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048 進化

 コルネリアに告白した直後にエレオノーレにも告白したリーンハルトの暴挙。女子生徒はもうすごい目でリーンハルトを見ていたし、男子生徒もリーンハルトを睨みつけていた。


 これ、主人公君の学園生活大丈夫か?


「わたくし、礼儀がなっていない殿方って嫌いですの」


 まぁ、肝心のエレオノーレがゲームのシナリオ通りにズバッとリーンハルトを切り捨てた。主人公君はそれでも諦めた気配はないけどな。あいつの心臓どうなってるんだよ……。


 ともあれ、これでゲームのシナリオに復帰したと考えていいのか?


 主人公君がコルネリアに告白した影響が未知数だ。油断はできないな。



 ◇



 波乱の幕開けとなった教室だが、その後は教師によって校内にある神殿へとやって来た。


 白亜の宮殿といった感じの建物だ。床も柱も壁も天井も真っ白。どこかパルテノン神殿を想起させる。


 これからギフトの鑑定をするのだ。


 ゲームのシナリオでは、ここで主人公君のギフトが文字化けみたいに表示されて、主人公君は皆に侮られる存在になってしまう……。


 まぁ、もう既に二股クズ野郎と認知されているから、主人公君の評価はこれ以上落ちようがないのかもしれないが……。ほんと、主人公君どうしたんだよ。オレの憧れた主人公はどこに行ったんだ?


「次、ディートフリート・バウムガルテン」

「はい」

「お兄さま、がんばって」

「ああ」


 がんばったところでギフトは変わらないんだけどさ。


 オレは生徒たちの前に出て、教皇の前に置かれた水晶に手を置いた。


「治癒のギフトですな。むむっ!? これは!?」


 教皇の爺さんが、突然驚いた声を出した。その瞬間――――!


 ピカッと巨大なステンドグラスが輝き、七色の光がレーザーのようにオレを貫いた。


「え……?」


 このエフェクトは、まさか!? え? オレも対象なの!?


「今の光は……? こ、これは!?」


 呆然とするオレの耳に教皇のお爺さんの声が届く。


「せ、聖者!? 先ほどまで治癒だったはずでは!? どういうことだ!? 聖者なんてギフトは知らんぞ!?」


 その言葉で理解した。オレのギフトは治癒から聖者に進化したようだった。


 ギフトの進化は、シナリオの中盤以降のイベントのはずだ。ギフトのレベルをカンストまで上げて、教会に行くと起こる。


 たしかにオレはコルネリアを救うためにオレは治癒のギフトをカンストまでレベル上げした。そうしなければ邪神の呪いを解くことができなかった。


 だがオレは、ギフトの進化を主人公たちの特権と認識していたのだ。


 まさかオレまでギフトの進化の対象になるなんてな。ビックリだ。


 しかし、聖者なんてギフトは初めて知ったな。聖女の男版と考えればいいのか?


 さまざまなギフトを見てきただろう教皇も知らないとなると、かなりレアなギフトみたいだ。


「まさか、進化したというのか!? こんな子どもが!?」

「猊下、進化とはいったい何なのじゃ?」


 教皇の爺さんにゆったりした格好で立派なヒゲを蓄えた爺さんが問いかける。たぶん、学園長だろう。たしかあんな格好をしていたはずだ。


「ギフトの進化とは、長い間ギフトを磨いた選ばれし者のみに与えられる栄誉と伝承にありましたが……。私も初めて見ました。それを、まさかこんな幼い子どもが……」

「それは……」


 一応教会には情報があるらしい。たぶん、この世界の住人はギフトをカンストまで育てられることが稀なのかもしれない。


 しかし困った。皆がオレをまるで伝説の有名人に会ったかのような顔をしている。とくに、コルネリアなんてまた顔を赤くしてとろっとろのトロ顔だ。あとで注意しないと。


「とにかく! 猊下はこのまま生徒たちのギフトの鑑定を。そこの君、こっちに来なさい」


 そうしてオレは、学園長に別室へと連れられていった。



 ◇



「時間も無い、さっそく本題に入ろう。君はどうやってそこまでギフトを鍛えたんだい?」


 学園長からは自己紹介も無くいきなり質問を浴びせられた。


 さて、どう答えたものだろう?


 邪神の封印が綻んでいる今、人類全体の強化が必要な気がする。だが、効率のいいギフトのレベルアップには、特定のモンスターを狩る必要がある。恩恵を受けられるのは少数だ。自分たちで使うにせよ、主人公にこっそり教えるにせよ、黙っていた方がよさそうだ。


 そして、治癒のギフトを持つ者だけが使用できるゲームの救済措置。呪われたアイテムの解呪。これも呪われたアイテムの総数が有限である以上、自分のギフトを育てるために秘した方がいい。ギフトが進化したのなら、ギフトのレベルが1に戻っているはずだし。


 モンスターを討伐することによってギフトが成長することはアヒムたちも知っていたし、学園長も知っているだろう。


 オレから言えることはなにも無いな。


「具体的になにとは言えないが、王国に不穏なる影が近づいている。君の持つ知識は、王国を救えるだろう。もちろん、それに対する名誉と対価も用意するつもりだ」

「モンスターの狩りはしましたが、オレはなにも特別なことは……。ただ、領内でスタンピード起きたため、他の生徒よりはモンスターを討伐した数は多いかもしれません」

「ふむ……。スタンピードか……。それがカギなのか……?」


 すまんな学園長。だが、オレはその他大勢よりもコルネリア個人の方が大事なのだ。


 そして、もう一つすまない。オレはあんたを救わない。

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