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078 自主練

「せやぁっ!」

「はあ!」


 学園のグラウンド。夕日に照らされる中、二人の美少女がしのぎを削っていた。


 片手剣と盾を装備したエレオノーレと、槍を装備したクラウディアだ。


 カッカッカッ!


 クラウディアの三連突きを盾と片手剣で上手くいなしていくエレオノーレ。


 二人ともその顔は真剣で、遊びはない。どこまでも貪欲に強くなろうとしているのが窺えた。


 オレは二人の様子を分析しながら見ていた。


 一見優位なのはクラウディアだが、まだ一発もエレオノーレに有効打を与えていない。エレオノーレはどっしりと構えて、クラウディアの攻撃を弾き、躱している。


 エレオノーレに以前はあった攻め急ぐ様子が見られない。エレオノーレに何度も伝えてきた“最後に立っていれば勝者”という言葉を愚直に守ってくれているのだろう。


 そのおかげか、最近はクラス最強のコルネリアにも引き分けに持ち込むことが増えてきた。大きな成長だと思う。


「せやあっ!」

「くっ!?」


 しかし、成長という意味ではクラウディアも負けてはいない。彼女はまだ槍を持って半年に満たないというのに、コルネリアからも勝利をもぎ取ることがあるのだ。


 クラウディアのギフトは名称不明だが、かなり強力なものなのだろう。


 油断するとオレも負けることがあるくらいだ。


「はい、ストップ! 試合終了だ!」

「むぅー、ありがとうございました」

「はぁ、はぁ……。ありが、とうございました」


 悔しそうな表情を浮かべるクラウディアと、疲れを滲ませながらも笑顔を浮かべてみせたエレオノーレ。オレたちの中では引き分けはエレオノーレの勝利として扱われるので、エレオノーレがクラウディアに勝ったことになる。


「はぁー……」


 大きく息を吐いてその場に座り込むエレオノーレ。だいぶ疲れているらしい。今日はもうお開きかな。


「お疲れさまです、エル」

「ありがとう、リア。今日はリアには勝てませんでしたわね……」

「次がありますわ」

「そうね。次こそ負けないわよ」

「望むところです」


 コルネリアがエレオノーレにタオルを渡していた。少女たちの談笑には、たしかな信頼関係が見えて、オレとしても見ていてほっこりする。


「ディー?」


 気が付くと、クラウディアがオレの顔を至近距離から覗き込んでいた。


 ちょっとドキッとするほど近い。クラウディアの甘い花のような香りまで感じた。


「……なんだ?」

「この後お暇かしら? できれば二人っきりで会いたいわ」


 そう言ってクラウディアは流し目でオレを見てきた。一瞬でいかがわしいことに誘われていることがわかるほどの色気があった。


 もし、このまま二人きりになってしまったらどうなってしまうんだろう?


 怖いような確かめたいような心地だ。


 クラウディアの綺麗な顔が更に近づいてくる。


 キ、キスされちゃう!?


 避けようとして、でもオレの体はまるで金縛りに遭ったかように動かなかった。もしくは、オレはクラウディアのキスを望んでいたのかもしれない。


 クラウディアがオレの肩に手を置いて、背伸びをしたのがわかった。


 クラウディアの艶々の唇は、オレの口を通り過ぎ、耳元で囁く。


「もし二人っきりで会えたら、いいことしてあげる」


 いいこと!? いいことって何!?


「あっ! お姉さま! 抜け駆けはひどいですわ!」

「ちょっとお兄さま! なに鼻の下伸ばしているのよ!」

「バレてしまいましたね……」


 クラウディアがいたずらっ子のようにペロッと舌を出してオレから離れていく。


 クラウディアとの距離が開くのを、オレは確かに寂しいと感じていた。


「もう! クラウには油断ができないわね!」

「あら? なんのことかしら?」


 コルネリアがオレの左腕を取っていつものポジションに落ち着いた。


「お兄さま? クラウに油断してはいけませんよ? いつ食べられてしまうか……」

「まあひどい。人をモンスターのように言わないで?」

「似たようなものですよ、お姉さまは」

「エルちゃん? どういうことかしら?」


 三人の少女がキャッキャウフフとはしゃいでいる。女三人寄れば姦しいなんて言うけども、本当だね。


 三人ともわりと物静かなタイプのはずなんだけど、今は人目が無いからか、いつもよりも饒舌じょうぜつでのびのびしている印象を受けた。


「もう! こうなったら誰が一番魅力的か、ディーに決めてもらいましょう?」

「え!?」

「お兄さまに!?」

「さあディー、この三人の中で誰が一番魅力的かしら? 素直に答えていいのよ? 恨みっこなしですもの」

「えぇー……」


 なんでそんな誰と答えても角が立ちそうな質問を寄越すんだよ!?


「さあさあ、誰ですの? もちろん、わたくしでしょう?」


 ノリノリなクラウディアが、胸を寄せて上げながら訊いてくる。王女としてそのポーズはアウトだろ!


「わたくしは……。お姉さまより大きい、ぞ……?」


 なんでエレオノーレも顔を赤くして張り合ってるんですかね!?


「胸なんて飾りです! 偉い人にはそれがわからないんです! でも、お兄さまならわかりますよね? 大切なのは心です」


 あの、コルネリアさん? あなたのお兄さまが困ってますよ? 助けてあげて?

お読みいただき、ありがとうございます!

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