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090 対ドラゴン戦

「アン・テイカァアあああああああああああああああああああああああああああ!」


 コルネリアの凛々しい声と共に、極太のレーザーのような光が高速で振るわれる。


 【アン・テイカー】。剣技の最終奥義。必殺の一撃だ。


 しかも、コルネリアの持っているのは呪いを解除した聖剣。邪神とその手下であるモンスターへの特攻がある。いくらドラゴンといえども大ダメージは必至のはずだ。


 コルネリアは最初からドラゴンの首を狙ったらしい。これが決まれば、ドラゴンの首も刎ねられるかもしれない。だが――――ッ!


 迫る【アン・テイカー】の光の奔流に対して、ドラゴンはなりふり構わず右へとその身を投げ出した。


 ズゴゴゴガガガガッ!!!


 けたたましい音を立てて、ドラゴンがグラウンドへと身を投げ出した。


 【アン・テイカー】を見てさすがに脅威を覚えたのだろうか。


 しかし、そのせいでコルネリアの【アン・テイカー】は、ドラゴンの左の翼を消し飛ばすに終わってしまった。


 最悪だ。


 ドラゴンに勝てればよし。勝てなくても追い払えればいいと考えていたのに、ドラゴンの飛行能力を奪ってしまった。これではどちらかが死ぬか決死の戦いになってしまう。


「オール・ヒール」

「君は……!? なぜここに来てしまったのだ!」

「学園長、教師たちと下がっていてください」


 オレは学園長や教師たちを癒すと、前に出る。


 今、ドラゴンの視線はコルネリア一人に向けられている。このままではコルネリアばかりがドラゴンに狙われてしまって危険だ。視線を分散する必要がある。


「スロウ! フラッシュ! パニッシュ!」


 オレはドラゴンに向けて魔法を連続で放つ。【スロウ】でドラゴンの動きを遅くし、【フラッシュ】でドラゴンの視界を奪う。【パニッシュ】は治癒魔法の使い手が使える数少ない攻撃魔法だ。


「リリーは魔法を! バッハは突っ込め!」

「ん」

「あーもう! 了解だ! おらああああ!」


 リリーが杖をドラゴンに向けると、杖の先に巨大な岩が現れた。


「しゅーと」


 リリーが呟くと同時に岩が目には追えないほどの高速でドラゴンにぶつかった。


「GYAAAAAAAAAAU!?」


 岩はドラゴンの左肩に直撃し、ドラゴンの鱗を砕き、肉を削る。ドラゴンから黒い血が噴き出し、ドラゴンは悲痛な叫びをあげた。


 オレはリリーが全力で魔法を使うのを初めて見た。まさか、これほどの威力があるとは……! やはりリリーのギフトは強力だ。


「まだ」

「え?」


 驚いてリリーを見ると、リリーの杖の先には、目を疑うような大きな魔法陣があった。追撃か!?


「しゅーと」


 呟くようなリリーの言葉。覇気のない声とは裏腹に、その魔法は強力だった。


 空に巨大な魔法陣が展開し、まるで極太のレーザーのように打ち下ろされた幾筋もの光の奔流。それはまるで光の針でドラゴンを標本にするかのように打ち抜いた。


 強力過ぎるほどに強力な魔法。オレはこんな魔法知らないぞ!?


 そして、リリーはまだギフトを手に入れて二か月ほどしか経っていない。その間に倒したモンスターといえば、王都の近郊の森の弱いモンスターだけだ。それなのにこんな強力な魔法が使えるなんて……!


 コルネリアの時も感じたが、リリーもその将来が恐ろしくなるほどの強さだ。


「二属性魔法!? それも光魔法の使い手じゃと!? それにこの魔法は!? いったい何が起こっておる!?」


 背後から学園長の恐れるような声が聞こえた。同じ二属性の魔法を操る者として理解が追い付かないのだろう。


 それはそうだ。リリーは七属性。すべての属性の魔法を使えるのだから。


「GUGAAAAAAAAAAAAAA!?」


 グラウンドに光の柱で縫い付けられたドラゴンが抜け出そうと足掻いている。しかし、光の柱はビクともせずにドラゴンを拘束し続けた。


「うらああああああああああああ!」


 ようやくドラゴンの足下にたどり着いたバッハの咆哮が聞こえた。バッハはドラゴンの足に飛び付くと、そのギフトを発動させる。


 バッハのギフトは沸騰だ。バッハはすべての物質を触るだけで沸騰させることができる。それはドラゴンの硬い鱗も例外ではない。


 ぼこぼことまるで融解するように波打つドラゴンの鱗。バッハの沸騰のギフトの効果だ。それは次第に範囲を広げていく。


「GYAU!?」


 ドラゴンが手を振ってバッハを振り落とした。


「ヒール」


 オレはすかさず叩き落されたバッハに【ヒール】をする。


「うおおおおおおお!」


 バッハはすぐに立ち上がると、またドラゴンに飛び付いた。


 ドラゴンにとってはバッハはかなり鬱陶しいだろう。


 このまま勝てるか?


 しかし、そうもいかないらしい。ドラゴンの口が光り、口から漆黒の炎が零れたのが見えた。ドラゴンの代名詞、ドラゴンブレスの予兆だ。


 このままじゃヤバい。


「ヘイスト、クイック」


 オレは魔法で強化した足を踏み出し、一気に加速する。一歩踏み出すごとに、見る見るうちにドラゴンの巨体へと近づいていく。


 ドラゴンブレスは強力な全体範囲攻撃だ。それを防ぐ手段は……無い!

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