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064 リーンハルト②

「なあ、ディートフリート。俺ってイケメンだよな?」


 野郎の臭いが充満する更衣室。これから実技の授業だから体操服に着替えているわけだが……。リーンハルトがおかしなことを訊いてきた。


「そうなんじゃないか?」


 オレはリーンハルトに適当に返す。実際、ゲームの主人公であるリーンハルトはイケメンだ。おそらくクラスの男子で一番だろう。


 というか、なに気やすく話しかけてきてるんだ? オレとお前は友だちでもなんでもないぞ?


 こっちは主人公であるお前からできるかぎり距離を置きたいんだが?


「やっぱそうだよなー。俺はイケメンのはずなんだ。なのに、なぜ俺は女の子に避けられるんだ?」

「本気で言っているのか……?」

「無論、本気だ」


 どこにも後ろめたいものなど無いとばかりに目に輝きを宿したまま力強く頷くリーンハルト。こいつはマジもんだわ。こえーよ。


「リーンハルト、お前は女子に避けられているんじゃない。嫌われているんだ。もっと言うと、最低のクズ野郎だと思われている」

「なんで!?」

「そりゃ、同じ日に二人連続で美人に告白したらそうなるだろ。どんだけ軽薄なんだよ。誠意がペラペラじゃねえか。しかも、この間なんて三人目にまで告白して……」

「好きになっちまったんだ。仕方ないだろ!」

「オレに言うなよ。それで? 今は誰が好きなんだ?」


 できればコルネリアのことは諦めてくれねえかな。お前はゲーム通りにエレオノーレとよろしくやってろよ。


「無論、三人とも好きに決まってるだろ!」

「お前の恋愛感情どうなってるんだよ……」


 こいつはダメだ。ゲームにハーレムルートがあるのも納得だわ。


 というか、こんな主人公でこの世界は大丈夫なのか? そっちの方が不安だわ。


「自分の気持ちに嘘は吐きたくない!」

「おま……それ……!?」


 エレオノーレを助けに行く時に主人公が言った超カッコいいセリフじゃねえか。三股しようとしている男が言っていいセリフじゃねえぞ。オレはあれで感動したのに……。


「とにかく、俺は三人とも好きなんだ。愛している。そこでだ。コルネリアちゃんのお兄さまであるお前には協力してほしいんだ」

「オレが協力すると思うか?」


 大事な大事なコルネリアを誰が貴様なんかに託すものか。


「いーや、お前は俺にコルネリアちゃんを託さざるを得ない」

「すごい自信だな。なぜそう思うんだ?」

「ギフトだ。俺もコルネリアちゃんもギフトの正体が不明だろ? そのせいで俺たちは不吉なギフトを与えられたと言われている。そんなギフトを持っていたら、まともな嫁の貰い手なんて居ないだろ? 他でもないお前が一番頭を悩ませてるんじゃないか? だが、俺はそんなことは気にしない。俺のギフトも正体不明だからな。それに、俺はコルネリアちゃんを愛している。自分で言うことじゃないが、これ以上の相手なんて居ないぜ?」

「…………」


 こいつ、バカのクセに的確にこちらの弱みを突いてくるじゃねえか。


 たしかに、正体不明のギフトを与えられたコルネリアとリーンハルトに対する悪評というのは完全に消え去ったわけじゃない。とくにコルネリアは実技の成績が一位だ。そのことで一部の生徒からはやっかみや嫉妬があるのも知っている。


 正体不明のギフト。なのに強い。


 人々の目にはそれが不気味に映るらしい。


 コルネリアの嫁ぎ先を探すのに、この噂はかなり邪魔だ。


 リーンハルトの言う通り、こいつに嫁がせるのがいいのかもしれない。だがなぁ……。リーンハルトはこれから邪神との戦いに巻き込まれていく運命だ。そんな危ないところにコルネリアを託すわけにはいかない。


 下手をしたら、コルネリアが邪神との戦いに参戦してしまうではないか。


 まぁ、すべてはコルネリア次第だな。ないとは思うが、コルネリアがリーンハルトを好きになってしまったら、オレはコルネリアとリーンハルトの結婚を許すつもりだ。


 その時は、邪神だろうがなんだろうが相手になってやるよ。


 オレのコルネリアを護るという誓いは永遠だ。


「はぁ……。オレはやっぱりお前には協力しないよ、リーンハルト。オレにはコルネリアの気持ちが一番なんだ。コルネリアがお前のことを好きになったら、結婚を許してやる。今はそれだけだ」

「その約束、違えるなよ? 俺が思うに、コルネリアちゃんはもう俺のこと好きだと思うんだよなぁ。この前なんて、エレオノーレと話していたら、熱い視線でオレのこと見つめてきたぜ?」


 こいつの頭の中はどうなってるんだ……?


「リーンハルト、お前にとっては残念な事実だがコルネリアはお前のことを嫌っている。その視線は熱い視線じゃなくて、単なる蔑みの視線だ。勘違いするな」

「マジかー……。なんで俺がコルネリアに嫌われてるんだよ!?」

「そりゃ、三股かける男なんて嫌われて当然だろ? お前も三人同時に攻略するんじゃなくて、一人に絞ればいいんじゃないか?」

「えぇー……。そんなの俺じゃないだろ?」


 お前の中のリーンハルト像はいったいどうなってるんだ?


「お前だって、ギフトが進化してモテモテなんだろ? 女喰い放題なんだろ? 俺もそこまでは言わないから、せめてハーレムが欲しいんだ」


 あぁ、こいつはダメだな。存在が有害だ。絶対にコルネリアに近づけないでおこう。


「オレはすべての縁談や誘いを断っている」

「えぇー!? もったいなすぎるだろ! でも、つまみ喰いはしてるんだろ?」

「してねえよ! 寝言は寝て言え!」


 なんでこいつこんな思考が下半身よりなんだ? それでも主人公かよ。


 模擬戦で当たったら、懲らしめてやろう。



 ◇



 その後の模擬戦では、股間を押さえてうずくまるリーンハルトが転がっていた。

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