないと思うんだ。

 特別な意味がある…と考えるしかないね」


「ゆ…勇者に必殺技はないんですか!?」


口早に必死なアキヒロに、

マルケリオンは困った顔で言う。


「固有スキル【アイテム寄せ】は、

 近くの戦利品を吸い寄せる…そういうスキルだね。

 重たい物を動かせる能力はないから…あまり、戦闘には向かないね」


「…あっ……そうですか……」


わかりやすく落胆するアキヒロを尻目に、

続いてナオが恐る恐る測量を始めた。


-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-


【聖女ナオ】

【魔位】23示【属性】聖【固有スキル】魔法限定解除 【成長値】1000/1000


-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-


「こっ!これは!!!」


マルケリオンは、今までにない引力で

測量値に引き寄せられ、その内容をまじまじと見つめた。


「なるほど…聖女ドドゴミンは死ぬまで研鑽けんさんを続けたと聞く…

 それが魔位に反映されているのか……まさに神に迫る能力だ

 加えてこのスキル!!これは全魔法を…etc」


マルケリオンは、彼女の手を握り熱弁をし始めたが、

ナオは照れているのか目を反らして後退あとずさりした。


チラチラと視線を逸らして、慌てているのが可愛らしい。


その時、端の方で気まずそうに

作り笑いでたたずんでいるアキヒロを見て、

僕は思わず肩に手を乗せて。


「まぁ…頑張ろうぜ」と励ました。

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