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071 個室での吐露

「…………」

「…………」


 学園の白を基調とした個室。品のいいソファーとテーブルがあり、さすが貴族の学校と思わせる豪華な部屋だ。


 そんな部屋が今、深い沈黙に満ちていた。まるで、誰が話し出すのか牽制し合っているかのようだ。なんで?


「まずは、クラウの要件から聞こうか? 今日はどうしたんだ? また勉強か?」


 オレが沈黙を破ると、クラウディアがニッコリ笑った。


「それもありますけど、以前質問されたわたくしのギフトに関してですわ」

「……お姉さま、ディーたちに開示するのですか?」

「ええ。彼らは信頼できます。わたくしの邪神の呪いを解いたのはディーですから。それにディーならあるいは予想が付いているかもしれませんし」

「それは……」


 オレがクラウディアの邪神の呪い解いたのは初耳だったのか、エレオノーレが驚いた表情を浮かべてオレを見た。


「さすが聖者のギフトを持つディーですわね。まさか、お姉さまの邪神の呪いを解くなんて……」

「オレの力が役に立ってよかったよ」

「……ええ」


 エレオノーレはちょっと複雑そうな顔を浮かべていた。


 オレがクラウディアの邪神の呪いを解いたから、エレオノーレの立場が変わってしまったからな。思うところはあるのだろう。


「話を戻しましょう。これは公には伏せられていますが、わたくしのギフトは鑑定できませんでした。リアさんと同じ正体不明のギフトです」

「やはり……」


 クラウディアのギフトは正体不明だが、強力なギフトであることは実際に手合わせしたオレが知っている。やはり、邪神の呪いから助かった者は、正体不明の強力なギフトを授かるのか?


「ディー、やはりとは?」

「クラウ、オレはこれまでに三人の邪神の呪いを解呪してきたが、いずれもギフトの名前がわからず、しかし強力なギフトを持っていた」

「三人も? まさか……ッ!?」


 エレオノーレが驚いたようにオレの隣に座るコルネリアを見た。コルネリアは笑顔を浮かべてエレオノーレに頷く。


「はい。わたくしも二年前ほどまで邪神の呪いに侵されていました。それをお兄さまが治して下さったのです!」

「オレはリアの邪神の呪いを解呪したくてギフトを磨いてきたんだ」

「そういうことでしたの……。まさか、リーンハルトもですの?」

「いや、リーンハルトに関してはオレは知らないんだ。奴も邪神の呪いに侵されていたのかどうかも知らない」


 リーンハルトはゲームの主人公だが、オレがリーンハルトを知っているのは学園に入ってからで、彼の幼少期というのはオレも知らないんだ。


 一度リーンハルトに直接訊いてみるのも手か?


「邪神の呪いとはそもそも何なのでしょうか……?」

「邪神の呪いについては謎も多い。あれこれ考えても今は情報が少なすぎる。仮定に仮定を重ねても意味が無いしな」


 邪神の呪いについては、オレもわからない。少なくともゲームでは存在しなかったワードのはずだが……。まさかオレにとってこんなに重要なものになるとはな。肝心なことに知識チートが通用せずにイライラする。


 知識チートが通用しないと言えば、クラウディアの存在でオレの計画はかなりアドリブが要求されることになってしまった。まさか、クラウディアが王女だとは……。見抜けなかったな……。


「クラウはエルにも話があったんだろ? そっちは何だったんだ?」

「それは……」


 クラウディアがエレオノーレの顔を見た。その表情は眉を下げてなんとも切り出しにくそうだ。


「エル、わたくしは貴女と直接お話したいと思っていました。そして、謝りたいと思っていたのです」

「お姉さまがわたくしに……?」

「これまでエルは、次期国王に相応しくあろうとたいへんな努力を積み重ねてきたと思います。それをわたくしが生き永らえてしまったことで貴女の立場が弱くなってしまいました。図らずもこれまで貴女の元に纏まっていた貴族たちをわたくしは切り崩してしまいました。ごめんなさい」

「ッ!?」


 深々と頭を下げるクラウディア。王族が己の間違いを認めること自体珍しいのに、クラウディアは頭を下げている。この意味はとても大きい。エレオノーレも非常に驚いて口を開けている。


「なにを言うの、お姉さま!? せっかくディーに助けてもらった命なのでしょう? お姉さまが生きていることを悪いことのように言わないで! わたくしは……納得しているわ……。次期国王には、お姉さまの方が適任よ……」


 エレオノーレが、まるで絞り出すように吐露する。次期国王になるために今まで必死に磨いてきたものを投げ出す。そこにどれほどの葛藤があっただろう。


「エル、わたくしはそうは思いません。次期国王にはエレオノーレ、貴女こそが相応しいと思っています。わたくしは折を見て王位継承権を放棄するつもりです」

「バカなこと言わないで! わたくしは所詮、妾腹の娘! 国母に相応しいのは、お姉さまの方よ! 貴族たちもそう言ってる! わたくしではダメなの!」


 激しい濁流のような心情の吐露。エレオノーレの綺麗な表情は崩れ、涙さえ浮かべていた。


 エレオノーレが妾腹の娘? そんな設定初めて聞いたぞ!?

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