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043 デート

 ベンノの持ってきた資材によって、東村の復興は加速した。まったく以前の通りとはいかないだろうが、今日までにすべての東村の住人の帰還が叶った。やっと一息つけるな。


 そのベンノだが、彼は息子のアルノーに押される形で、王都への出店を最終的に認めてくれた。


 そして、王都への出店をなんとか成功させるために全力を尽くすと言って、そうそうに帰っていった。いろいろ準備や根回しがあるのだろう。


 バウムガルテンには王都に伝手がまったく無いからな。ベンノの存在は心強い味方となってくれるだろう。


 王都でのバウムガルテンの影響力など無きに等しい。というか、貴族として認知されているかも怪しいものだ。


 コンコンコン!


 執務室で爺と一緒に仕事していたら、ノックが飛び込んできた。オレの執務室に用がある者など、コルネリアかアヒムくらいだろう。


 そのまま入ってくればいいのに。ノックの相手は入ってこない。


 オレは爺に頷くと、爺がドアを少しだけ開けて誰か確認した。そして、爺は一度ドアを閉めるとオレの方に近づいてくる。


「コルネリアお嬢様がお見えです。いかがなさいますか?」

「入室を許可する」


 オレはいつでもコルネリアを拒むことはない。


 そして、オレの意向を確認した爺がまたドアに向かい、ドアを大きく開けた。


「失礼します、お兄さま。お邪魔ではありませんでしたか?」


 いつもとは様相が違うコルネリアが、かしこまった感じで入室してきた。


 以前ならノックと同時に部屋に入ってきたコルネリアだが、今は淑女教育の成果でだいぶ礼儀正しくなった。


 礼儀正しいコルネリアを誇りに思う気持ちと同時に、天真爛漫なコルネリアがどこかに行ってしまったような気がして寂しい気持ちがした。


 だが、今のコルネリアは、そんな寂しさなど吹き飛ばす格好をしていた。いつものワンピースとは違う黒を基調とした子供用の礼服のようなしっかりした格好。どことなく前世のブレザー制服の趣があった。


 学園の制服だ。丈が合うか確かめるようにとは言っていたけど、まさか着てくるとは思わなかった。


「どう、お兄さま? なにか気が付いて?」


 コルネリアはいたずらっこのような笑顔を浮かべて問いかけてくる。


 オレは執務机から立ち上がってコルネリアに笑顔を浮かべて近づいていく。


「さすがに気が付くよ。袖を通したんだね。よく似合っているよ」

「それだけ?」

「リアはいつもかわいいけど、今日はいつもより輝いて見えるよ。まるでバウムガルテン領に現れた美の女神のようだ。最高だよ、リア。かわいすぎて目が潰れちゃいそうだ。リアは肌が白いから、黒がとても映えるね。差し色の赤もまるでリアの瞳の色のようだよ。まるでリアのためだけにあつらえたようだ。それに――――」

「も、もういいから!」


 コルネリアが恥ずかしそうに頬を染めてオレの言葉を遮った。


 甘いね、コルネリア君。オレはコルネリアのことなら無限に褒められるのだ。オレのコルネリアへの愛は無限だよ?


「それで、どうしたんだい、リア? 制服姿を見せてくれただけでもうれしいけど」

「そうだった。お兄さま、デートしよっ? お兄さまも制服着て見せてよ」

「デート? そうだね、行こうか」


 せっかくのコルネリアからのデートのお誘いだ。それを断るなんてオレじゃない。


「じゃあ、玄関で集合というのはちょっと味気ないから門で待ち合わせにしよう」

「はいっ!」

「待っててね。すぐ着替えてくるから」


 オレは爺を伴って自室へと急ぐと、爺に手伝ってもらいながら学園の制服に着替えていく。女子用の制服と同じように黒を基調としたものだ。女子がひざ丈のスカートで男子が長ズボンである。


 実際に女学生を見たわけじゃないけど、こちらの世界でも女の子はスカート丈を詰めるんだろうか?


 もし、コルネリアがスカート丈を詰めたりしたら……。さすがに苦言を呈してしまうかもしれない。


 コルネリアのパンツはオレが守護る!


「どうぞ、坊ちゃま」

「ああ」


 爺の持つブレザーに袖を通して、いよいよ準備が整った。さっそく門へ行こう。


 爺が玄関のドアを開くと、無駄に広い庭の向こうに少女の姿が二つ見えた。


 背の低い方はコルネリアだ。オレの姿を見ると満面の笑みを浮かべている。かわいい。


 もう一つは、今年から初めてコルネリア付きのメイドになったエリザだ。面倒見がいい赤毛の少女で、コルネリアも彼女を慕っている。


「お待たせ、待った?」

「ちょっとだけね」


 定番の返しは返ってこなかったけど、コルネリアの百点満点の笑顔の前には、そんなことは些細なことだ。


「お兄さま、ちゃんとエスコートしてね」

「ああ」


 オレが左手を少しだけ上げると、コルネリアが抱き付いてきた。いつもやってることだ。


 爺とエリザからなんだか生暖かい視線を感じたような気がした。


「じゃあ、行こうか。どこか行きたい所はあるかい?」

「えーっと……」

「しばらく歩こうか」

「はいっ!」


 村にはお店も無いし、なにか特産があるわけじゃない。見るべきものもなにもないからなぁ……。


 でも、コルネリアと一緒ならどこだって楽しめそうだ。

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