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057 はにとら

「あんっ……」


 ベッドの中で起きているのか寝ているのか曖昧な半覚醒の時間。オレはこの時間を愛している。


 とにかく気持ちがいいんだ。


 やるべきことや義務なんかも忘れてただただ甘い一時を甘受する。


 まるで温かいスライムに包まれているような至福の時間。


「んふっ。意外と、大胆……んっ……」


 すべすべの手触りなのに温かく、ぷにぷにとした柔らかななにかを撫でる。


 なんだか今日はいつにも増して温かく、そして柔らかくて、いい匂いまでした。


「そこは……!? でも、ディーなら、いいよ……?」


 未だにボーっとした頭。微かに目を開けると、眠たげに半分閉じられた緑色の瞳と目が合った。


 誰だ……?


 色素の薄い赤髪と少女らしいふっくらとした頬。そしてオレを見つめる緑の瞳。


「って、ほんとに誰だ!?」

「んっ……」


 脳が急速に覚醒してガバッと起き上がると、少女は夢幻でもなんでもなく、実在していた。


「誰とはご挨拶。リリはあなたの嫁」

「リリーかよ!? なんでオレの布団の中に居るんだ!?」

「……色仕掛け?」

「すんなよ!?」


 周りを見渡せば、ここが学園の寮ではなく、王都のバウムガルテンの屋敷の自室だということがわかった。リリーの部屋ではない。


 そうだ。オレは呪われたアイテムの解呪をしてギフトのレベルを上げるために屋敷に来たんだった。


 まったく、起きたら隣でリリーが寝てるとか、心臓に悪いわ。朝からどうなってるんだよ……。


「でも、ディーも愛してくれた」

「は?」

「今も愛し中」


 リリーの眠たそうな目線をたどると、オレの左手が布団の中に消えていた。左手には、ぷにっとした柔らかさと温かさを感じる。そこにはリリーの胸があるはずで……。


「ほぁあ!?」


 驚いて左腕を上げると、布団も一緒にめくれ上がった。そこには抜けるような白さのリリーの裸体があった。


「なんで裸なんだよ!?」

「? 布団の中は裸の方が気持ちいい」

「裸族かよ!?」


 それにしても、リリーはオレに裸を見られているのに恥ずかしがる様子もない。いや、ちょっと顔が赤い?


「恥ずかしくないのか?」

「恥ずかしい。でも、ディーなら見てもいい」

「なんで?」

「結婚するから」

「しないよ?」

「ひどい……」


 リリーの目元にぷくっと涙の玉ができた。


 ベッドの上で裸の女の子を泣かせる。


 なんだかこうしていると、オレがとてつもなく悪いことをしているみたいだ。


「そうだ! リリー、早く服を着るんだ! もうすぐリアが来る!」


 コルネリアは何が楽しいのかオレを起こすことを日課にしている。もうすぐコルネリアの来る時間だ。


 現状を見ろ! オレはなにも悪いことしていないのに、かなり誤解を生んでしまう状況だ。このままではコルネリアに怒られてしまう。


 いや、怒られるだけならまだいい。最悪の場合、口もきいてくれなくなるぞ!


「さあ、オレはあっち向いているから、早く服を着てくれ」

「やだ」

「はあぁあ!?」

「服着るのメンドウ。ディーが着せて?」

「なんでそうなるんだよ!?」


 かといって、裸のリリーを廊下に出すなんてできないし、コルネリアにこのさんっ場を見せることなんてできない。


 オレが、着せるしかないのか……?


「ごくりッ」


 だ、大丈夫だ。相手はまだ十一歳の子ども。しかも、邪神の呪いでガリガリになった子どもだ。大丈夫、オレはリリーに欲情なんてしない。たぶん……。


「くそっ!」


 覚悟を決めろよ、ディートフリート・バウムガルテン!


 オレはベッドから飛び出ると、冷めきったリリーの服を拾った。


「くそっ! パンツまで脱いでるのかよ!」


 なんでオレが女児の着替えなんかせにゃならんのだ!


「布団に入る時は全裸派」

「悔い改めろ!」


 コンコンコン!


「お兄さま、起きていますか?」


 まずい、コルネリアが来てしまった!?


「ああ、起きているよ、リア。ちょーっとだけ待ってくれるか?」


 布団の中のリリーは全裸だ。どう言い訳すればいいんだよ!?


「まずはパンツだちくしょうめ!」


 パンツだ! パンツさえ履いていたらもうセーフじゃないか!?


「やんっ」


 オレはリリーのパンツを握ると、布団を跳ね除けた。朝日を受けて真っ白に輝くリリーの裸体が露になる。


「リリー、パンツを履くんだ!」

「履かせて?」

「くそがっ!」


 オレはリリーの足を掴むと、あまり体を見ないようにリリーにパンツを履かせていく。


「こら、足を広げろ! パンツが上がらないだろ!」

「恥ずかしい……」

「今更!?」


 リリーの情緒はどうなってるんだよ!?


「お兄さま? 今、女の人の声が? まさか……!」


 がちゃり!


 コルネリアが見たのは、ベッドの上で恥ずかしそうに裸体をくねらせるリリーと、リリーのパンツに手をかけたディートフリート・バウムガルテンの姿だった。


 終わった……。グッバイ、かっこいい素敵なお兄さま。


 こんにちは、幼女を裸に剝く変態のディートフリート・バウムガルテン。


「お兄さま……。これはいったい……? なぜリリーが裸なのですか? なぜお兄さまがリリーを脱がそうとしているのです?」

「おはよう、リア。リリとディーはこういう関係だから」

「ごごご、誤解だ! オレはただリリーにパンツを履かせようと!」

「なぜリリーは下着まで脱いでいるのですか?」


 淡々と無表情で質問攻めしてくるコルネリアが怖い!

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