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087 クラウディアと

 学園の個室。オレはクラウディアと向かい合ってソファーに座っていた。クラウディアに誘われたのだ。クラウディアは上機嫌にニコニコしている。


「それでクラウ、何の用なんだ? わざわざ人払いまでして……」


 この場には、いつも一緒に居るコルネリアが居ない。クラウディアが人払いを願ったためだ。


 おそらくかなり重要な話のはず。いろいろな可能性が頭をよぎる。


 例えば、コルネリアの持っている聖剣のこと。あれは元々この学園に封印されていた魔剣だ。まさかとは思うが、窃盗がバレたのだろうか?


 例えば、また邪神の呪いに倒れた人が居るとかか? 国の中枢に居る人間は、なぜか邪神の呪いに罹りやすい。それを秘密裏に治しているのがオレだ。これは絶対に口外できないが、国王も邪神の呪いに罹っていた。


 それともまさか、邪神の復活の予兆でも観測できたのか?


 ゲームではそろそろ邪神の復活が予言される頃のはずだが……。


 この世界では、まだクレーメンスが邪神の復活のために動いていない。そのため、邪神の復活が遅れているのだろうか?


「昨日、ディーがエルを二人っきりで個室に誘ったでしょう?」

「ん……?」


 なんだか予想外の話だな。なにか問題があっただろうか?


「エルばかりズルいです。わたくしもディーと二人っきりでおしゃべりしたい!」

「えぇ……」


 なんだか身構えていたのがバカバカしくなるほどの理由で呼ばれたようだ。


「エルとはどんなお話をしたのですか? それとも、人には言えないようなことを?」

「言えないようなこと……?」


 思い出すのは、昨日のエレオノーレの膝枕だった。


 実はオレはあの時起きていた。前に邪教徒リーダーから奪った“気合いの首飾り”の効果で、オレは気絶すると同時に意識が覚醒していたのだ。


 だが、エレオノーレを怒らせてしまった手前、どういう態度で接すればいいのかわからず、そのまま気を失ったフリをしていたら……。


 なぜかエレオノーレに膝枕されていた。


 オレもなにが起こっているのかわからなかったが、気が付くとエレオノーレに膝枕されていたんだ。


 オレの髪や頬を撫でるエレオノーレの手つきは優しかった……。


「その顔、まさか本当に人には言えないようなことを?」

「そそそ、そんなわけないだろ!」

「怪しいです。口づけでもしましたか?」

「してない! というか、オレはエルを怒らせて殴られたんだ。そんなことあるわけないだろ?」

「エルを怒らせた……? おかしいです。個室から出てきたエルは、どう見ても幸せそうな顔をしていましたよ?」

「そんなこと言われても……。殴られたのは本当だぞ?」


 というか、エレオノーレは幸せそうな顔をしていたのか。


 オレをノックアウトしたかと思えば、膝枕してくれるし、それで今度は幸せそうな顔をしていた? エレオノーレの情緒がわからん。


「エルに殴られたとおっしゃいますけど、エルに何をしたんですか?」

「べつに変なことはしてないぞ? ちょっと顔が赤くて熱がありそうだったから熱を測っただけだ」


 “こうやって”と髪をかき上げておでこを近づけるようなマネをする。クラウディアはそんなオレを半目のジトーっとした目で見ていた。


「な? べつにおかしくはないだろ?」

「そうなのでしょうね。ディーの中では……。幼い頃からリアが居た影響かしら?」


 眉を下げて、なんとも言えない表情を浮かべたクラウディア。


「わたくしに、エルにしたことを同じようにしてみてくださいますか?」

「ああ」


 オレはソファーを立ち上がると、自分のおでこをクラウディアのおでこにくっ付けた。


 至近距離からクラウディアの青い瞳と見つめ合う。キラキラと輝く青の瞳は、まるで宝石のように美しい。うおーまつ毛なっが!


「ッ!?」


 クラウディアがビクッと震えて目を瞬かせた。


「どうだ? なにかわかったか?」

「いえ、あの? あまりに自然に来られたので驚きました……」

「そうか?」


 そういうものだろうか?


「ですがこれでは……」

「ん?」


 その時、クラウディアが動いた。


「ちゅっ」

「ッ!?」


 感じたのは左頬。柔らかくて瑞々しいなにかが押し当てられた感覚。オレにはそれがクラウディアの唇だとすぐに気が付いた。


 クラウディアがオレにき、ききき、キス!? アイエー!? ナンデ!? キスナンデ!?


「く、くくく、クラウッ!?」

「ふふふ」


 クラウディアは、顔を真っ赤にして慈愛の眼差しでオレを見ていた。


「キスされるかと思ったのに、してくれないんですもの。わたくしからしちゃいました」

「いや、しちゃいましたって……」

「お嫌でしたか?」

「……嫌じゃなかった……」

「おそらく、エルもキスされると思ったんじゃないかしら? だから、つい手が出てしまった」

「ふむ……」

「でも、エルも嫌ではなかったと思いますよ。あんなに幸せそうな顔をしていたんですもの」

「そうかな……?」

「ええ。ふふふ。この国の王女二人に好かれて両手に花ですね? 本命はどちらなのですか?」

「ええ!? いや、それは……」

「わかっています。エルなのでしょう? ですが、わたくしのことも忘れないでくださいね?」


 いや、そんなこと言われても……。オレにどうしろってんだよ!?

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