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058 お風呂②

 地下の呪われたアイテムが収められた部屋。ようやく一人で落ち着いた気分に浸れた。


「はぁ……。朝からひどい目に遭った……」


 とくにコルネリアが部屋に入ってきた時なんて、心臓が止まるかと思った。


「まぁ、誤解が解けて助かった……」


 手に持った呪われたアイテムの解呪しながら思う。本当にコルネリアの誤解が解けて良かった。オレは危ういところでなんとかカッコいい素敵なお兄さまの威厳を守ることができた。


 冷静な判断をしてくれたコルネリアには感謝しかない。やっぱり日頃の態度というのは大事だな。


 まぁ、コルネリアにはあまり無防備なのはよくないと怒られてしまったがな。とくにベッドに人が入ってきても気が付かないのはたるんでいる証拠だと言われてしまった。


 たしかにコルネリアの言う通りなのだが、寝る時くらいはなにも考えずにいたいものだ。


 しかし、コルネリアは誰かがベッドに入ってきたら気付けるのだろうか? 今度試してみるか。


「それにしても、問題はリリーか……。さすがに全裸で男のベッドにもぐりこむのは問題だろ……」


 この館でメイドとして働いてる母親のユリアは平謝りしていた。だが、リリー本人はあまり反省していないみたいだったな。


 今日はなんとか誤解を解くことはできたが、今度からどうするか……。


 リリーはまだ幼さが勝つが、美少女といってもいいだろう。少し前までは骨と皮だけのガリガリだったが、この数週間ですっかり少女らしいふっくらとした体型を取り戻していた。今日わかったが、コルネリアよりも胸があるくらいだ。おそろしいまでの回復力である。


 そんな美少女に何度も何度もアタックされ続ければ、オレの理性が保たないかもしれない。


 今はよくても、五年後とかにやられたら、断ることができるか?


 ちょっと自信が無い……。


「しばらくは寝室のカギを閉めるか。クラウスには、リリーにカギを預けないように言っておこう」


 これでオレの寝室に入れないはずだが、そのことを知ったリリーがどういう行動に出るか未知数だ。ちょっと怖い。リリーは、行動力だけはバケモノみたいにあるからなぁ……。


 そんなリリーだが、今はコルネリアに淑女教育を施されている真っ最中だ。成り行きとはいえオレとコルネリアの妹にしてしまったからな。リリーも貴族としての礼儀作法が必要なのだ。


 ……この淑女教育でリリーが行動を改めてくれればいいんだが……。期待薄かもしれない。


「お? これいいじゃん」


 オレが呪われたアイテムの山から取り出したのは、七色の属性宝石が填まった魔法使い用の杖だ。属性宝石は、魔法の威力を上げてくれる。七属性すべての魔法が使えるリリーにはもってこいの杖だ。


 たぶん呪われてしまったから仕方なく売られたのだろうが、呪われたアイテムの中には、超一級品の掘り出し物がままある。


 こうした装備の呪いを解呪して、コルネリアやリリー、常備兵の皆に配っているのだ。だからオレたちの装備は、貧乏男爵家には相応しくないほど充実している。


 そして、余った物をベンノやアルノーに売っているのだ。


 アルノーと言えば、王都散策中にピクルスを見つけた。


 これはもうアレを作るしかないだろう。近いうちにアルノーを呼ばなければ。


「お次はポーションか。何のポーションなんだ? 解呪したら鑑定しないとな」


 こうしてオレは一人でせこせこと呪われたアイテムの解呪していくのだった。



 ◇



「バッハ、風呂の準備をしてくれ。どうにも埃っぽくて敵わん」

「了解しました」


 オレはバウムガルテン領から連れてきた唯一の常備兵であるバッハに風呂の用意を申し付ける。


 バッハのギフトは水を瞬時にお湯に変えることができる。


 普通、風呂を沸かそうと思えば、大量の薪が必要だが、バッハが居れば薪代はかからない。バウムガルテンは相変わらずの貧乏男爵だから、タダでお風呂が沸かせるバッハを重宝していた。このためにバッハをバウムガルテン領から連れてきたと言ってもいい。


「お風呂の準備完了しました」

「ああ、ご苦労」


 しばらくリビングで休んでいると、すぐにお風呂が沸いた。さっそく入ってしまおう。



 ◇



「くあぁあ~~~~~~~~~~~~」


 少し熱いくらいの湯舟に浸かると、おじさんのような声が漏れた。まぁ、心はおじさんだから仕方ないね。


「十二年か……」


 この世界にオレが転生して十二年。やっと学園に入り、ようやくゲームの時間がスタートした。


 学園の地理も確認できたし、そろそろ動き出すとするか。今動けば、いろいろと手が打てるはずだ。


「やるか……!」


 手をぎゅっと握り決意を固めていると、脱衣所の方が騒がしくなった。声が高い。女、それも少女の声だ。


「なんだ?」


 なにか問題でも起きただろうか?


「ディー?」


 脱衣所の方を見ていたのが悪かった。ドアが開いて現れたのはリリーだった。ここは風呂なのだから当然なのかもしれないが、リリーは裸だ。


「ちょっとリリー! ちょっとは恥じらいなさい!」

「あ……」

「え……」


 リリーを引き戻しにやって来たコルネリアと目が合った。コルネリアも裸だ。


「二人とも? 今はオレが入ってるんだが?」

「一緒に入る」

「え?」

「そうなんです。リリーが一緒に入ると言ってきかなくて……」

「嘘。リアも一緒に入りたいって言った」

「そうなの?」


 コルネリアに問いかけると、コルネリアの顔がだんだんと赤くなっていく。


「その……。はい……」


 そっかー。二人ともオレと一緒にお風呂に入りたいのかぁ……。


 普通は嫌がるもんじゃないの?


 まぁ、二人がいいならオレに拒否する理由はない。


「じゃあ、入る……か?」

「ん」

「はい……」

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