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091 対ドラゴン戦②

「アン・リミテッド!」


 漆黒の巨大ドラゴンの真下にたどり着いたオレは、両足でハイジャンプする。


「だらぁああああああああああああああああああッ!」


 オレが右腕を大きく振りかぶって、右の拳でドラゴンの顎を打ち抜いた。


 メキメキッとドラゴンの顎の骨が砕ける音と共に、ドラゴンの首が上を向いた。


「GAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!?」


 ドラゴンブレスが上空へと向かってものすごい勢いで発射された。


 間一髪のところで助かったな。もしドラゴンブレスが地上に発射されていたら、オレたちは元より、地下に逃げた学園の生徒たちも消し飛んでいたところだっただろう。本当に危なかった。


「アン・テイカァアあああああああああああああああああああああああああああ!」


 オレが殴ったおかげで首が真上にピンと伸びたドラゴン。その隙を見逃すコルネリアではない。


 コルネリアの【アン・テイカー】。その極太のレーザーのような一撃が、ドラゴンの首を根元から断ち斬るのが見えた。


「え?」


 ドラゴンの首の根元からドバっと噴水のように噴き出す真っ黒な龍の血。オレの体は、その中央へと落ちていった。


「あっちゅあっちゅ! やっべ!」


 全身に浴びるドラゴンの血は、まるで煮えたぎるマグマのように熱かった。触れた瞬間に体がボロリと溶けていくのを感じる。


「ヒールヒールヒールヒールヒールヒールヒールヒールヒールヒールヒールヒールヒールヒールヒールヒールヒールヒールヒールヒールヒールヒールヒールヒールヒールヒールヒールヒールヒールヒールヒールヒールヒールヒールヒールヒールヒールヒールヒールヒールヒールヒールヒールヒールヒールヒールヒールヒールヒールヒールヒールヒールヒールヒールヒールヒールヒールヒールヒールヒールヒールヒールヒールヒールヒールヒールヒールヒールヒールヒールヒールヒールヒールヒールヒールヒールヒールヒールヒールヒールヒールヒールヒールヒールヒールヒールヒールヒールヒールヒールヒールヒールビールヒールヒールヒールヒールヒールヒールヒールヒールヒールヒールヒールヒールヒールヒールヒールヒールヒールヒールヒールヒールヒールヒールヒールヒールヒールヒールヒールヒールヒールヒールヒールヒールヒール」


 オレは【ヒール】を連打して抗う。


 このまま溶かされてたまるか! せっかくドラゴンに勝ったんだぞ! こんなのあんまりだ!?


 オレは気力と聖力の続く限り【ヒール】を唱えたのだった。



 ◇



「あー……。死ぬかと思った……」


 ようやくドラゴンの血の海から抜け出すと、コルネリアやリリー、バッハと、学園長を始めとした教師たちが驚愕したような顔でオレを見ていた。


 まぁ、ドラゴンの血を浴びてベトベトだからな。気色悪いに違いない。


「学園長、自宅で風呂に入りたいんだが、許可をくれませんか?」

「そ、それはかまわんが……」

「バッハ、お前もよく働いたな。すまんがオレは風呂に入りたい。用意してくれ」

「は、はい……」

「リア、よくやったな。ドラゴンを倒すなんてすごいぞ! リリーもよくやった! リリーが魔法でドラゴンを拘束しなかったら、被害が増えていただろう」

「はい……」

「ん……」

「その、あなたはお兄さまなのですか……?」

「え?」


 オレはコルネリアのお兄さまだが? え? なに? どういうこと?


「オレはオレだが……?」

「すみませんお兄さま。その……肌の色が……」

「肌の色?」


 オレは自分の手を見ると、そこには透き通るような真っ白な手ではなく、日焼けとは一線を画す浅黒い手があった。擦ってみるが色は落ちない。ドラゴンの血で汚れているわけではないらしい。どうなってるの?


「オレにもよくわからんが……。肌の色が変わってしまったらしい。ドラゴンの血を浴びたせいかな?」

「お兄さま……!」

「お兄!」

「おっと」


 コルネリアとリリーが抱き付いてきた。


「二人とも離れて。血で汚れてしまう」

「バカ! いつも無茶なことをして! お兄さまのバカ……」

「ん。お兄はバカ……」

「え!?」


 こ、こここコルネリアに、リリーにバカって罵られた!? こんなことは初めてだ。オレは二人が自慢できるカッコいいお兄さまでいたいのに!


 どどどどどうすれば挽回できる!?


「ぅ……、うぅ……」

「ぐす……」


 激しく動揺していると、コルネリアとリリーが静かに泣いていることに気が付いた。


 オレは二人を抱きしめて耳元でささやく。


「ごめんな。ただいま、二人とも」

「もう、お兄さまは……」

「許すのは今回だけ」


 なんとか許してくれたらしい。ホッと一安心だ。コルネリアとリリーに嫌われたら、オレは生きていけない。


「それでお兄さま、お体は大丈夫なのですか?」

「ん。きっと病気」

「あー……」


 ざっと自分の体を確かめてみるが、病気も怪我もしていないことがわかった。肌の色が変わっただけなのか?


 いや、むしろこれは……!


「大丈夫みたいだ。病気も怪我もしてないよ」

「そんなバカな! 猛毒と言われるドラゴンの血を浴びているのじゃぞ!? 今すぐ宮廷魔法師や薬師に診てもらわねば! ここで待っていなさい。すぐに人を呼ぶ!」


 学園長が宮廷魔法使いやら薬師やらを呼んでくれるようだ。


「ドラゴンを倒した英雄を死なせるわけにはいかん! ほれ! はよう宮廷に使いを出さんか!」

「はっ!」

「マジか、ドラゴンが倒れてる!?」

「誰が倒したんだ!?」

「あそこにいる生徒たちよ」

「嘘だろ!?」

「生徒たちよ! ドラゴンに近づいてはいかん! 教師たちは生徒たちの監督をせい!」


 地下に隠れていた生徒たちも出てきて、場はたいへんな騒ぎになってきたな。まぁ、学園長が捌くだろう。


 それにしてもドラゴン退治か……。コルネリアの願いから始まったが、成し遂げたんだなぁ……。

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