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098 王都冒険者ギルド

「旦那様。お命じになられていた人材の確保ですが、六割ほど完了いたしました。しかし、やはり現役の職人の引き抜き状況は芳しくありません。見習い、もしくは現役を引退した者がほとんどです」

「ふむ……」


 クラウスが面目なさそうにオレに報告を上げる。


 バウムガルテン領には足りないものがたくさんある。例えば、店だ。現在のバウムガルテン領には、店が一つもない。そもそも売り物になるようなものが無いのだ。皆が自給自足、物々交換で生活している。


 だが、領の発展には人手が必要だ。人を呼び込むためにも生活基盤を整えられるようにさまざまな店が必要だ。


 それを補うために人材の確保をクラウスに命じていたのだが……。


 やはり現役の職人は厳しいか……。


「いや、よくやってくれたクラウス。この調子で人を集めてくれ」

「かしこまりました」


 まぁ、王都の人間の中に未開の地であるバウムガルテン領に行ってもいいという酔狂な奴が目標の六割も居たことに感謝しよう。


 他にも商人にはベンノの方から声をかけてもらっている。商人はもう予定以上の集まりになっていた。


 ベンノが言うには、商人たちはオレと繋がりを持ちたいようだ。ここ何年も無かった陞爵しょうしゃくした唯一の貴族。しかも男爵から二回も陞爵しょうしゃくし、今は伯爵だ。伯爵としての体裁を整えるためになにかと入り用だろう。そこに商人たちは商機を見出しているのだ。もし気に入られて御用商人となれれば、そんなところだろう。伯爵の御用商人というのは、かなり商人の世界では羨望の目で見られるらしい。ベンノが嬉しがっていた。


「あとは冒険者ギルドか……」


 オレは王様からバウムガルテン領以東の領土について切り取り次第の許可を得ている。領地を拡大するまたとないチャンスだ。東に広がる森や山を切り開くためにも冒険者の力が要る。


「最低でも冒険者ギルドの支店が欲しいところだが……。いや、箱だけ作っても中身が無ければどうしようもない。やはり冒険者の支持が必要だ」

「どうなさいますか? 冒険者はパーティと呼ばれる集団を作って活動しているようです。一つ一つのパーティに勧誘でもかけますか?」

「ふむ……」


 なにかいい手はないか……。


 あぁ、アレが使えるかもしれないな。


「クラウス、冒険者ギルドに行くぞ」

「旦那様、御自ら勧誘なさるおつもりですか!?」

「冒険者たちは個人の強さを信奉しているからな。ドラゴンスレイヤーのオレが行くのが一番手っ取り早い」


 ドラゴンの討伐に貢献したオレは、ドラゴンスレイヤーなんて小恥ずかしい称号で呼ばれているらしい。全身が痒くなりそうだが、ここがその恥ずかしい称号の使いどころだろう。


「それから地下のアレも用意してくれ」


 いざ冒険者ギルドへ!



 ◇



「ここが王都の冒険者ギルドか」


 大きく立派な石造りの建物だ。余計な装飾はなく、質実剛健な印象を受けるな。冒険者ギルドはこうじゃなければ。


「行くぞ、クラウス」

「はい」


 クラウスが開けた大きな扉をくぐると、途端に雑多な声が聞こえてきた。どうやらこの冒険者ギルドには食堂が併設されているらしく、多くの冒険者が食事をしたり酒を飲んでいた。


 好都合だな。


 一歩踏み出すと、冒険者たちの値踏みするような視線が突き刺さる。だが、奇異の視線はすぐに驚愕へと変わる。


「なんだ、あの肌の色は? 異国の者か?」

「あれは……!」

「まさか、バウムガルテンの……?」

「ドラゴンスレイヤー様の登場かよ」

「いったい何の用だ?」

「あれ、俺の友だちなんだよ」

「子爵様だったか?」

「バカ! 今は伯爵様だよ!」

「ギフトも進化させた偉人だ。間違いなく歴史上の人物になる……」

「お姫様との婚約が予定されてるんだろ?」

「倒したドラゴンの大きさを見たかよ? この冒険者ギルドよりも大きかったぜ」

「そんなのどうやって倒したんだよ……」


 ドラゴンの血を浴びたこの身には、冒険者たちの囁きもはっきりと正確に聞き取れた。めっちゃ耳がよくなってるな。


「まずは冒険者たちにデモンストレーションといこう。クラウス、準備はできているか?」

「はい、旦那様」

「うむ」


 オレは一歩前に出ると、食堂に居る冒険者たちを見渡した。


 こんなに大勢の人間相手に演説するのは少し緊張するな。


「我が名はディートフリート・バウムガルテン。冒険者諸君、今日は君たちに話があって来た。我が領に来ないか?」

「バウムガルテン領? お前知ってるか?」

「いや……。知らないな……」

「新しく領地を貰ったんじゃないか?」

「いやいや、戦争で勝ったわけでもないのに、貰える領地なんてあるかよ」


 どうやら冒険者たちはバウムガルテン領の存在すら知らないみたいだ。未開の田舎だもんなぁ。知らなくて当然だ。


「我が領地は王国の東の果てにある。モンスターとの戦闘の最前線だな。オレは領地を守るのはもちろん、拡大していきたい。モンスターと戦い人間の領土を増やすため、冒険者を欲している! 我が領の東に広がるのは、人類未踏破の森や山だ。挑戦する気概を持つ者は居るか?」

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