表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

77/189

077 悩み

 幼くして邪神の呪いに罹った者は強力なギフトを持っている可能性が高い。


 コルネリア、リリー、クラウディアの例しかないから確実とは言えないが、ギフトの能力でできることが決まるこの世界では、有能なギフト持ちなんて何人でも欲しい。


 その可能性があるなら、オレはどこへなりとも行って治療するつもりだ。


 そして、新たにわかったことだが、アルトマイヤー将軍のような例もある。


 これまで邪神の呪いは先天的なものだと考えられてきたが、後天的に邪神の呪いに罹ることもあるのだ。


 アルトマイヤー将軍のような国の重要人物が後天的に邪神の呪いに罹る。


 オレはそこに何者かの意図を感じざるを得ない。


 未だに確証はないが、もし本当に邪神が呪っていると考えるならば、一応の筋は通るのだ。


 強力なギフトを持つ子どもを将来の危険と判断して呪って殺していく。


 有能な王国の高官を呪い殺して王国を弱体化させる。


 すべては邪神が復活した時に少しでも優位に事を運ぶために。


 実際に、ゲームではアルトマイヤー将軍が最悪のタイミングで死に、王国軍は邪神軍に敗れてしまった。


 そんな悲劇をこの世界で再現するわけにはいかない。


 オレはエレオノーレに話を通して、王国中の邪神の呪いの疑いがある者を治療する用意があることを大々的に周知してもらった。


 ギフトが使えないのは女神が見限ったわけではなく、邪神がギフトの力を阻んでいるのだと説明し、アルトマイヤー将軍の例を出して、邪神の呪いに罹ることは、恥ずかしくないことだと繰り返し説明もした。


 だが、やはり今までのギフトを使えない者は人間にあらずという考えが浸透しているのか、申し出てくれたのは少数にとどまっているのが現状だ。


 それもこれも、教会が長年にわたって邪神の呪いを解呪することができなかったせいだ。


 教会にとって、自分たちが病気を治せないというのは恥でしかない。だから、邪神の呪いに罹った者をギフトも使えない者は人間にはあらずと言って切り捨てた。


 本当にロクなことをしないな、教会は。


 潰してしまった方がいいんじゃないか? 明らかに利敵行為だろ!


 ただ、今まで治療系のギフト持ちを集め、治療の一切を取り仕切ってきた教会の権力は絶大だ。潰すのは難しい。


 くそったれ!


 そんないいところがまるでない教会だが、オレの取り込みに必死なようだ。最近は手紙だけではなく、金品を持った使者がバウムガルテンの屋敷を訪れる。どうにか教会の所属してくださいって感じだな。


 金品以外にも、新しく教会を建てるからそこの責任者になってくれとか、バウムガルテン領の発展に協力するとか、ついには女まで使ってオレを篭絡しようと必死だ。


 オレがタダの平民だったら、無理やり教会の所属にされていただろうな。貴族で助かった。


 そういえば、教会といえば教会にはメインヒロインが一人居たな。こっちはリーンハルトと上手くいっているといいんだが……。


 そうだった。そのリーンハルトも悩みの種だ。


 今のままではどう考えてもリーンハルトとエレオノーレの関係は上手くいきそうにない。エレオノーレにとってリーンハルトなんかよりもオレの方が親しいくらいだ。


 というか、リーンハルトはたしかに恋多き男だったが、それでもエレオノーレを一番に考えているところが魅力的だったのに。


 なぜ、平然と三股を狙うようなクズ男になってしまったんだよ……。


 たしかにコルネリアもクラウディアもエレオノーレクラスの美少女だけれども! だからって三股なんて狙うな!


 おかげでクラス内ではリーンハルトはかなり浮いている。まぁうん、正直に言おう。リーンハルトは嫌われている。


 こんな主人公の姿は見たくなかったなぁ……。


 このままでいいのか?


 あんな主人公で、本当に邪神を倒せるのか?


 不安しかねえよ……。


「あぁあああぁぁあああぁぁぁあああああああ……。もうどうすんだよ……?」


 力ない声が口から漏れた。


 もうほんと、女神さまとやらの不思議パワーで邪神消滅しないかなぁ……。


 コンコンコンッ!


「ん?」


 王都のバウムガルテン邸の暗い自室の中。控えめにノックの音が飛び込んできた。


「またリリーが来たのか?」


 リリーにはオレのベッドに裸で忍び込んだ前科があるからな。破天荒な行動が多いリリーにも部屋のカギは突破できなかったようだ。


「ふぅ……」


 オレはベッドから降りると、月明かりを頼りにドアまで歩いていく。


 ガチャリと鍵を開けドアを開くと、月明かりに輝く銀髪が見えた。


「リア?」

「お兄さま……。こんな時間にごめんなさい……」

「どうしたんだい、リア? 震えてる……?」

「怖い夢を見てしまって……。それで、それで……」

「そっか。とりあえず入りなよ。今夜は一緒に寝ようか」

「いいの……?」

「リアならいつでも大歓迎さ」


 コルネリアと一緒にベッドに入る。コルネリアの体温を感じてなんだかくすぐったかった。


「あったかい……」

「さあ、もうおやすみ。悪夢なんてお兄さまが吹き飛ばしてあげよう」

「うふふ、はい……」


 その日はコルネリアと一緒に寝た。翌日、オレを起こしに来たリリーにずるいと叫ばれて、今度はリリーと一緒に寝ると約束してしまったのは早まったかもしれないな。

お読みいただき、ありがとうございます!

よろしければ評価、ブックマークして頂けると嬉しいです。

下の☆☆☆☆☆をポチッとするだけです。

☆1つでも構いません。

どうかあなたの評価を教えてください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ