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050 決闘

「おい、どうしたんだよ?」

「なんでも決闘するんだってよ」

「誰と誰が?」

「いいぞー! やれやれ!」

「ヒューブナー辺境伯の嫡子と、……誰だったかな?」

「あいつ、ギフトが進化したってやつじゃなかったか? たしか聖者とかいうギフトの……」

「バウムガルテン男爵よ。なんでも妹を寄越せと言われて激怒したらしいわ」

「たしか妹ってギフトもわからないガラクタだろ? そんな奴を護る価値なんてあるのか?」

「ギフトを進化させた選ばれし者……。その実力がわかるな」

「でも聖者ってそんなに強いのか? 相手はヒューブナー辺境伯領最強の剣王のギフトの持ち主だろ?」

「さすがに分が悪いんじゃないか?」

「さて……どうなるか……」


 見物人たちがざわざわとざわめき、オレとクレーメンスを大きく丸く取り囲んでいる。即席の舞台は整った。


「旦那様、お怒りはごもっともですけれど、相手は剣王。勝算はおありですか?」

「お兄さま……」

「心配するな、クラウス、リア。軽くひねる」


 オレが一歩前に出ると、クレーメンスも一歩前に出た。至近距離で見つめ合うオレとクレーメンス。もう止まることなんてできない。


「逃げずによく来たな。褒めてやる。だが、俺様にはそのハッタリはきかんぞ?」


 クレーメンスが人をバカにした笑みを見せる。


「ヒューブナー辺境伯の歴史は古い。当然、ギフトの進化も記録にあった。それによれば、ギフトの進化はそれまでのギフトの発展形らしいな? つまり、治癒のギフトだった貴様のギフトがいくら進化したところで、戦闘系のギフトには敵わないのだ」


 クレーメンスが勝ち誇ったように言った。その顔には、オレを嘲る笑みが深く刻まれている。


「御託はいい。さっさと始めろ」

「ははっ! 強がりやがって。俺様が勝てば、貴様ら兄妹は俺様の奴隷だ」

「オレが勝てば、ヒューブナー辺境伯はもうオレたち兄妹とバウムガルテン領に手出ししないことを誓え。ついでに借金も無かったことにしろ」

「いいだろう。剣を抜けよ、バウムガルテン。最初の一手を譲ってやる。格上からのサービスだ」


 オレは腰の剣に手を伸ばし、剣を鞘ごと腰から外して放り投げた。


「なんだ? 降伏か?」

「違う。お前ごときに剣を使うまでもない。剣を抜けよヒューブナー? 一手譲ってやる」

「こいつッ!!! ああ、頭がおかしくなっちまったのか? 望み通り殺してやるッ!」


 怒りの表情で剣を抜き、そのまま上段に構えて突っ込んでくるクレーメンス。


「ヘイスト、リジェネ―ション……」


 引き延ばされた時間の中、オレはそんなクレーメンスを無感情に眺めていた。


 振り下ろされた剣を紙一重で左に避ける。クレーメンスはまだ勝ちを確信した笑みを浮かべていた。


 全身の筋肉が躍動するのを感じる。


 オレは、ついに系統外スキル【アン・リミテッド】を自分のモノにしていた。スキル名を呼んで自分に暗示をかける必要も無く、瞬時に全身の筋肉のリミッターを外すことができる。


 右手で拳を作ると、アッパー気味にクレーメンスの鳩尾に叩き込んだ。


「ほげッ!?」


 クレーメンスの肋骨が小枝のように折れる感覚。クレーメンスは一瞬で白目を剝き、意識を失ったようだ。


 だが、許さない。


「ヒール」

「ハッ!?」


 ヒールには気絶した仲間を気付けする効果もある。絶対に気絶になど逃がさない。


「まっ!?」


 体をくの字に曲げ、フッと浮かび上がるクレーメンスの背中に右足の踵を落とす。まるで霜を踏み潰すようにクレーメンスの背骨が砕けた。


「ごがッ!?」


 アッパーを喰らって浮かび上がったところを踵落としで落とされたクレーメンス。また気絶しているようだ。


「ヒール」

「てぇッ!?」


 クレーメンスの体は地面に叩きつけられ、大きくバウンドした。


「ごガハッ!? ぶえぇー……」

「今度は起きてるな? 少しは懲りたか?」

「がはっ! い、いったい何が……?」


 クレーメンスが首を巡らし、ようやく現状に気が付いたようだ。


「お、俺様が、負けた、だと!?」

「うんうん、そうだよ?」

「認められるかぁあああああああああああああああ! くっ、うぐぅ……」


 威勢は立派だが、クレーメンスは立ち上がれないようだ。


「認められないのか?」

「当たり前だ!」


 まったく、この男は少しも懲りていないらしい。もう少し躾ける必要があるな。


「ヒール」


 オレは立ち上がろうと足掻くクレーメンスにヒールをかけた。


「なんのマネだ……?」

「俺の目的は、お前を懲らしめることだ。お前には、心の底から敗北を認めてもらう。まぁ、オレもリアをバカにした奴をこの程度で許すつもりはない。精々足掻けよ、オーク」

「きさまぁぁああああッ!!!」


 クレーメンスが勢いよく立ち上がると、剣を構えた。そこに先ほどまであった遊びはない。全身全霊でオレを倒そうとしているのがわかった。


 先ほどの一撃でわかったが、クレーメンスはまだギフトのレベルが低い。オレの脅威には成り得ない。あとはどうやってクレーメンスの心を折るかだが……。まぁ、何度か敗北を与えればよほどのバカじゃない限りわかるだろう。

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